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エイベックス株式会社と株式会社エクシヴィが、新たなアニメ表現を追求することを目的に設立したAniCast Lab.。設立の経緯や“ラボ”という形態を取った意味、そしてその取り組みについて伺った前回のインタビューに続き、第2回目をお届けする。前回同様、エイベックスの岩永・大山の両氏、エクシヴィの代表取締役の近藤義仁氏に加え、AniCast Lab.に参画が決定したGugenkaの三上昌史氏が登場。Gugenkaが手掛ける東雲めぐを活用して、AniCast Lab.は今後どのようなコンテンツを手掛けていくのか、またそのビジョンとは?

エクシヴィ×Gugenkaの邂逅から
ラボ誕生への機運

3DCGキャラクターでの配信もできるVRアニメ制作ツールAniCastは、SHOWROOM株式会社が運営する配信サービス・SHOWROOMで、アニメにVR/AR/MR等の先端技術を活用する株式会社シーエスレポーターズの専属チーム「Gugenka®」が手がける「SHOWROOMer 東雲めぐ」プロジェクトに採用されていた。そして、AniCast Lab.の始まりには近藤氏と三上氏の出会いが大きく関わっていたという。

近藤「元々は弊社のスタッフで室橋という者がいて、彼が3年かけてキャラクターアニメーションを研究していた。彼の個人研究のようなものだったのですが、少しずついろいろな場所で見せるようになって、とあるイベントで三上さんとお会いしたときに、『これはビジネスにしないんですか?』と言っていただいたのがキッカケです」

三上「その時点でもはや完成されたものだったんですよ」

近藤「バーチャルYouTuberという言葉が出てくる前で、去年の10月ぐらい。まだそこまで盛り上がってないけど、これから先、こういうムーブメントは必ず来るだろうっていう業界のコンセンサンスはありました」

三上「僕としても『すごい仕組みですが何かに使うんですか?』って聞いたら、『趣味です』みたいな感じだったから驚いて。そこから『こういう風にしませんか?』という感じで話を進めていきました。ここまであっという間でしたね」

近藤「なのである意味、三上さんが裏プロデューサーですよ」

東雲めぐがデビューしたのは3月1日。オーディションをやってからは、開発と並行しながら進んでいった。そして時代の波と合致したこと、AniCastの表現力が群を抜いていたことが、ラボの動きを後押ししていく。

岩永「例えば東雲めぐちゃんの場合、ユーザーさんが『緑のリボンがいい』って言ったら次の日には変わっているわけですよ。ユーザーの意見を聞いて変化するっていうのは今までは絶対に無かったことなので、そこが大きく違いますね」

三上「めぐちゃんだけで見ても、作りたいものってすでにたくさんあります。それは今後どんどんできあがっていくので、今は『何をしようかな』というよりは、『いろいろ実現していきたいな』という状況です。それにこれからやろうとしていることは、エクシヴィさんの中では技術としてすでにでき上がっているんですね。エクシヴィさんがすごいのは、ハリウッド映画のアニメーションなどでモーションキャプチャとかを使ってできることを、十数万円で買える機材でできるようにしているところ。ついついハイエンドを目指すと機材の方に頼りがちになってしまうんですけど、そうすると5年前、10年前に実現できていたことへ逆行してしまうんです」

全世界のファンが観に来られる
新たなライヴの形を創出

AniCastは画期的という言葉がピッタリだ。AniCastはひとりでもアニメを作ることができると同時に、アニメを作る人の母数を飛躍的に伸ばす可能性を秘めている。そして、そこに東雲めぐが出会ったことで化学反応が生まれた。

大山「僕が最初にやらせていただいたときは、みんなで交代に試したのですが、30代や40代のおじさんたちが、不思議なことにだんだんと仕草がかわいくなっていくんですよね。ある意味で性別も超えてできてしまうような、感覚がダイレクトに伝わる魅力があると思います」

実際にVRライヴをやるころには、バーチャルのアーティストはファンの意見や要望を反映した上で、彼らの思い入れもたっぷりの状態となっている。それは現在、東雲めぐが日々成長している姿を見ればわかることだ。

三上「ライヴ会場に自分が書いた絵が飾られているとか、自分の作った衣装をアーティストが着ているとかがあり得るわけですから」

岩永「音楽とVRは親和性も高いですし、ラボの中でいろいろチャレンジしてやっていきたいと思っています」

大山「すでに輝夜月(カグヤルナ)のライヴなども行われていますし、しかもけっこうな規模感で支持されている。音楽との掛け合わせは非常に楽しみです」

さらに三上氏は、リアルライヴとバーチャルライヴとのハイブリッドも視野に入れている。そうなったとき、ライヴのハコの大きさやファンが住んでいる場所などは取っ払われ、全世界のファンが観に来られる新たなライヴの形が創出されるのだ。

三上「どうしてもどこかハコを借りると、地方の人は観に来られなかったりする。ただし、ハイブリッドすれば世界中の人からチケッティングができて、さらに例えば、めぐちゃんにファンがギフトを手渡しするとかもできる」

近藤「ライヴ会場をユーザーが作ることもできますしね」

岩永「『うちのところでコンサートをしてください』みたいなことも可能ですね」

近藤「それをファンが投票して決めてもいいと思う」

三上「やっぱりみんながそういうのを楽しんで、受け入れるような環境になったらいいなと。めぐちゃんはまさにそうですが、『これを観て』というよりは、『いっしょに参加しよう』っていう形を作っていきたい。やはりめぐちゃんは、ファンのクリエイションによって支えられているので」

東雲めぐワールドの深化の先に、
VRのある未来を想像

日本でもさまざまな業界・ジャンルで急速に広まりつつあるVR&AR。まだまだ体験としてその価値に触れていない人も多いかもしれないが、近藤曰く「日本人はその文脈を共有しやすい」一面もあるという。

近藤「例えば、『あのアニメに出てたアレ』って言えば話が通じることも多いと思う。昔はSFだったものがどんどん実現できる時代になってきている。パソコンだって、20年前だったらドラえもんの道具ですよ」

三上「VR上であれば、どこでもドアも可能ですもんね。ラボによって生まれる映像ツールって、今は動画として観るものかもしれませんが、最終的にはそれをVRやARとして観ることになると思います。今まではVRを体験する動機付けが弱かったけど、そういうコンテンツができることで、『そういう世界に行きたい』っていう人が増えるはず。その点では、バーチャルなタレントが生まれることによってその空間で見たいっていうファンも生まれるし、VRの機材を買おうっていう人も出てくるでしょう」

近藤「VRライヴってどうしても最初は機材が障壁になると思うんですが、まずはYouTubeライヴをやって動線を作り、『中に入れるんですよ』と誘導する。そのいい流れが少しずつできてきているのかなと」

三上「めぐちゃん自身が新しい表現をすることで作られる映像もあるでしょうし、一方でめぐちゃんをタレントとして捉えた場合、他のクリエイターさんがどういう風にめぐちゃんを使って撮るのか、という展開も面白いと思います」

エイベックス・ピクチャーズはもちろん、グラフィニカと設立したアニメーション&ゲームなどのVR開発を行うFLAGSHIP LINEには、さまざまなクリエイターがいる。今度、どのようなアウトプットが生まれるのだろうか。

三上「めぐちゃんは“どこにでもいる女子高生”なので、未来っぽくない素朴なキャラクターは、表現する上でいろいろな可能性を秘めていると思います」

岩永「弊社のメンバーも前のめりになって取り組んでいますし、いろいろ想像するところからスタートしています。今後は、めぐちゃんをプロのクリエイターがディレクションをして何かを作るということもやってみたいですね」

三上「今の映像はめぐちゃん自身が作っているので、そこをクリエイターたちがさまざまなツールを使ってやったらどうなるか。それはとても楽しみです」

さまざまなクリエイターが東雲めぐをプロデュースする。それが異なるツールを使ってでも面白いだろうし、同じツールを使って個性を競い合う“コンテスト”のようなものもありだろう。このインタビュー中にも新しい企画は次々と生まれていた。「義務になると嫌だった」と岩永が語るように、あらゆるしがらみから解放されたクリエイターたちの楽しみながら話す姿から、このラボのあるべき姿を見た気がした。

(写真左)
エイベックス・ピクチャーズ株式会社
ゲーム事業推進室
ゼネラルマネージャー

株式会社anchor
代表取締役社長
岩永 朝陽

(写真左中)
株式会社エクシヴィ
代表取締役社長
近藤 義仁

(写真右中)
株式会社シーエスレポーターズ
専務取締役
Gugenka®統括/プロデューサー
三上 昌史

(写真右)
エイベックス・ピクチャーズ株式会社
アニメ制作グループ
ゼネラルマネージャー

FLAGSHIP LINE株式会社
代表取締役社長
大山 良

こんな内容

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