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エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

ハイライト

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2024年、設立10周年を迎えたエイベックス・ピクチャーズ(API)。アニメ・映像業界にとって激動の時代と言われるこの10年間を、APIはどんなチャレンジとともに生き抜いてきたのか——以前、APIを作り上げた社長3人の鼎談をお届けした。

今回は、APIのなかで大別される「アニメ領域」と「映像領域」における、これまでの多様な挑戦の軌跡を辿る企画の後編。

前記事は、APIの代表作の一つである、オリジナル作品「Paradox Live」を例に「アニメ領域」におけるAPIの作品づくりへの挑戦についての記事をお届けした。

本記事では「映像領域」のこれまでの挑戦を作品を例に紐解いていく。

知識と経験を重ね、
自分たちが手掛けるべき作品を追い求める

映像領域を担当する株式会社エイベックス・フィルムレーベルズ(AFL)の中は、国内の映画・ドラマ・配信オリジナルの企画制作や、他社企画作品への出資参画を主軸とする「映像制作グループ」と海外パートナーとの共創を主軸とする「グローバル映像事業グループ」が存在する。

「映像制作グループ」を牽引する西山剛史は、同社が扱うIPの多様性を実現する、充実したポートフォリオこそAFLの強みだと語る。

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

「AFLが右肩上がりに成長していくために、国内の映画・ドラマ・配信オリジナルから韓国ドラマ、音楽アーティストのドキュメンタリー映画やライヴビューイングなど 、多様な実写コンテンツを年間通して展開していくポートフォリオ戦略を掲げています」

ではここからは、その多様なポートフォリオのなかからいくつかの作品を例に、「映像制作グループ」の奮闘や挑戦のありようを垣間見ていきたい。

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」
2024年公開。韓国ドラマ『元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜』を原作とするリメイク。「カメラを止めるな!」で大ヒットを記録した上田慎一郎の監督作。内野聖陽演じる真面目な公務員が、岡田将生演じる天才詐欺師と手を組み脱税王から10億円を騙し取る“痛快クライム・エンターテイメント”。

西山「上田監督が所属するPANPOCOPINAとは業務提携をしていて、本業である監督以外の業務、メディアへの出演依頼やCMの制作依頼などに関しては我々が窓口になってお仕事をお繋ぎしています。そういった関係も元々ありますし当然クリエイターとしても映画「ポプラン」を制作した実績がありますので、上田さんが新作を監督すること、それに加え豪華なキャスト陣という魅力もあって参画を決めました」

またこの作品では、映画本編からスピンオフした配信ドラマシリーズも展開されている。

西山「映画本編に携わる一方で、エイベックスとして提案したのがLeminoでのオリジナルドラマの配信展開でした。上田さんに監督していただいて、岡田将生さんを中心に本編の前日譚を描いたオリジナルドラマを制作しました。マルチ展開によって映画とドラマ双方に良い効果がもたらされる良い事例になったと思います」

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

ドラマ「未成年~未熟な俺たちは不器用に進行中」
全世界で640万ビュー以上を記録したウェブトゥーン(韓国で人気のスマホ向け縦読みマンガ)が原作のBL作品。とある高校の優等生とクラスの問題児が、初めての恋にとまどいながらも人間として成長していく様子を描いた純愛ラブストーリー。全10話のテレビ ドラマシリーズ+FOD限定のアスターストーリーで構成。

西山「韓国のマンガが原作ですので、それを日本にローカライズするにあたっていろんな苦労がありました。韓国が舞台のものを日本の環境や文化にどう置き換えていくか、脚本段階から原作者さんとも密にお話をしながら制作していきました」

BL(ボーイズラブ)ジャンルはスマッシュヒットする確率が高い、と西山は語る。国内に留まらず海外でも人気は高まっており、とても注目しているジャンルだという。

西山「日本ではBLは以前から熱い支持層がいましたが、『おっさんずラブ』や『美しい彼』、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』といった作品のヒットを経て、いまはより多くの支持を集めている実感があります。それが日本だけでなくアジアでも受け入れられるジャンルにまで、今まさに成長していると感じています」

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

映画「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」
2025年秋公開 。オダギリジョーが脚本、監督、編集、出演を手がける、テレビドラマシリーズの映画化。警察官とその相棒の警察犬オリバーが、不可解な事件に挑む姿を奇抜な世界観で描く“可笑しなサスペンス”。

西山「まさにオダギリさんの魂が込められた企画です。作品に対してここまで熱意を持った人が中心にいると、まわりにいる人たちを突き動かしていくんですよね。ひとりの情熱が伝播してヒットにつながっていくという光景は過去にも見たことがありますし、その熱量をもった作品だと思います」

西山「製作幹事、配給、配信、海外セールスは我々が行なっています。劇場公開に向けた宣伝は満塁を中心に製作委員会パートナーと協力しながらプランニングしています。オダギリさんにも様々な場面で積極的に協力していただいてますし、まだ具体的には言えないですが公開に向けて面白い展開が実現できると思います。製作幹事として我々が推進しながらも、オダギリさんの狙いや思いも大切に、一緒に進んでいきたいと考えてます」

上述の3作をはじめ、どの作品も、マーケットの潮流を読みながら、APIが手掛るべき作品かどうかを制作方針に照らし合わせながら判断した上で制作が始まっていく。興行収入、配信、パッケージの見込みはもちろん、コンテンツがマルチ展開できるか、クリエイターや企業と理想的なアライアンスが構築できるか、または海外市場を狙えるかといった視点でも慎重に検討され、またその判断基準も年々アップデートされているのだという。

西山「なにかチャレンジをしたらきちんと振り返りをして、それを次の作品に活かす。次のマーケティングに活かす。そうやって自分たちの知識と経験を積み重ねていくことも重要だと思っています」

「音楽映画といえばエイベックス」を目指し、
前例のない挑戦を

次に、「グローバル映像事業グループ」の取り組みにも注目したい。

同グループの強みは、海外で躍進するパートナーとの強力なタッグを組み、国内の既成概念をも崩しながら先進的なコンテンツを届け続けていることにあるだろう。

もとより海外の映画・ドラマの配給を行なってきたが、2016年、BIGBANGのドキュメンタリー映画「BIGBANG MADE」の配給にともない韓国のシネマカンパニー CJ 4DPLEX社と協業したことを皮切りに提携関係を深め、映画配給の先にあるDVD/Blu-rayや配信の運用も手がけるようになっていく。アーティストやパートナー企業、そして事業展開の幅も徐々に広がり、ライヴビューイングなど先進的な取り組みも交えながら現在の事業領域を形づくってきた。

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

ここからは「グローバル映像事業グループ」を牽引する久保田昌穂に、作品事例を踏まえてこれまでの歩みと展望について聞いていこう。

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

映画「BTS: Yet To Come in Cinemas」
2023年公開。全世界が熱狂したコンサート「BTS<Yet To Come> in BUSAN」の“すべてを記録した”ライヴフィルム。SCREENXや4DXといった体感型シアターを活用した臨場感と没入感、そして会場の一体感で大きな話題を呼んだ。

このコンサートは開催時に既に生中継もされていたが、そこでは使用しなかったシネマカメラ14台を動員した迫力ある映像に仕上がっている。

久保田「放送や生配信で観たコンサートをもう一度劇場に観に来てもらうことに対し当初不安もありました。しかし、劇場のお客様の声を聞くと、シネマカメラでの映像と新たな編集により、家で観た放送/配信版とは全く違うクオリティに仕上がっていたこと、そして、劇場で同じファンの方々と一緒に熱狂しながら観られたことを本当に喜んでいただけたと実感できました。又、CJスタジオの技術の高さにも驚きました」

映画館での熱狂的な新体験。それは全国のBTSファンのみならず、多くの音楽ファンの心に火をつけ、同作は動員102万人、興行収入25億円超という好実績を残すこととなる。

久保田「エイベックスは音楽の会社と見られることが多いですが、映像事業においても他社に負けないんだ、と自信がつきました。CJ 4DPLEXさんやHYBEさん等、外部スタジオ/事務所/レーベル各社様とのパートナーシップも拡大しながら、“音楽映画といえばエイベックス”といわれる存在になることを目指していきたいと思っています」

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

映画「BE:the ONE -MEANT TO BE-」
BE:FIRSTの初の全国ツアーの模様やその裏側、メンバーインタビューや貴重映像で構成されたドキュメンタリー映画。2023年公開。

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

映画「=LOVE 7th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT THE MOVIE」
=LOVEの 7周年コンサートのライヴパフォーマンスを映画化。2025年4月4日公開。

久保田「SCREENXや4DXといった体感型シアターの魅力を最大限に活用できるような、優れたライヴパフォーマンスを持つ邦楽グループの映画を撮りたい、という希望がCJ 4DPLEXさんにもありました。そこで男女それぞれのアーティストグループに声をかけさせていただいて、映画化が実現しました。そして、ここに挙げた作品は両グループにとってそれぞれ2作目の映画化になっています」

先述のとおりAPIは、CJ 4DPLEX社との協業でBTSをはじめとする韓国アーティストの姿をフィルムに収め届けてきた。そこで培ってきたものを国内アーティストにも向けてみようという試みがこれらの作品だ。

久保田「我々は、制作現場ももちろんですがビジネスの契約などにおいてもコーディネーターという役割でCJ 4DPLEX とアーティストの間に入り、3者で一緒にプロジェクトを進めていきます。こうした海外スタジオと邦楽の座組みはそれまでほぼ前例がないので、ビジネススキームや撮影スケジュール、ライヴ撮影当日のカメラ位置など、事務所やレーベルとは念入りにコミュニケーションを取りながらスタートしていきました」

新しい事業を先駆者として開拓することとは、信頼に足る“前例”をつくることだとも言える。その意味で彼らは、確かな手応えも感じ始めている。

久保田「国内アーティストとの取り組みを始めた頃は、企画を立ててもアーティストサイドからは不安の声もあり、同意が得られないこともありましたが、こうして成功事例を積み重ねていくなかで、アーティスト側からお声をかけていただくことも増えてきました。またこちらから提案をするときも、実績を知っていただいていて前向きに企画が進んでいく実感があります。“音楽映画といえばエイベックス”といわれるような土壌が出来てきたんじゃないかなと思っています」

前例は自分たちでつくる。そうしてシーンを変えていく。それが出来始めているという自負が、いまの彼らにはある。

同じ目標を目指すパートナーと共に
エイベックスらしい挑戦は続く

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

数多ある日本の映画会社・配給会社のなかで、エイベックスらしい事業展開を実現できている理由を問うと、ふたりは「音楽を手掛けてきた会社であること」と「チャレンジ精神のある会社であること」を挙げる。

久保田「音楽レーベルや音楽事務所を抱えている会社として、映画を単発で考えたくないんです。アーティストのブランディングの一環として、映画作品でアーティストに寄与したいという思いがとても強くあります。また、会場でライヴを観ることができなかった人たちに、身近な映画館で本会場に負けない迫力あるライヴ映像やアーティストの生き様をフィルム化して観せるという事業においては、他の映画・映像会社に比べ“音楽の会社のなかにある映像部門”というアドバンテージを感じています」

西山「IPをつくってヒットを生み出す、というのはエイベックスがこれまでやってきたことの原点。これは映像の領域においても同じこと。映画・ドラマでもIPを自分たちで プロデュースし、それをヒットさせる。その意識をいつも持っています。またできれば音楽・タレント・映像というエイベックスの資産を盛り込んでいい影響を与えられることも考えていきたいですね」

久保田「映画業界というのは歴史もあり、老舗の映画会社が多く存在するなか、やっぱり僕らはいい意味で“異端児”だと思っています。エイベックスの根本にあるチャレンジ精神、現状の既成概念を打破していこうとするマインドは、映像に携わる我々のDNAのなかにも入っています」

西山「チャレンジ精神によって得られるもののひとつは、新しいことに挑戦するスピード感だと思います。たとえば、コロナ禍で急速に伸びた電子コミックの市場に着目して、実写チームでありながら電子コミックのIP開発も進めているんです。そういう柔軟性、チャレンジを許容してくれる会社の懐の深さは、プロデューサーとしてもやりがいのある環境だと思いますね」

既成概念に捉われない柔軟な発想のチャレンジを重ねることで、新たな可能性は続々と生まれていく。

そこで大切にするのは、パートナーとの豊かな連携関係のなかでヒットを狙うということ。

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

西山「新しい領域にただ足を踏み入れていくのではなく、その領域でもしっかりIPをヒットさせるという信念はブレていません。またそのために国内外の外部プロデューサーやパートナー企業とアライアンスを構築していくことも社の方針として掲げています」

久保田「我々の事業は、自社だけでは絶対にできないこと。これからもエイベックス・グループ各社や外部のパートナーと一緒に同じ目標を目指す、ということを大切にしていきたいですね」

共に同じ目標を目指すパートナーとのリレーションシップを育むことで、国内外のエンタメにあらたな可能性をもたらし続けていく。その先にあるのは、受け手のひとりひとりがこれまでに体験したことのないような感動や興奮だ。

エイベックスのシナジーを活かして挑戦し続ける、アニメ・映像業界の“異端児”API

(写真左)
株式会社エイベックス・フィルムレーベルズ
グローバル映像事業&配給グループ
久保田 昌穂

(写真右)
株式会社エイベックス・フィルムレーベルズ
映像制作グループ
西山 剛史

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