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ハイライト

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2019年3月、エイベックスはライヴ配信サービスで活動するライバーを中心に数多くのクリエイターが所属する株式会社TWHと、美容系YouTuberのマネジメント事業とメイク・コスメのコミュニティメディアサービス『MAKEY』の運営を行う株式会社MAKEYのM&Aを発表した。加えて、世界53カ国でYouTuber Academyを開講し、自社で育成したアジア最大級7,000人のインフルエンサーネットワークによる海外プロモーション事業を展開する株式会社 Cool Japan TV(以下CJTV)との合弁会社を設立し、インフルエンサー育成に特化した教育事業を立ち上げた。従来型のアーティスト・コンテンツマネジメントのノウハウをリソースとし、デジタルクリエイターおよびインフルエンサーの発掘と領域拡大を積極的に推進している。この域へ事業拡張する意義と市場への影響・可能性について、本件主導組織であるCEO直轄本部長・加藤グループ執行役員とエイベックス・マネジメント(以下、AMG)の都築執行役員に話を伺った。

インターネット領域からの
新たな導線作り
強みを仕事にする時代に生まれた
「連合軍」

株式会社TWHのM&Aおよびクリエイターエージェンシー『WaVE』の共同設立、株式会社MAKEYのM&A、そしてCJTVとの合弁会社設立--

エイベックスは、ここ最近「ネット領域の人気者」への事業拡大を急速に進めている。

その動きをAMG都築と一蓮托生で推進するのが、加藤が本部長を務めるCEO直轄本部。グループ戦略領域と新規事業領域を内包する同部署の役割、そしてインターネット領域を対象とした一連のアクションについて「未来のエイベックスを目指すためのイノベーションのドライバー」だと同氏は言う。

加藤「これだけ外部環境が変わってテクノロジーも進化している中で、当然いろんな事業領域にチャレンジするべきだと。ただし、僕らの根本はコンテンツの会社なので『時代に合った人気者』を常に作り続けることがすごく大事だし、どこまでいってもそれが会社の核だと思うんです。そこで言うと、人気者のあり方も大きく変わっている中でネット領域のクリエイターといかにスピード感を持って手を組んでいくかというのは、すごく大事なフェーズにきているんじゃないかと。そして、この領域に参入する上では、既存の組織と既存のスタッフでゼロイチを行うって言う自前主義に固執しないで、その領域でノウハウを持っている人や会社を外から迎え入れて、その人にドライバーになってもらうことで、ドライブがかかっていく可能性があるんじゃないかと考えていました。なので、新規事業を含めた事業開発と投資担当者という役割からこの領域のポートフォリオ構築をAMGと一緒に動いています」

一方都築は、これまでマネジメント関連業務および育成、営業、アジア戦略等を総括する立場で、YouTuberに見るマネタイズモデルとプロダクションそのものの将来性という課題から、ネット領域への事業拡張の必要性を感じていたという。

都築「プロダクションの稼ぎ方って大きく分けて3つしかないんです。広告、ギャランティー、そしてお客さんから直接拠出していただくサービスの対価。一方で、YouTuberの皆さんは個人が努力して広告費や企業からPRのオファーをいただいたりする。これって個人拠出の変化系、新しい稼ぎ方なんです。また、松浦会長から『CtoCの領域をどうするか』、要するに、これからネットだけで活躍できちゃうような人がバンバン出てきて、プロダクションというものが将来なくなるんじゃないか--というような課題を与えられていて。今までのプロダクション的機能だけではなく、エージェンシーという新しい機能も必要になってくるだろうと」

加藤「あと、発掘っていう視点も非常に重要で。僕がAMGに所属していた2011年からはちょうどニコニコ動画が一気に盛り上がる時期と重なって、その初期からいろんな企画をご一緒させてもらっていたという自負があって。ただ、当時いちスタッフとしてはネット領域への挑戦をフルスイングでやり切れなかった心残りがめちゃくちゃあったんです。そして今スターを見渡すとやっぱりここ出身の方がたくさん名を連ねている。その原体験と、やっぱり旬のプラットフォームにイケてる人材が集まるのは間違いないので、僕らが未来のスーパースターにつながるような人材を発掘するという意味でも、ここの領域に張らない理由はないと思っていました」

個人が自らをコンテンツ化し、プロダクションを介さず直接的に報酬を得る。一見際限ない自由度と可能性を有するネット領域での活動にも課題はある。それは、クリエイターやインフルエンサーの出口の設定、ネットのフィールドである程度まで人気が高まったとして、その先の導線が敷かれていないという現状だ。そしてその現状こそが、M&Aの意義であり、AMGの強みを発揮できる新たな領域であることを示している。

都築「インフルエンサーを束ねているプロダクションは、ある領域までいくとその先の活動を単独で用意することが難しいと思うんです。けれど、エイベックスグループであれば、芸能プロダクションとしてマネジメントも出来ますし、音楽やライヴ制作、ファンクラブ、マーチャンダイズ機能もグループの中で全て完結出来ます。また、PR部隊も強く、これまでお世話になってきたメディアとの距離も近い。その人に実力があるという前提ではありますが、しっかり導線が作れるというのはエイベックスならではの強みではないかと」

加藤「AMGの中でライバーやYouTuberとして活動したい人がいればMAKEYやTWHに預けたり、逆にMAKEYやTWHのクリエイターで音楽活動など次のステップに進みたい人はAMGがサポートしたり。グループであれば横並びで相互関係でやっていける。今って、強みで仕事をする時代だと思うんです。僕らがゼロイチをやるんじゃなくて、僕らが持っていない強みを持っている会社と組むことによって連合軍になっていこうぜっていう。その連合軍にエイベックスがいるっていうのは手前味噌ながら強さだと思うし、今の僕らの一枚絵を仕上げていく上で、この考え方はすごく重要なんじゃないかなと考えています」

フィールドが多様化する
時代のチャンスに
「YouTuber Academy」が
掲げるミッション

「連合軍」での進出領域は日本国内に留まらず、アジア、ひいては世界だ。この2月、アジア諸国を中心に7千人規模のインフルエンサー開発プログラムを独自展開しているCJTVと合弁でavex & cjtv Influencer株式会社を設立し、「YouTuber Academy」を開講。その中核には、越境で活躍できるソーシャルエンタテインメント時代のスター育成というミッションがある。

都築「たとえば、どこかの地方自治体からオファーを受けて、YouTuberがその土地を紹介する動画をYouTube上にあげる。するとフォロワーたちが実際に旅行に行くんです。CJTVの場合、育成だけではなく、そういったインバウンドをビジネスにしているんですね。僕らはYouTuberを育成したいと思っても自前でやることは残念ながら出来なかった。やるとしても本物のYouTuberじゃなければ教えても説得力がない。その点、CJTVの講師はYouTuberなんです。今後、CJTVがお持ちの教育ノウハウと、エイベックスが持っている様々なアセットを組み合わせて未来のスターを育成していくことがミッションとなります」

加藤「それと、まだこれはサービスとして対外的には発表していないんですけど、オンライン上でクリエイターとビジネスをマッチングするようなサービスを今考えていて。なので、それが案件とクリエイターをつなぐ機能としてあって、育成の文脈で『YouTuber Academy』があって、既存のマネジメントとネット領域があって--。これらの機能と役割で全体を作っていくイメージです」

都築「結局僕らが大事にしているのは、想いの強さなんですよね。これからの時代は表現することが強みになるし、『こうなりたいんだ』っていう想いの強さが必要かなと思っているんで、僕らはそういうようなタレントを世界に届けていきたいなと。夢の実現のお手伝いをするのが僕らの仕事だと思うんです」

加藤「今までは国内だけで考えても、なるべく東京に出てきて、ひとつの出口を誰かが掴むっていうのを競っていた時代だと思うんです。だけど、これだけ活動のフィールドが多様化しているという中で、人になにかを伝えられる活動が地方にいながらでもできる時代になった。何かを発信したい人にとってはすごくチャンスが多い時代がきていると思うんです。やっぱり僕らとしてはそこに対応できるようにいろんなものを変えていかなきゃならないし、拡張していかなくちゃならないと思うので、今まさに都築さんと一緒にその動きをやっていますね」

“Really! Mad+Pure”を掲げる
エイベックス
事業共創の時代に
生み出す新しいスター

アーティストマネジメントのノウハウとメディアへの交渉力を持つエイベックスとソーシャルの領域で独自のノウハウを培ってきた新興エージェンシー。互いが互いの強みを必要とするタイミングが訪れたことで、エンタテインメントの可能性はさらに広がっていくのだろう。今後の展望について、両氏は明確な地図を描いている。

加藤「まずは今の機能とジョインしてくれた仲間でオールフィックスとは思っていないので、今日させてもらったような話に共感してくれて、僕らと一緒に仲間になってくれる人、会社がいればまだまだ迎え入れて一緒にやっていきたいなと思っています」

都築「僕は、象徴になる人っていうのがやっぱり必要かなと思っています。いわゆるスターが。たとえば、『MAKEY』のトップYouTuberでもある“こばしり。”さんを僕らが側面支援することで更に高いステージに押し上げ、日本だけじゃなくて、アジア中、世界中から彼女を目指したいと思われるような象徴にしていく。その必要性も感じています。“こばしり。”さんのようにメイクをHOW TOしているYouTuberの方って、世界中ニーズがあると思っているんです。可愛くなりたいっていう気持ちは万国共通じゃないですか。ただ、結局YouTubeって一日に何万もの動画が公開されているので、越境で活躍するインフルエンサーになるには僕らのグループリソースを活用したほうが確度が高くなると思うんです。そして、今回M&Aさせて頂いたことで仲間入りして良かったって実感してもらいたいなと。そうすると、次から次へ『俺らもぜひ入りたいです』っていう話にもなっていくと思うので、そこの成功事例を作るっていうのが加藤さんのヴィジョンに繋がっていくんじゃないかと思っています。やっぱり僕らは、スターを作らなきゃだめだと思っています」

「既存のマネジメントモデルやマスメディアがレガシーで、インフルエンサー・マーケティングやネットメディアがイケてるのかっていうと全然そうじゃなくて、全部が共存する時代に入っているんだと思うんです」。そう語る加藤が今回のM&Aおよびソーシャル時代のアーティスト・コンテンツ創出の指針としているのが、エイベックスのタグラインだ。

加藤「エンタテインメント領域で“Really! Mad+Pure”なことを起こし続けるのが、うちのカッコ良さであり、そこが楽しくて働いているわけなので、既成概念とか役割に捉われずに会社のためになるんだったらいろんなことをアグレッシブにやりたいと思っていて。なので、今回の動きにしてもそうですけど、“Really! Mad+Pure”は自分の思考と行動のベースに間違いなくあるものだとは思っています。これからも価値創出でもビジネススキームでも『マジで?』ってことをやって行きます」

一方で都築は、このタグラインを「創業の心」とも表している。

都築「僕が入社した2001年頃、エイベックスは様々なエンタテインメントを世の中に発表していました。でも先輩たちはよく『あの頃』を懐かしむことがあって。それって置き換えると、MadでPureなことをやりまくっていたっていうことなんじゃないかなと。そういった“創業の精神”を自分たちなりに置き換えていく必要があるのかなって考えていて。意外に自分はPureなので(笑)、どうMadにしていいのか迷うこともありますが、時にはやんちゃにという意味だと自分の中では置き換えているので、そういう意味でいうとYouTubeの学校を僕らがやるとか、すごいことだと思うんですよね」

ソーシャルメディア時代のスター創出、それは常に時代の「人気者」を生み出してきたエイベックスが担うべき使命とも言えるのかもしれない。進む多様化と発達するテクノロジー、そしてその領域で展開されるMadでPureなイノベーション。まったく新しい時代のアイコン誕生を期待せずにはいられない。

(写真左)
エイベックス株式会社
グループ執行役員
CEO直轄本部 本部長
加藤 信介

(写真右)
エイベックス・マネジメント株式会社
執行役員
都築 裕五

こんな内容

関連リンク

株式会社 TWH
株式会社 MAKEY
avex & cjtv Influencer株式会社
株式会社 Cool Japan TV
エイベックス・マネジメント株式会社
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