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ハイライト

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世界最大級のスタートアップ・イベントSlush Tokyo2018が3/28(水)、29(木)に東京ビッグサイトで開催された。東京での開催は今年で4回目。今回は「Breaking Barriers」をテーマに、各国から約600名のスタートアップ、200名の投資家に加え、ジャーナリストや学生ボランティア等計約6,000人が集合。国籍や年齢、性別、そしてスタートアップと大企業、国内企業と海外企業、起業家と投資家、社会人と学生という様々な立場の間にあるバリアやヒエラルキーを取り除いて、自由なムーブメントを起こすというコンセプト通り、多様な人々が集う。

ゲスト・スピーカーも多彩で物流Uberとして香港初のユニコーン企業となったGoGoVan CEOのスティーブン・ラム氏、衛星通信アンテナ共有事業を2018年内にローンチ予定のInfostellar CEOの倉原直美氏ら50人以上が登壇。また、登壇者同士だけでなく、一般参加者との議論のスペースもあるという自由度の高さもSlushならではの光景だ。出展もパナソニックやソフトバンク等大企業の新事業から、福岡市や仙台市等日本のスタートアップシティ、東京工業大学等、スタートアップとテクノロジーに関する提案者は千差万別。多彩なアイデアと情熱で盛り上がったSlush Tokyoに今回、初めてエイベックスが二つのブースを出展し、ショーでも参加。イベント前日には、都内某所にて世界各国からやってきた登壇者を集めた前夜祭のプロデュースを行い、ピコ太郎や大沢伸一が特別出演をして会場を沸かせるなど、エイベックスらしい形でコミュニティへ華を添えた。コンテンツや来場者の反応等をレポートしつつ、エイベックスがSlush Tokyoに参画する意義を考察する。

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なぜエイベックスがロボット会社に出資を? 来場者の興味を引いたベンチャーズ・ブース

メインステージ・エリアそばに配置されたエイベックス・ベンチャーズ株式会社※のブース。出展しているのは、立命館大学発で滋賀県草津市に拠点を置くスタートアップ、株式会社人機一体。人間の上半身を模した巨大なロボットでありつつ、操作する人間の細かな動きをリアルタイムで実現できる最新鋭のロボットだ。

用途は災害時等、人間が直接立ち入れない場所での作業が主な目的だが、関節の細かな動きや、強弱は従来のロボットになかった精度。デモンストレーションではロボットが空手の名手のように板を割るアクションなどに多くの人が注目していた。この人機一体を用いてすでに「剛腕アイドル」と称し、夢みるアドレセンスのKYOUKAが「あなたの思い出を握り潰します」というイベントが開催されたことも記憶に新しく、エイベックス・ベンチャーズでは、従来、掛け合わされることがないと思われていた、ロボットとエンタメの融合に出資する意義を見出したとのこと。

もう一つの出展はソーシャルVRサービス「cluster.」。自分の“ルーム”を作って、仮想空間でイベントを開催したり、他のユーザーのイベントに参加できるVRソーシャルアプリだ。世界中のイベントへボイスチャットやテキストチャットで参加できる。

エイベックスによるロボット企業への出資自体、それもドメスティックなカンファレンスにはない自由なやり取りを生む効果があり、実際、Slush発祥の地、フィンランドのメディア取材も受けたようだ。

Slush本国のCEOも実施をオファー。
STAR ISLANDの見せ方とは?

シェル型スクリーンが目を引くこちらのブースでは、昨年5月に初開催された未来型花火エンタテインメント「STAR ISLAND」の世界観がコンセプト映像と3Dサウンドで臨場感たっぷりに体験できる。明るい時間から参加してドリンクやフードを楽しみ、いよいよショーが始まると合計300台のスピーカー・システムが生み出す3Dサウンド、幻想的なライティング、そして100名を超えるウォーター・パフォーマーやファイヤー・パフォーマーのアクトと、主役である10,000発の花火がシンクロする演出。伝統花火と3Dサウンドとパフォーマンスの融合に、疑似体験とはいえ、来場者は没入している様子だった。

STAR ISLANDを担当するエイベックス・エンタテインメント株式会社の坂本茂義によると、Slushの本拠地であるフィンランドからきた起業家や投資家等のチームが非常に興味を持ち、色々なディスカッションがあったとのこと。出資者もスタートアップもジャーナリストも海外からの来場者が多いSlush Tokyoでは、個人で判断して興味を持つ人は積極的にアプローチしてくることが、このイベントへ出展した意義の一つと語る。

もう一つはSTAR ISLANDというリアル・エンタテインメントを一つのプラットフォームとすると、様々なテクノロジーやスタートアップを「ここに乗せていける」という手応えを感じた。例えば骨伝導スピーカーのスタートアップと組めば、聴覚障害のある人でも楽しめるかもしれない。STAR ISLANDというエンタテインメントがハブになり、新たなテック・リソースや非テック・リソースへ拡散していく可能性を感じたとも語った。

また、単にSTAR ISLANDを紹介するにとどまらず、シェル型スクリーンでの上映そのものがインスタレーション的で疑似VR体験のアピールになっていることも意義深く感じられた。

マネキン・デュオ“FEMM”の
サプライズステージに見たエンターテックの独自性

フィナーレの時間が近づき、MCがサプライズ・パフォーマンスのスタートを告げると、エイベックス社内のクリエイティヴ・チーム「2nd Function」がプロデュースするショーが始まった。エレクトロニックなサウンドが場内に鳴り響き、スタッフが「運んで」きたのは、これまでも2nd Functionとのタッグで、国内外のメディアから高い評価を受けてきたマネキン・デュオ“FEMM”。

彼女たちのパフォーマンスが始まると、会場からはざわめきが聞こえ始める。そこで繰り広げられたのは、パフォーマンスとテクノロジーのシンクロが生む異次元の視覚体験だった。動きをリアルタイムでキャプチャしレーザーがそれを捉える。彼女たちが表現する繊細でスピーディな動きに、投射装置から出るレーザーは遅れることなく追いかけ、それが“操り人形の糸“を表現していることに観客も気づき始めた。

「i-to(イト)」と名付けられたそのパフォーマンスに場内のざわめきは、次第にどよめきに変わり会場内から続々と人が集まり注目を集めた。このユニークなパフォーマンスは、トークが大半のステージで「ショーで見せるプレゼン」として機能し、まさに”Really! Mad+Pure”なアティチュードと言える。ショーを見た観客の反応から感じ取れる期待感から、今後のテック系イベントでもエンターテックは重要な位置を占めることは間違いないだろう。

ショーが終わった後も場内を闊歩。人機一体との2ショットのレアさに、多くの人が集まった。アニメやアイドルとは違う、ジャパニーズカルチャーのユニークさを表現するのにエンターテックの有用性を実感した。

スタートアップとテクノロジーのイベントの中でも、今回のテーマのように来場者の立場や肩書きによる壁がないSlushではエッジの立ったコンテンツが多い。ビジネスにダイレクトに繋がるかも大事だが、感度の高いものづくりやシステム構築を行う人たちに、エンタテインメント企業であるエイベックスが、意外な分野と協業している事実を伝えること。またどんなテクノロジーを持つ企業やスタートアップが、それを生かせるコンテンツがあるのかを見出す機会でもあったSlush Tokyo。一定の手応えを得て、今後、どんなスタートアップやテック系のイベントに出展していくかは前向きな課題となるだろう。

※エイベックス・ベンチャーズ株式会社は2018/5/31(木)に、エイベックス株式会社に吸収合併されます。

こんな内容

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