2月23日(金・祝)にレンタルキッチンスタジオ patia市ヶ谷店にて、「アレルギーフレンドリーブッフェ」が開催され、エイベックス・ヘルスケアエンパワー合同会社(本社:東京都港区、代表者:保屋松靖人)と業務提携している藤春幸治シェフがフードメニューを提供しました。
イベントに参加したサステナビリティ推進室の学生メンバーがレポートをお届けします。
「アレルギーフレンドリーブッフェ」とは、食物アレルギーでお悩みの方に、楽しくおいしい食卓を提案するイベントです。ケアリングフードレストラン「EPICURE」オーナーシェフの藤春幸治さん、カフェカンパニー株式会社エグゼクティブパティシエの岡田春生さんによる卵・乳・小麦・ナッツ不使用なブッフェメニューが提供されました。家族で同じ食事が食べられるという経験を通して、"食べること"に対して少しでも前向きに感じていただけるようなひとときをお届けするものです。
フードメニューを提供した藤春幸治シェフにお話をお伺いしました。
(写真左から)藤春幸治シェフ、四宮彩名
▶食事制限の有無に関わらず、同じテーブルで食を楽しめる「ケアリングフード」を考案したきっかけ、そこから自分のお店を持ち、起業に至った経緯を教えてください。
アメリカに、世界のトップシェフである叔父がいました。実際にアメリカに行ってみると、ヴィーガンやグルテンフリーといった多種多様な人々がいて、当たり前のように個人に対応した食事が提供され、同じテーブルで食事をする風景がありました。しかし、日本ではまだそういった飲食の提供がないため、僕が個人に対応した食事の提供をやろうと感じました。ただ、アメリカとは状況が異なるので、真似するわけにはいきません。そこで、日本では医療費が問題であったことと、糖尿病やがん、アレルギーの方々を含めた様々な人に提供する食事の定義がなかったことから、ケアリングフードという名前を付けました。
34歳で起業するまでは、ホテルの雇われシェフだったので、会社の意向にあったメニューを出す必要があり、こういう風なことをやりたい!と言っても、それはビジネスにならないからダメと全て拒否され、じゃあ自分で起業するしかないと思ったのがきっかけです。
▶メニューのアイデアはどのように考えているのでしょうか?
基本的には、企業を含め、お客さんからの要望をもとに考えています。一番のビッグデータはお客さんにあるんです。お客さんの要望を聞くレストランとすることで、様々な情報を集めることが出来ます。糖尿病を患っている方、アレルギーを持っている方が何を食べたいかなど生の声を聞くことができるんです。そして、その要望をもとにメニューを作ります。他にも、グルテンフリーの方に合ったパスタが作れないという、自分自身の構想をもとに、自分が作った壁を超えるためにメニューを考えています。また、疾患を持っている方々にヒアリングして、実際に困っていることに対してメニューの構成を作ることもあります。
▶人それぞれの要望に沿ったメニューを提供できる秘訣は何ですか?
より多くの人が食べられる材料を選定し、そこからさらに細分化して、材料を揃えています。そうすることで、ある一つの食材をアレンジすれば、ヴィーガンだけでなく、健康志向の方にも、アレルギーを持っている方にも対応できます。一般のレストランではこのコースしかやりませんと出すのが普通ですが、EPICUREにはメニューがありません。1way、つまり一方通行、これが出せるからうちに来てというのはあまり好きではなく、美容院のような人それぞれに合わせたアレンジを食事でできたら最高だよね、来てくださるお客さんも嬉しいだろうなと思って取り組んでいます。
▶アレルギーフレンドリーブッフェで提供したメニューはどのように考えましたか?
今回は、三大アレルゲン(卵、乳、小麦)とナッツ類不使用のメニューを提供しました。今日のメインはクロワッサン、パン・オ・ショコラ、ドーナツ、オムライスです。参加者の皆さんは、僕よりもアレルギーに関してのプロです。僕が安易に考えて、これが食べれたら嬉しいでしょという感覚だと喜んでもらえません。普段は食べられないもの、例えば、卵、乳、小麦を使っていないクロワッサンやドーナツ、オムライスなどはなかなかありません。アレルギーを気にせずにお料理を楽しんでほしい、という想いで作りました。
▲アレルギーフレンドリーブッフェで提供された卵・乳・小麦・ナッツ類不使用のメニュー
▶藤春シェフの今後の目標を教えてください。
次世代へバトンを渡したいです。料理人は、料理長になりたい、有名になりたい、自分のお店を出したいという夢で進んでいます。そのため、人のためにアレルギーの対応や、医療系の食品を出したいという人はなかなかいません。そこで、今そのような部分に興味がある人たちに、知識やレシピ、ノウハウを全て伝授したいです。そして、その方々が僕から得たヒントをもとに、違うものを作っていきたいなど、そういう考えが生まれることが社会をハッピーにすると思います。
今僕が取り組んでいるのは、目の前の点の話です。目の前のある食材を食べられない人に、食べられるものを提供しているだけで、根本的な解決には至りませんが、それも大切なことです。食べるものを選ぶ"選択"、選んで、食べて、もう一回食べたいと思って、また食べる"継続"。この選択と継続がとても大切だと思っています。しかし、真面目に取り組んでいても誰も聞いてくれません。世間の人々に知ってもらうためには、エンタテインメントが必要なんです。
会場の様子
食物アレルギーのお子さんをもつご家族、自身が食物アレルギーの方々70名が、アレルギーフレンドリーブッフェを堪能されました。多数の応募があり、キャンセル待ちの方がいらっしゃったほど大盛況でした。普段は食べられないようなメニューを前に、喜ぶお子さんたちの顔と、それを見て自然と笑顔になるご家族の皆さんが多くいらっしゃいました。卵アレルギーを持っている方が普段は食べられないオムライスを食べられるだけでなく、アレルギーを持っているお子さんたちでは難しい、同じテーブルで同じ食を楽しめる風景が広がっていました。
【学生メンバーのコメント】
食物アレルギーを患っており、普段は食の制限があるお子さんと、それをサポートするご家族の皆さんが、食を通して笑顔になれる夢のような空間でした。私の弟も食物アレルギーを患っているため、除去食や代替食は食べたことがありますが、決して美味しいとは言えないものも多いです。ところが、藤春シェフの作る料理は、単にアレルゲンを使わないだけでなく、例えばオムライスは卵を使っているようにしか感じないほど、どの料理もとても美味しいものばかりでした。さらに、気さくな藤春シェフの人柄に触れ、多くの人が笑顔になっている姿がありました。
食物アレルギーはがんなどの疾患と異なり、死に直結することが少ないことから、軽視されやすい疾患です。しかし、特に小さいお子さんに多く、学校や普段の食生活などに支障をきたします。またQOLの向上にアレルギーの改善は欠かせません。藤春シェフがおっしゃっていたように、このことを食や学術研究を通して伝えるだけでなく、エンタテインメントを通して発信することで、多くの人に知ってもらう機会を作る必要があると感じました。(四宮)
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