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“合唱”のイメージを覆す新しいアプローチ 新卒2年目が起こした化学反応 “合唱”のイメージを覆す新しいアプローチ 新卒2年目が起こした化学反応

ハイライト

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今年5月に開設されたエイベックス・エンタテインメント株式会社のオフィシャルYouTubeチャンネル「#エイベのアソビバ」。一般ユーザーから投稿された動画を掲載・発信を主とする、オンラインコミュニーケーションの汎用性が高まったコロナ禍でスタートした取り組みだ。そして7月、同チャンネル特別企画として「#合唱のアソビバ」が発足。課題曲を歌った動画をYouTubeで募集し、投稿の中から動画再生回数・SNSでの反応も考慮した上で審査。課題曲決定のアンケート開設・編曲から動画募集、選考まで約4ヶ月の期間を経て、2020/11/7(土)結果発表に至った。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため今年度は主要な大会が開催中止を決定しているなか、音楽レーベルができることはないか━━。合唱団体の応援をコンセプトにスタートした同キャンペーン発案者であり、関連SNSの“中の人”である新卒2年目の社員・中南ひかるに、「エイベックス×合唱」という取り合わせが起こす化学反応と可能性について訊いた。

“合唱”のイメージを覆す新しいアプローチ 新卒2年目が起こした化学反応

非常時にこそ
発揮される柔軟性
ポジティヴな発想が生んだ
アプローチ

“合唱”のイメージを覆す新しいアプローチ 新卒2年目が起こした化学反応

合唱部経験者である中南の着想を基点にスタートした『#合唱のアソビバ』。もとは新人発掘を目的としたYouTube施策が検討されていたが、さまざまな部活動の主要な大会やコンクール中止のニュースを受け、急遽実施に向けて動き出した企画だ。

「新型コロナウイルスの影響により、さまざまな部活動の大会中止が報道されるなか、合唱界隈でも主要な大会の中止が決定したということを耳にしました。そこで、『この状況下だからこそレーベルが全国の方にできる歩み寄り方があるのではないか』と考えたのが始まりです。合唱は、究極人の声だけでも楽しめる音楽。だからこそ、この状況を柔軟かつポジティヴに捉えて新たな挑戦ができるのではないか。普段メディアでフォーカスされることの少ないジャンルですが、集まって歌うだけというイメージをこのタイミングで取り払えるんじゃないか、という視点がありました」

新卒2年目の中南にとって、同キャンペーンの“言い出しっぺ”という立場は、決して軽いものではない。しかも題材は、エイベックスの強みであるダンスミュージックとはほぼ対極にある「合唱」だ。ところが、ふたを開けてみると社内には合唱部出身の社員が多数いることが判明。社内でのポジティヴな反応もまた、企画を進めるうえで大きな原動力になったという。

「この企画を説明させていただく機会の中で、実は社内に合唱部出身の方が結構いることがわかり、『楽しみにしています』と応援の言葉もいただきました。今回合唱曲の楽譜の編曲はNHKコンクール等を担当されている先生にお願いしたんですけど、同期に合唱部強豪校の元団長がいて、そのつながりで先生を紹介してもらいました。『あなたが選ぶ課題曲アンケート』の候補楽曲を選ぶ際には、元合唱部社員の意見も多く取り入れました。私としては会社を利用したサークルのようで、最初は『本当にいいのかな』なんて思いながらやっている部分もあったんですけど(笑)、上長からも『自由にやっていいよ』と。課題はたくさんありましたが、安心して取り組むことが出来ました」

アニソン熱と合唱の
親和性をヒントに
エイベックス流で拡張する
合唱の面白さ

“合唱”のイメージを覆す新しいアプローチ 新卒2年目が起こした化学反応

生音が至高とされる合唱をあえてミックスや多重録音が可能な動画投稿で募る。そこだけを取ってもユーモラスな施策だが、加えて本企画の特色として話題となり裾野を広げるきっかけとなったのが、合唱らしからぬ課題曲たちだ。

「今回、キャンペーンオリジナル楽譜化する課題曲はユーザーの方からの人気投票で決めました。最終的に決定したのが絢香の『はじまりのとき』、フランシュシュの『徒花ネクロマンシー』他の全4曲。このアンケートでは、全国の合唱部出身の方の投票と併せてアーティストのファンの方も投票してくださったので、そこから合唱界隈以外の方にも注目してもらえたのかなと思います。特に『徒花ネクロマンシー』に関しては、原作のアニメや楽曲自体のファンの方々にSNS上で応募を募っていただいて。おそらく一度も顔合わせをしていない方々が、それぞれ録音したものをミックスして、このキャンペーン限定の合唱団を組んだりされているのを見て、私自身『こういう楽しみ方があるんだ!』と驚きました。合唱って、やっぱり生の声の方がいいという人が多いんですけど、『この曲を歌いたいから集まる』というのはオンラインだからこそ出来たことなのかなと思いますし、そういうところでは幅が広げられたかなと」

こうした課題曲の設定とキャンペーン自体のカジュアルな雰囲気づくりには、中南自身の合唱部時代の経験も大きく活きているという。

「通常、合唱コンクールなどの大会本番では本格的な課題曲・自由曲を歌いますが、私の地元では審査時間中に好きな歌を自由に歌う“コール”という文化があって。それがすごくユニークだったんです。特に印象的だったのは、男声の方々が歌う『マジンガーZ』のテーマ。とてもいい声でアニソンを歌うというのが、おもしろいし、カッコよくて。皆で純粋に歌を楽しむ時間も大会の醍醐味の一つと感じていました。一般的にイメージはないけれど、実は合唱団のレパートリーとしてJポップの曲もあるんですよね。それに、アニソン熱と合唱は親和性があるんじゃないかとずっと思っていたので、今回の企画で実現できて嬉しい気持ちがあります」

合唱というジャンルは作品の一体感を重んじるがゆえ個のアイデンティティを出しにくいジャンルなのかもしれない。だが、今回キャンペーンにはそんなイメージを覆すクリエイティヴかつ個性溢れる作品が多数寄せられた。このことについて中南は「合唱って一見地味と思われがちなジャンルではありますが、実は面白い人たちがたくさんいるんだぞっていうところを知ってもらえる機会になった」と手応えを感じているようだ。

「普段やっている、制服やスーツを着て集まって歌うということが出来なくなったことによって、音楽+動画のアプローチでバリエーションが出るんじゃないかなというところは予想通りでしたが、予想を超えたクリエイティヴな作品も多く寄せられました。今回いろんな作品が集まって本当に良かったですし、コロナ禍というマイナスな状況のなかでもおもしろいものを作る機会と捉えていただけたのかなとは思っています」

表現を引き出し
まだ見ぬ才能の発掘
根幹に宿る
“エイベックスらしさ”

“合唱”のイメージを覆す新しいアプローチ 新卒2年目が起こした化学反応

本施策について、「これまでレーベルが介入してこなかった『合唱界』に突然お邪魔するからこそ、実際の合唱人の方の意見を受け取りやすい形で進めたいと思っていました」という中南。公式サイトなどはあえて立ち上げず、Twitterとnoteで情報発信をしていたこともそうした考えに基づいてのことだという。

「今回は、いい意味で公式感のない身近なキャンペーンでありたいというところを意識しました。情報については主にTwitterとnoteを使ったのですが、ユーザーの方の使うSNSを中心に発信する分コミュニケーションも取りやすく寄り添いやすいかたちになったと思います。noteでは、テキスト制限がない分伝えたい想いをしっかりと自由に、Twitterでは人格感を失いたくないので、noteに綴った内容を噛み砕いて固すぎず緩すぎない雰囲気で投稿するようにしました。また、SNSで発信してみると『tuttii』というリモート合唱プラットフォームを運営されているHarmorearth様からリモート合唱の現状について意見をいただいたり、コラボレーションのお誘いをいただけるなど新たな出会いもありました。そこからつながってテレビ東京のWBS『トレたま』というコーナーでキャンペーン課題曲の一部をご紹介いただいたり、発信することで新たな出会いが生まれていくと実感しました」

立案から最終的な結果発表までのスパンは、およそ4ヶ月。「合唱に携わる方々に『例年の大会ではできないことをしてみよう!』と気持ちを切り替えてもらえるきっかけになるようなものにできれば━━」という想いで、手探りながらも真摯にプロジェクトを進めてきた。施策に係る業務に追われた日々を振り返り「いやあ、本当に大変でした」と中南は笑う。

「企画まではスムーズに進みましたが、実際に動いてみると予定していたスケジュールから大幅に遅れてしまうハプニングも多々あったので、そのハプニングをどう捉えて前向きに進めるかを考えました。コロナ禍で急遽スタートさせた企画だったので、大人数の合唱団体の参加が難しいという課題もありました。だからこそ、比較的少人数の団体にフォーカスできたのでそこは良かったのですが、全団体が安心して活動に打ち込めるようなスケジュール感で進められたら……と思うところはありました」

しかし、すべての選考を終えた今、本施策によって得た気づきを糧に中南はもう一歩先のビジョンを描き始めている。

「今回の企画を通じて、『ここまではすぐに参加へ手を伸ばせるけど、ここからは少し難しいと捉えられるキャンペーンの自由度・ライン』がなんとなく掴めた気がします。どういうことかというと、今ってスマホもパソコンも普及しているから、みんなわりと簡単にミックス音源や動画を作れるんじゃないかなと思っていたんです。でも実際は自分が思っているよりもデジタルでのクリエイティヴに踏み出しにくいと感じている人がいるということを把握できましたし、その感覚のズレを認識できたことは良かったなと思っています。その気づきを踏まえて、レーベル側から手軽な動画制作のためのプラットフォームを用意しそこからファンによって応募された動画を観ることで、アーティストがファンの想いをより認識出来るような空間が出来やすくなると考えていたりします。新人発掘にもつながってくると思いますが、これまで『観る専門』だった人も少しでもクリエイティヴに足を踏み入れるきっかけになるような企画で、なにか表現したいと思っている人たちを引き出す機会をレーベルが作り出せたらいいなと。そして、最終的にそこからスターが産まれたらいいなと思っています」

ド直球の“らしさ”に縛られず、常に新しいアプローチを探求し続ける━━。エイベックス×合唱というイメージギャップとは裏腹に、『#合唱のアソビバ』の根幹には社の姿勢が宿っている。マイナスの状況すら『アソビバ』に変えようとするタフさは今後どんなエンタテインメントのかたちを提示してくれるのか、ポジティヴな未来を期待せずにはいられない。

“合唱”のイメージを覆す新しいアプローチ 新卒2年目が起こした化学反応

エイベックス・エンタテインメント株式会社
第1クリエイティヴグループ
avex trax第3ユニット
中南 ひかる

こんな内容

関連リンク

#エイベのアソビバ
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