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エイベックスが史上初めて契約した二次元アーティスト、ARP。最先端のAR技術を駆使し、リアルタイムでの歌やダンス、トークといったライヴパフォーマンスを展開するイケメン・ダンスボーカルグループだ。今回は生みの親である株式会社ユークスの内田明理氏と、このプロジェクトを支えるエイベックス・エンタテインメント株式会社の城田敬に、ARP及び、ARPの実現を可能にしたユークスのARライヴシステム「ALiS ZERO」が切り拓くエンタテインメントの可能性を訊く。

恋愛系ゲームの神プロデューサーが、
二次元+ライヴへシフト。
その時代的な背景

内田明理氏は言わずもがな、「ラブプラス」や「ときめきメモリアルGirl’s Side」など大ヒット恋愛シミュレーションゲームや、「ランブルローズ」といったプロレスゲームを手がけてきた名プロデューサー。「ランブルローズ」でも既に3GCGを用いて、ARPにつながる映像表現を行なっていた。だが、コナミを退職した内田氏は、現存のゲームビジネスへ若干の疑念を抱いていたという。

内田「僕個人の意見ですけど、ゲームがパッケージのタイトルから配信型のアプリに変わってきて、他のコンテンツ同様、キャラクターの消費サイクルが非常に早くなったんです。キャラクターやストーリーを作り込んできた身としては、自分の仕事と相反するなと。これを、エンタテインメントに置き換えたときに、もうキャラクターにライヴをさせた方がいいなと思ったんです 」

ARP誕生秘話を語り始めると大変なことになると、笑いながら端的にきっかけを話す内田氏。

二次元のキャラクターがリアルタイムで観客とコミュニケーションするという新しいエンタテインメントの実現は、2006年のグラミー賞のオープニングパフォーマンスで観た、マドンナとゴリラズの3D映像で、確信していたという。

内田「ユークスはリアルタイム・レンダリングという、その場で動かす3Dモデルの技術で、国内有数なんです。そのユークスで仕事をすることになり、昨今、皆さんが価値を感じているライヴやフェスというコト体験を、二次元のキャラクターがお客さんと直接コミュニケーションできればいいんじゃないか? と。体験を継続的に生むことは、キャラクターが長きにわたって愛される事にも繋がる。それにはこの技術とこの技術とこの技術を組み合わせればできるはずだということは、その12年前のグラミー賞の3D映像の頃に理屈では分かっていたんです」

一方、城田はエイベックス黎明期の1997年入社。以来、V6のディレクターを始め、Every Little Thingなど音楽制作を担当。現在はレーベル事業本部クリエイティブグループのマネージャー兼シニアディレクターとして、ARPや和楽器バンド、新人女性アーティスト加治ひとみの制作業務に携わっている。まさにリアルなアーティストの現場にいた城田もARPには素直に驚いたのだという。

城田「最初のコンサートから見てるんですが、初めて見たときびっくりして。『これは本当に存在してる』という風に思えましたし、お客さんの熱狂度や盛り上がり方もリアルのアーティストとなんら変わりなかったんです」

コンテンツではなく
アーティストプロデュースとして
向き合う
エイベックスのDNA

リアルのアーティスト同様の驚き、その体感が最も大きな後押しとなったのはいうまでもないが、そこには2010年代後半の音楽業界が抱える課題ももちろんあった。

城田「いわゆるパッケージ市場が日本でも縮小していく中で、サブスクリプションなどの市場はこれら伸びていく。さらにライヴ市場は堅調に毎年、市場規模が上がっている中で、コト体験は大きなキーワードであることは間違いない。さらに、AR市場も拡大していく。サブスクリプション、ライヴ、AR、この3本の柱にARPというのは全てまたがっているというか、備えているアーティスト。まず、アーティスト自身に伸び代があるんです」

ARPは、リアルのアーティスト同様、コンサートのMCでは観客の声援に応えたり、会話が成立したり、生身の感情を持った発言が飛び出したりするという、従来にない、二次元でありつつコミュニケーションが成立する楽しさがある。さらには内田氏が丁寧に作り込んだキャラクター設定——例えば、リーダー格のSHINJIはバレエやフィギュアスケートの英才教育を受けており、愛犬と暮らしている。他にもインディーズバンド出身のメンバー、ダンスの才能に秀でたメンバー など、50項目近いQ&Aがプロフィールに記載されていて、ファンは“推しキャラクター” のバックボーンやストーリーも楽しんで、応援できる。

内田「ARPのキャラクターはアーティストと自分たちで一緒に作り上げていく、それこそライヴでキャラクターが実際の人間のように育っていく過程を感じています。これは音楽のプロデューサーさんもそうだと思うんですが、新人を発掘して、こういう感じで行け! と思っていたのに狙ってないところにいって、むしろうまくいくのと同じで、『ここでこういうこと言って欲しくないんだけどな』と思うことが、むしろファンの方にウケたり。キャラクターという“人”と仕事をしている感覚が、今までの仕事にはない醍醐味だと思いますね」

城田「内田さんの中に、こういうものを作りたいというビジョンが先にあって、それを実現するためにテクノロジーがあるから、強いコンテンツになっているんだと思います。だから、お客さんはリアルなアーティストを応援するようにARPのメンバーを応援するんでしょうね」

リアルのアーティストと同じような感情を持ち、歌やダンスの融合という意味では、生身の人間を超える見たことのないクオリティを実現する新しいアーティストであるARP。

城田 「いい楽曲であったり、ジャンルの垣根を超えるプロモーションというのは我々エイベックスの仕事ですし、ずっと生業としてやってきたことなので、そこを頑張りたい。エイベックスだからこそ、ARのキャラクターを普通のアーティストと同じようにプロモーションしていくことに面白みはあると思うんです」

テクノロジーが、過去のアーカイブや
アーティストの潜在価値を
デザインする

そして内田氏の中にはARのテクノロジーを使って、広く芸能界 まで拡張したいというビジョンがある。

内田「今、VTuberが花盛りですけど、あれは一般の方が一つエイリアスのようなものを作って表現されるということだと思うので、それはそれでいいと思うんです。ただプロの仕事、匠の技をバーチャル化したい思いがあって、例えば普段ダンスはしないアーティストさんが実は踊ってみたかったのなら、バリバリ踊る分身を持っていただいて、バーチャルライヴをするとか、そういう世の中にならないかなと思っています」

この技術を応用すれば、今は亡きアーティストの伝説のコンサートの再現も可能になってくる。往年のファンだけでなく、リアルタイムでは見ることのできなかった層にも、音源同様に時代を遡って体験できる可能性が広がる。

また、バーチャルなキャラクターと魅力的なストーリーが存在することで継続的な興行が新たに生まれる可能性も。

城田「例えば劇団四季さんのシステムってすごいと思っていて。コンテンツ制作から演じる人間、支えるスタッフ、ひいては専用のシアターや、チケット販売のシステムもプロモーションの仕方も全部コントロールされている。エイベックスは劇場以外は全て持っていて、同じ内容の公演をロングランできるノウハウや豊富な人材というインフラも持っています。ALiS ZEROというシステムを中心に、これからも新しいエンタメを生み出せる予感がしていますね」

リアルなアーティスト同様、9月からはテレビ朝日『BREAK OUT』でマンスリーアーティストとしてフィーチャーされ、8月に開催されたアーティストコンベンションでは、ARPメンバーが声優としてアニメに初挑戦するというニュースもアナウンスされた。

内田「普通のアニメにするつもりはなくて、ARPのお客様にも納得してもらえるように、アニメの中の出来事とライヴステージが話としてリンクしていくようなことはやっていけたらと。具体的には話せませんが『ああなるほど、これが拡張現実なんだね』という面白みをアニメでも出していかないかと、今、画策中です」

人の心の琴線に触れるシナリオとテクノロジー、良い楽曲、そしてアーティスト・プロモーション。内田プロデューサーとエイベックスがタッグを組み、見たことのないエンタテインメントの未来が創造されていく。

(写真左)株式会社ユークス
内田 明理

(写真右)エイベックス・エンタテインメント株式会社
レーベル事業本部 クリエイティヴグループ
クリエイティヴ第1ユニット
マネージャー兼シニアディレクター 城田 敬

こんな内容

関連リンク

ARP 公式サイト
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