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エイベックスとしてのフィンテック事業への参入を5月に発表し、6/11に設立された「エンタメコイン株式会社」。エンタメコインが切り拓くエンタテインメント産業の未来はどのようなビジョンをもって進化していくのだろうか?エンタメコイン株式会社・代表取締役社長の有田雄三、同社顧問にして現在の楽天Edy草創期に携わった宮沢和正氏、そしてエンタメコイン社と共同研究を行ってきた東京大学大学院経済学研究科教授で経済学者の柳川範之氏に話をうかがった。

ファンの応援熱量に、
お金で買えない価値で
お返しする

「エンタメコイン」は、音楽アーティストやスポーツ選手などのエンタメプレイヤーに対するファンの応援(エール)を見える化することを目的とした全く新しいサービスだ。ファンによる応援は、金銭を伴う「購買」によるものと、金銭を伴わない「行動」によるものとがあるが、エンタメコインは、購買による応援を独自のモバイル決済で、「行動」による応援を新開発のエールカードシステム(特許出願済み)で見える化しようとしている。各社がキャッシュレス決済事業への参入に名乗りをあげ、日本での普及もこれからという絶好のタイミングである。

有田「エンタメコインのサービス思想は、音楽現場出身の自らの原体験がベースにあります。暑い中、コンサート会場の外のグッズ売場で現金を握りしめ長蛇の列に並ぶファンの方々のストレスをなくしたいと思っていましたし、お金を使ってくださるファンだけでなく、使えるお金は限定的でも一生懸命アーティストを応援してくれている中高生のファンの方々の想いにも報いるようなサービスを創れないかとずっと思っていました。いずれも、若年層を切り捨てることなく、ファンの方々を公平に幸せに出来ないか? というところから、この事業構想はスタートしています」

エンタメコインはモバイル決済のウォレットと連携するかたちで好きなエンタメプレイヤーのポイントカードを持てるサービスになっているのが特徴的だ。この仕組みを実現していくための技術としてブロックチェーンを使っている。

有田「『エール』という応援対象への愛情値を示すポイントは、エンタメプレイヤーに対してどれくらいお金を使ったのかという「指標」に、お金が絡まない行動による「応援熱量」が掛け合わさって算出される仕組みです。そうやってファンの方が「購買」や「行動」で応援し貯まったエール(愛情値)は、お金に換算出来ない特別なエンタテインメント体験や物と交換することが可能です」

宮沢「Edyをやっていた時に非常に悔しい思いをしたのは、コンテンツを持っていないから電子マネーを使う必然性がなかったこと。例えば電車に乗るときにはSuicaという必然性がありますけれども、Edyはコンテンツを持っていないがゆえに、展開にも非常に苦労しました。今回エンタメコインが非常に強いと思っているのは、明確にアーティストなどのコンテンツに根差していて、そこには熱いファンの存在があります。だから決済利便性とは違う価値を提供できます」

柳川「コンテンツビジネスは簡単にコピーができてしまうので、いわゆる音楽そのものを売ってビジネスをするのはなかなか限界がある。むしろコンテンツを波及させることで、別のところで収益を上げるというもう少し広いエコシステムを考えるべきじゃないか、と私は思っていました。エンタメコインの強みは、運営者がすでに強いコンテンツを持っていること。これは他の事業者が決済ビジネスに参入しようと思っても、同じようなことはできない。」

見えなかった価値を見える化し
創り上げた新しい経済の形

前払い方式でチャージして使えるので、クレジットカードを持っていない、あるいは銀行口座を持っていないという若年層でもスマホ1台あれば使える。グッズ売り場の長蛇の列は姿を消し、商品を事前にスマホで決済して会場ですぐに受け取れる、そんな世界になるのかもしれない。

有田「ファンクラブのビジネスは例えば年会費5,000円を払ったら、できるだけ平等に扱うというのがモットーなんですが、エンタメコインはどちらかというと『最適化』なんです。経済的な応援であったり、SNS発信や音楽を聴いたりといった行動による応援をたくさんしてくれたファンに、より特別なエンタメ体験を感謝としてお返しする。その為の仕組みを、エイベックスに限らず、熱狂的なファンを持つエンタメプレイヤーたちへ広く提供していきたい、それが今のビジョンですね」

こうした見えなかった価値を見える化することによって、いわばエンタメを中心とした新しい「規模の経済」を作ることができる。ここを市場(いちば)として考えると、人がたくさん集まるほどさらに人が集まってくるというネットワーク効果が働く。最初に人を集めてくるのは大変だが、その市場にエンタメプレイヤーというコンテンツがいれば、自然と人が集まる。手数料率や品揃えといった軸とは別の戦い方で「規模の経済」をつくれる可能性がある。

柳川「重要なのはエンタメコインの仕組みを通じて、いままで見えなかったファンの活動を把握できるようになるということなんです。それによってこれまで出来なかった、よりきめの細かいサービスがエンタメプレイヤーも提供できるようになる。アイデア段階から有田社長にアドバイスを贈ってきた私としては、そのための決済システムやポイントシステムができればいいなと思っているんです」

宮沢「今までになかった価値によるエンタメ経済圏を作っていくというのは、大げさに言うと日本のGDPを上げていく話だと思うんです。さらにいいのは、それを一社だけで独占するのではなく、参加してくれたコンテンツホルダーへデータをきちんと戻すことでエンタメ業界全体を盛り上げていこうというコンセプトであること。私もEdyのときに学びましたが、win-winの関係がないと絶対うまくいかないんですね」

もちろん金融サービスゆえに、小さなミスも許されない。決済基盤は大手金融機関との連携により構築し、システムは開発会社13社による分散型開発、金融サービスに耐える規定づくりやコンテンツサイドとの丁寧なコミュニケーションなど、超えなければいけないハードルは多々あった。そうしたアグレッシブな挑戦にもエイベックスらしさが表れている。

有田「昨今、コンテンツはデジタル化により、流通チャネル、延いてはファンとの接点までもITや流通のプラットフォーマーに握られています。しかし、今一度エンタテインメントの為のエコシステムを国内コンテンツ事業者たちと一枚岩になって共創することができないかと考えた時、その旗振り役はインディペンデントから成長し、柵(しがらみ)もなく、既成概念にもとらわれない風土を持つエイベックスが手を挙げるべきじゃないかという、使命感にも似た想いがありました。」

リアルな感動をファンに
届けるエンタメコインのビジョン

デジタルの対極にあるのが、データでは置き換えられないアナログ、生身のエンタメプレイヤーである。デジタル全盛の時代だからこそ、デジタルとリアルな感動とを結びつけていくことが優位性につながると柳川氏・宮沢氏は語る。

柳川「デジタルで何でも手に入る時代だからこそ、むしろアナログに価値があります。生身のアーティストが演じるライヴには、お客様はお金を出す。その人に会える・握手できるといったアナログの強みと、データ駆動型ビジネスを掛け算するところに、エンタメコインは可能性があります」

宮沢「かつても銀行業界は電子マネーの実証実験をしていましたが、ことごとく失敗していたんです。Edyが成功したのは、なにより利用者目線があったからです。金融だけではフィンテックは進展しません。金融の目線だけでなく、エンタメやITの技術などを組み合わせていくところが非常に重要です。そうやって、フィンテックをリアルな感動に結びつけていけるのは、やはりエンタメコインしかないと考えています」

もちろんモバイル決済の市場は、競争が厳しい。だが有田社長のビジョンはもっと先にある。

有田「エンタメコインはモバイル決済でただ商売をしたいわけじゃなく、ファンの皆さんの応援そのものをエンタメ化していき、結果次のスターが生まれる為に貢献できるサービスになりたい。そのためにはファンとエンタメプレイヤーが双方向で「ありがとう」を循環させ、互いの熱量や愛情値が相乗効果で高まり合う新しい仕組みをエンタメ目線で提供する必要があると思っています。熱量をもっているファンがあってこそ、スターが生まれてくる、そんな熱気に満ちたエンタメのエコシステムを作っていきます」

「エンタメコイン」が描く未来の中では、ファンはもはやただのファンではない。エンタメプレイヤーを応援するファンも、スターを生み出す主役であるのだ。エンタメに関わるすべての人がwin-winで楽しめる理想郷、「エンタメコイン」はそんな理想的な未来を目指していく。

(写真左)
エンタメコイン株式会社
特別顧問
宮沢 和正

(写真中)
エンタメコイン株式会社
代表取締役社長
有田 雄三

(写真右)
東京大学
大学院経済学研究科・経済学部
教授
柳川 範之

こんな内容

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