美容商材を製品開発から製造、販売まで行うavex beauty method。昨年発売した美顔器カテゴリー商品・イヤーアップは約5万個を売り上げるヒット商品となり、その業績でエイベックスの社内表彰制度である「Mad+Pure Award」も受賞。今回はavex beauty methodシニアプロデューサー 新規事業開発の尾関政輝、同事業開発と営業担当の中山勝代、アライアンス部門の谷口亮太に、エイベックスがビューティー事業に取り組む意義を聞いた。
異なるバックボーンで
培ったノウハウを
活かしたプロジェクト
広告代理店勤務を経て、エイベックス入社後も広告業務に携わっていた尾関が異動でこのチームの責任者となって1年。
尾関「アーティストやタレントに対して、美容事業ならずっと継続的に活用していただけるし、やはり日本の美容商材や美容ブランドは世界的に見てもクオリティが高い。うちの会社で他に世界的なコンテンツといえばアニメ等もありますが、美容もそれぐらい大きな柱になりうるんじゃないか? という志で事業立ち上げ当時から捉えていますね」
芸能関係のマネジメントを長年経験してきた中山は女性ならではの感性での気づきが多かったという。
中山「サロンが外苑前と表参道の間という土地柄もあり、働く女性のお客様がお仕事疲れや精神的なストレスを癒しに来られることが多くて。そんな時、ちょっと肌の透明感を増したり、ハリを与えてあげたりするだけで、みなさんからモチベーションが上がり、毎日出社するのが楽しくなったと言っていただけたりと、生の声を聞いてきました。サロン自体は一旦閉店しましたが、やはり働く女性に少しでも元気になってもらえる、お役に立てる商品を作りたいという思いから、イヤーアップも生まれました」
また、前職が化粧品と健康食品メーカーでの製造と販売戦略部門だったという谷口は、その経験を生かし、エイベックスのソリューションやアーティストを動かし、他の企業のPR企画を担当。今年7月の体制変更でavex beauty methodプロジェクトに合流。異なるバックボーンを持つ少数精鋭のメンバーで、商品開発から製造、販売まで手がけることがこのプロジェクトのMadでPureな部分だと尾関は言う。
サービスの主幹は体験。
エイベックス独自の
プロモーション展開
美顔器カテゴリーで大ヒット商品となったイヤーアップ。耳つぼにイヤーアップが触れる構造で、耳にかけるだけの手軽さも相まって、「ながら美容」が実現できる斬新な商品だ。だが、構想から発売までの道のりは相当険しかったらしい。
中山「実に構想から発売まで5年かかりました。アイデアレベルの試作から始まり、ご一緒する会社さんを探すことにも時間がかかりましたし、イヤーアップをツボに当てるとなぜ効果的なのか? という科学的な根拠の答えは出ないわけです。そこで埼玉医科大学の教授にご指南いただき現在の形状になったのですが、その辺りが一番苦労しました。また、外部の工場さんをはじめ、いろんな方の力をお借りして着地できたものなので、それだけ長く売っていきたい、売らなければいけないという気持ちはあります」
美容メーカーではない苦労がありつつ、サロンワークで蓄積した知見が、エイベックスが美容に関わるなら何を作るべきなのか? にフォーカスできた理由だろう。そして商品が完成しても、化粧品メーカーではないエイベックスがどのようなプロモーション展開をすべきか? という課題が立ち上がる。
尾関「美顔器カテゴリーでいうとラッキーなことに競合商品がないんですよ。ただ逆にどういう商品なのかわかりづらいということでもある。また、大手メーカーさんのように潤沢な広告費があるわけでもない。それで僕たちは地道なことをやってきたんですが、やっていくうちにわかったのは、やはり体験してもらうことなんです。それでお店以外に美容院においてもらったらすごく売れたんですね。美容院は鏡の中で全てが起きるので、髪を切る間の10分、片方だけイヤーアップをかけて左右の違いを実感してもらう。そうすると『これって手が開くからすごく便利!』等、効果以外のことにも気づいてもらえる。言わなくてもわかってもらえるので、そういう形のプロモーションがメインですね」
美容院での販売以外にもタッチ&トライのイベントとしては、エイベックス主催のWANDERLUSTでのイヤーアップを装着してのヨガ体験や、ホットヨガ・スクールが開催する鈴木亜美も登場するヨガプログラムとのコラボレーション等、エイベックスならではのプロモーションを展開中だ。
尾関「やはり僕らの会社はライヴもそうですし、体験を売り物にしているというか、サービスの主幹は体験だと思うので。WANDERLUSTのように弊社が持っているコンテンツと掛け合わせて、さらに相乗効果を生むということは、イヤーアップに限らず、他の商品でも取り組みを広げて考えていきたいですし、商品と体験をセットにしたソリューションを開発したいという思いはありますね」
ライフスタイル事業で、
一般まで広くバックアップする
ナショナルクライアントである老舗の化粧品メーカーが強い存在感を示してはいるものの、安全・安心な日本の美容商材は海外展開も可能性を秘め、市場的にも高いポテンシャルを持つという理由で、ビューティーから始まり、さらにヘルスケアも含めたライフスタイル事業をエイベックスの主幹事業に育てることが尾関のビジョンだ。
また、数多くの時代を象徴するスターやアーティスト、ファッションのトレンドを創出してきたエイベックスだからこそ、商材への信用度、注目度の高さは強みになる。
尾関「会社として、これまで多くのスターや美しいものを作ってきたわけです。それ自体が資産なので、その資産を活用できるビジネスという意味で、ビューティーは親和性が高い。そして、ライフスタイル事業は社会貢献だと思っていて。まず、チームの人間が幸せになり、社員のみんなもこの事業を通じて明るい気持ちになってほしい。そもそも女性だったらきれいで健やかになって、仕事も遊びも楽しくなる、そういう人を幸せにする事業になってほしいなと思いますね」
谷口「今までエイベックスはテレビに出るようなスターを育ててきたわけですが、今後はそのノウハウを一般の人たちをバックアップできる商品作りに反映できると考えています。今やYouTuberどころかVTuber等も登場しているので、テレビや雑誌にこだわらずに個で光を発している人もフックアップしたいですね」
エンタテインメントの世界で時代を象徴する女性像を創出、つまり実際にアーティストに多く接し、作品やマネジメントで関わってきたエイベックス。アーティストや社員への思いやりから生まれたこの事業には、エンタテインメント領域で培った「今の女性が何を求めているか」というエイベックスならではの感覚が生かされているのだ。
尾関「美容の話じゃないんですけど、うちの会社の女性は美味しいご飯屋さんをすごく知ってるんですよ(笑)。美容も食もいいものを知っていて、かつアーティストをきれいにしてステージに上げ、それを見てファンになったり、好きになってもらう、そのノウハウを僕らは持っている。美しくしてステージに『上げる』というノウハウを商品を通して一般の方に提供することで、その方のライフステージを一つ上に『上げる』ことができればと思っています。美しく豊かに楽しい毎日を過ごしていただきたいですね」
「エイベックスが美容事業をやっているというと、「そうなんですか?(Really?)」と言われることがありますし、最初は『やれるわけないでしょ』と社内でも思われていたんじゃないでしょうか。でも立ち上げから8年間、大変なこともあったし、イヤーアップも何度か挫折しそうになったのですが、やはり世の中や人の役に立ちたいというところはPureな思いですね」と、社内では新しい事業でありつつ、ユーザーもアーティストも、さらには世の中も包摂したロングスパンの取り組みを標榜する尾関。今後ますますあらゆる企業で中核をなすライフスタイル事業で、avex beauty methodがどんな提案をもたらしてくれるのか、引き続き注目していきたい。
なお、8/1(水)には第二弾商品として、飲む夏の美容ケア「AOPALE(アオパレ)」をONLINEでの販売をスタート。体の内側から紫外線予防やケアができる商材として、イヤーアップに続くヒットになるか? 市場の反応を見守りたい。
(写真左)エイベックス・エンタテインメント株式会社
事業開発本部 ライフスタイル事業グループ
ヘルス&ビューティーユニット
中山 勝代
(写真中)エイベックス・エンタテインメント株式会社
事業開発本部 ライフスタイル事業グループ
ヘルス&ビューティーユニット
シニアプロデューサー 尾関 正輝
(写真右)エイベックス・エンタテインメント株式会社
事業開発本部 ライフスタイル事業グループ
ヘルス&ビューティーユニット
谷口 亮太