最新の脳科学で「ストレス軽減」「集中力アップ」などに効果を発揮するとして、シリコンバレーの名だたる企業や、教育分野でも導入されているマインドフルネス。具体的には日常にヨガやメディテーション(瞑想)を取り入れ、心身両面の健康志向を反映し、世界的なトレンドとなっている。そんないま、世界唯一のマインドフル・トライアスロンWANDERLUST 108が6/17(日)に横浜赤レンガ倉庫特設会場で日本初開催となる。そのイベントの制作・プロデュースの中心メンバーはこれまでSTAR ISLANDやULTRA JAPAN、RAGEなどを手がけてきたエイベックス・エンタテインメント株式会社の坂本茂義、櫻又三紀子、生島直樹。この新たな事業がユーザーや社会にもたらすインパクトを探る。
マラソンでも単にヨガ・イベントでもない。
突き抜けたものにしたい!
「コト消費のマーケットが右肩上がりな中で、日常生活の延長線上にあるエンタテインメントを単純にライフスタイルという形で行ったとしても面白くないなと思っていました。うちの事業リソースを使うならどこが一番面白いかな? と探していた時、ヨガ・マーケットって結構あるなと。その中で、音楽のフェスも取り込んでいるWANDERLUSTの映像を見て、面白そうだし、エイベックス向きだと感じました。すぐにロサンゼルスまで視察に行き、その場でファウンダーと交渉してきました」
5キロのラン、90分のヨガ、メディテーションから成るWANDERLUSTに坂本が着目したのは、野外イベントで培ったノウハウ以外に、「ランはある意味、東京マラソンが突き抜けているので、あれ以上は創れない。ただ、ヨガに関してはそこまでぶっ飛んでいるものは国内になかった」からだという。潜在人口1,600万人とも言われるヨガ愛好者は自宅やスモールサークルでのワークから、野外での大人数での体験へ向かいたいのではないか。そしてイベントが認知されることで、ブランディングを進め、最終的には、ヨガに限らず、ウェルネス市場全体を見据えた商品化までを既にイメージしているのだという。
また、WANDERLUSTのファウンダーがもともと音楽やパーティなど、エンタテインメント・ジャンル出身で、マインドフルネスやオーガニックを融合した新しいエンタテインメントとしてWANDERLUSTを立ち上げたことにも共感したというのは、いかにもエイベックスが手がける必然性に満ちている。
ニューオーリンズでのワークに参加した櫻又は自身の生活を見直したという。「運動もしていないし、コンビニのご飯ばかり食べ、夜遅くまで働いて、家に帰っても倒れるように寝てしまうような生活でした。でも、WANDERLUSTに関わるようになってから、ヨガやランニングを少しずつやるようになり、心の状況もだんだん変化してきて。実際に体験してみて、これはぜひ日本の女性に知ってもらいたいなという思いが強く出てきましたね」
信頼性の高い情報拡散における
マイクロ・インフルエンサーの
重要性
ではターゲット層は明確に存在するのだろうか。櫻又はいう。「仕事もプライペートも健康も美容も、またファッションもありとあらゆることに興味を持ってアクティヴに活動している20代後半の女性。さらに週一回はフィットネスやランなどを生活に取り込んでいる人がコアターゲットになります」
ただ、本国の「WANDERLUST」には「ランは大変だからヨガから参加するけど、何か?」といったムードで、良い意味で緩いのだとか。イベントのハードルは極力下げていきたい意向だ。
プロモーションを担当する生島もいう。「ランもヨガも、一人でも出来るものを大勢で開放感のある中で行う一体感がこのイベントの価値でもあって。今はヨガの先生やインストラクターの方にはしっかり興味を持っていただいているんですけど、その下のいわゆるフォロワー層には、まだ『なんとなく良さそうなイベントがあるな』ぐらいしにしか認知されていない。そこで、今年はまず、僕らはマイクロ・インフルエンサーと呼んでいますが、先生やインストラクターの方たちに参加していただくことが重要だと考えています。先生からの信用を得ることができれば、先生と信頼関係にある生徒というフォロワー層にまで価値が伝わっていくと思います」
ウェルネス系イベントがスケールを巨大化する際、見るだけ・行くだけの巨大フェスとの違いを認識することが確かな動員につながる。当然SNSで誰がどんな種類の発信をするか? も重要だ。
「今回ターゲットにしている女性たちの興味関心の対象って、実は何万人もフォロワーを持ってるインフルエンサーや芸能人ではなく、自分が信頼していたり、かっこいいと思っている身近な女性からの影響を受けるのが特徴で。そこはマイクロ・インフルエンサー的なマーケティングにもつながっています」と語るのは櫻又。
「SNSは変わって来たなと思っていて、他のイベントも同様、今までは、とりあえず出してシェアしてくれることが当たり前でしたが、最近シェアしてくれない。櫻又が言ったように、個人が実際に体験してることに関してはしっかりシェアされてバイラルするものの、パブリックで行われていることに関してはなかなか難しくなって来てるなというところでは、時代性の中から生まれたターゲティングかなというところですね」と、坂本も実感している。
持続可能でローカライズできる
骨太な事業。
そしてウェルネス業界全体の
カンフル剤へ
開催地の選定についてはどうだったのだろう。「相変わらず場所の選定は大変です。グローバルなコンテンツなのでライセンサーは東京でやってほしいと。幕張も夢の島も見ましたがなかなか難しくて。そこで、赤レンガは僕らもよくイベントを行っているし、絶対的にロケーションもいい。海も見えて構造物も綺麗だし、日本のいわゆるビル群も見ることができる。あとはランニング・コースが取れるということが絶対的な条件なので、そういう意味では赤レンガしかなかった。行政含め、横浜が前向きだったというところはあります」
日本での初開催、しかもジャンル的にもこれまでにないイベントだが、7,000円という参加費は、1,000〜2,000人という規模感と、ウェルネス系の市場を調査した結果から見えてきたマーケティング分析によるものだという。
「うちが開催するのは時代の必然ですね。エンタテインメントは身近なものになりましたが、結構人工的なものも増えたじゃないですか。自然発祥というよりも新しい価値を作るというところからポーンと出てくる。それはそれですごく面白いなと思うのですが、最近コンテンツサイクルがあまりにも早くて。僕としては新しいものを作る発想ももちろんありますが、長く続くものーーこれはSTAR ISLANDと同じ発想なんですが、そうなってくると会社にとっても事業の一つ柱になってくるんじゃないかなと言った時に、必然として、ライフスタイル、マインドフルネスっていう筋だよね、ということなんです」
STAR ISLANDにおける花火と同様、マインドフルネスも普遍的なテーマだからこそ、拡がりは求めるが一過性のブームにはしたくないと坂本はいう。加えて、すでに上り坂にあるマインドフルネスやウェルネス系マーケット全体へのカンフル剤にエイベックスの存在がなり得ればいいと。
「その業界で一等賞っていうよりも、その業界を牽引して行ってその業界そのものを大きくしていく方に価値があると最近思ってて、そういう感覚がありますね」
ウェルネス・マーケットをより
Really! Mad+Pureに。
「これがエンタテインメントでなければ僕らもやりません。今回は1,000〜2,000人規模ですが、本質はWANDERLUST FESTIVALというのがあって、数万人規模をリゾート地に集めて、いくつものプログラム・ファイルも集めて体験するフェスがあるんです。僕らとしても新しい音楽領域としてフェスを立ち上げようと追うところは前向きにあるし、逆に音楽だけじゃないこういったフェスもありだよね、というところがスタートを後押ししていると思いますね」
ファッショナブルなのにマインドフルネスの本質もあり、将来的には日本発のWANDERLUSTをブランド化し、商品としても浸透させていく。また、ローカライズしやすい内容であることから、都心以外の開催も、いわゆる新しいタイプの地方創生として期待値が上がる。これまで培ったフェスのファンな部分とマインドフルネスの新しいフェーズを6月開催のWANDERLUST 108でまずは体感してみたい。
(写真左)エイベックス・エンタテインメント株式会社
アライアンス本部 チケット事業グループ
プロモーションユニット
チーフプロデューサー 生島 直樹
(写真中央)エイベックス・エンタテインメント株式会社
アライアンス本部 エリア・イベント事業グループ
ゼネラルマネージャー 坂本 茂義
(写真右)エイベックス・エンタテインメント株式会社
アライアンス本部 エリア・イベント事業グループ
イベント制作ユニット
櫻又 三紀子