浅川梨奈(SUPER☆GiRLS)と大原優乃のコラボ表紙が話題を呼んだ『a-books gravure 2018』などで、グラビア界に巻き起こる新風。だが、ほんの2〜3年前はエイベックスのグラビアアイドルと言われてもピンと来なかった一般ユーザーも少なくないだろう。そこで今回は、彼女たちをブレイクに導いたエイベックス・マネジメント(以下、AMG)の芝 裕史にエイベックスならではの戦略やグラビアアイドル論を訊いた。
アカデミーと
プロダクションチームで
培ったノウハウが
独自の道を切り拓く
2001年10月に創立されたエイベックスアカデミー・エンタテインメントビジネスコース出身の芝。当時、浜崎あゆみ、Every Little Thing、hitomi、Do As Infinityなどエイベックスを代表するアーティストが所属していたプロダクションであるアクシヴ(現:エイベックス・マネジメント)の社員募集に合格し、雑誌周りの宣伝を担当することに。
「当時、アクシヴという事務所に入って思ったのは、エイベックスは知ってるけど、その事務所は知られていないということ。それに歌を歌うアーティスト以外のタレントのプロモーションはまだ開拓途中でした。当時、グラビアという分野は誰もやっていないから開拓していこうとなりました。でも、グラビアって媒体には事務所単位で担当者がいらっしゃるけど、うちの担当者はいなかったので取り合ってもらえない。ゼロからの始まりでした」
「エイベックスにもプロダクションがあるぞ」という気持ちをもって営業を続ける中、今に繫がるきっかけが。マネージメント部署に異動となり、misonoとフジテレビのアイドルグループ「アイドリング!!!」に加入している橘ゆりかと倉田瑠夏を担当。アイドリング!!!は名だたる芸能プロダクションからなる連合チームで、そこでの仕事は芝にとって大きな経験だったという。
「2人のマネージャーになって、各社のマネージャーさんたちと交流をしたり情報交換をしたりしていく中で、グラビアの要素やグラビアの重要な人たちを教えてもらって。それぞれの事務所がそれぞれの考え方やポリシーを持ってるんですけど、皆さんプロダクションという誇りを持って働いてるなと思いました。ずっと音楽畑でしかやってきていなかった自分にとっては、そこでグラビアなどのノウハウを教えてもらったし、それで自分も切り開いて行ったところがありますね」
個の魅力を生かした
「ヒーロー集団」構想で
エイベックスらしさを追求
当時から今でも感じ続けていることが、AMGという事務所がまだまだ世間に認知されていないことだという。浜崎あゆみやAAAと大原優乃や浅川梨奈が同じAMG所属だという認識がまだまだ浸透していないということだ。
「グラビアを頑張ろうと思ったのは、うちにこんなにコンテンツがあるのに、まだまだ事務所だと思われてないな、知られてないなというのが動機の一つ。『エイベックス・マネジメントといえばあの子がいるプロダクションですね』とわかってもらえたらという思いだけです。せっかく所属してくれてる子達が自信を持って『エイベックス・マネジメント所属です』って言える環境を作ってあげたいというのが根本ですね」
そこで芝が構想したのがAMG所属タレントをまとめて見せるという手法。それは冒頭で触れたヒット作フォトブック『a-books gravure 2018』を刊行するきっかけにもなっている。
「まとまった時のパワーはすごいから、それで一個ヒットを生み出せるんじゃないかと思って。僕のイメージは『アベンジャーズ』なんですよ(笑)。浅川はSUPER☆GiRLSの活動の一環でのグラビア活動、優乃はDream5からソロになってからのグラビア活動、莉音はグラビアオーディションへてのタレント活動など、それぞれのストーリーがあって、それを一個に集めて輪にする。そういうサイクルを『できないかな?』と思ったら、『あ、アベンジャーズじゃん! うちでやったら面白いじゃん!』と思って(笑)。単純に『アベンジャーズ』好きが高じてのアベンジャーズ構想なんですけどね(笑)。いろんな物語があるけど一貫してMARVELってブランドがあるように、うちはエイベックス・マネジメントって会社があって、アベンジャーズのような作品を製作したら、それぞれのお客さんがいろんなタレントを知ってくれて、みんなにとってプラスになるからいいんじゃないかな? っていう、もうそれだけです。今、SNSでバズったりYouTubeでバズったりしてる中、我々が何も仕掛けないよりは、自分たちがメディアになって、って考えたらアベンジャーズだった(笑)」
愉快そうに「アベンジャーズ構想」と語る芝だが、このプランが実現したのはAMG内では薄かったグラビアを撮影する編集者やカメラマン、スタイリスト、ヘアメイクなどのプロ集団とのタッグを強めたこと。そして社内外に対してAMG所属タレントをことあるごとにアピールした結果だろう。「プライオリティという言葉は好きじゃないけど」と言いながら、浅川や大原のブレイクによって、彼女たちが起用される機会は圧倒的に増えたのだ。
様々な背景を持つヒロインやヒーローが結集した『アベンジャーズ』に共感が集まりヒットを生んだダイナミズムにインスパイアを受けるところが芝のユニークな面だが、ことグラビアでの表現に関しては正統派の印象を受ける。例えばヒット作『a-books gravure 2018』然り、同性から見てもグラドルは愛らしく健康的な表情が切り取られている。
「そう言っていただけると嬉しいです。特にそこは変に下品にならないように気をつけているので。基本は上品な感じの写真になるように、編集の方と一緒に作っている、そういうプライドはあります。そこはもしかしたらエイベックスらしさなのかもしれない」
エイベックスらしいフォトブックのクリエーションは今後、タレントの写真集、他社とのコラボレーションにも生かされてく予定で、現在は男性版となる「a-books GRAVURE 2019-Men’s Collection-」が発売中だ。
「AMGで作ったもののクオリティや作り方を生かせる段階に入ったというか。基本的に僕がカメラマンさん、スタイリストさんなどクリエーターさんと仲良くさせてもらってて、その人の撮り方や、カメラマンさんとタレントの相性など、色々わかってきて自分が思い描いてるイメージを出せるようになってきたのは大きいですね」
グラビアに新たな旋風
を巻き起こす
チャレンジ精神と情熱
グラビア界に新風を送り込む芝。彼が考えるグラビアの位置付けとはどんなものだろう。
「僕はテレビ番組などと一緒だと思ってます。バラエティ番組に出るのと同じだよっていう風にタレントには伝えますね。売れるための第一歩というか、世の中に知ってもらうきっかけ作りなのかなと。次のステップに進めるように、ステップアップへの近道になればという気持ちではいます。」
タレントに自信を持って欲しい。そしてグラビアをきっかけにチャンスを掴んで欲しい。そのためにはグラビアという日本ならではの文化をタレント自身が理解することも重要だと芝は考える。例えば大原優乃はDream5やモデルの活動からグラビアへ転向してきた。
「グループとしても活動していたし、モデルとしても活動していたので、モデルの撮られ方とグラビアの撮られ方は違うから、そこはリセットして素直にやっていこうねって。そして、やるからには一番を目指そうよという話はしました。それに雑誌の表紙を飾ることはすごいことなんだよという話は常にしていました。雑誌は駅の売店、コンビニ、空港、日本中どこに行っても置いてあるものだし、芸能人としてはすごく誇らしいことだから、誇りに思おうって」
大原のブレイク後のバラエティ番組やCM、ドラマへの進出は目覚ましいものがあるが、それは社内外を覚醒させた。まさに芝が当初感じていた、AMG所属タレントの認知度アップが達成された一つの事例と言えるだろう。
近年、インスタグラムなどSNSから登場する一般人のタレント化。時代の変化の中でグラドルの需要を芝はどう捉えているのだろう。
「今は変わらないですけど、そのうち変わってきちゃうと思います。ただ、グラビアの雑誌とSNSの違うところは一枚の写真で見せないところ。一枚の写真で見せてる子ってこだわりが強い人も多いんですけど、そのこだわり故に活動に制限がでてきちゃうパターンも出てくるのかなと思います。
ただ、SNSはSNSの文化があるし、輝いている子達もいるので、逆にチェックも怠らず(笑)。グラビア市場は、誰しもが輝けるようなきっかけを作れるような場所ではあるから、そこを目指してくる子は増えてくるんじゃないかなと思います。今は我々が勢いがあるように言っていただいてますが、常に僕は怖いし、いろんなライバルが出てくるからそこに負けないようにってことしか考えてない。グラビア市場がもっと飽和状態になっていく中で、常にチャレンジャーでいたいと思ってます」
女性タレントなら少年誌や週刊誌、男性タレントなら女性誌などのグラビアを飾ることは、時代を代表する人気者でありキャラクター像であることを意味する。そこで代表的な立ち位置を築いた芝のモチベーションは自社に素晴らしいタレントが所属していながら、彼らをフックアップできていなかった現実だった。加えて、芝自身が写真を好きで、グラビア文化を大切に思っているからこそ、タレントの魅力を引き出すことができたのだろう。
「僕もそうなんですけど、昔会長がよく言ってた『仕事が遊びで、遊びが仕事』、まぁそれに尽きるかなと。仕事はもちろんハードですけど、ポジティヴに考えてるんで、楽しみながらやれるっていうのが大事かな。基本的には何かに没頭していくっていうのは大事だなと思いますし、そういうのがヒットにつながるのかなと思ってやってます。写真好きだからねぇ……。MadもPureも両方ないとダメだけど、根本はちゃんとしてようと思います(笑)」
2019年はAMGからカバーガール大賞や新たなグラドル、さらにはユニークな企画が飛び出すのか? 『アベンジャーズ』構想の第二章を期待したい。
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芝 裕史