昨年、結成10周年を迎えたDa-iCE。ボーカルの大野雄大・花村想太、パフォーマーの工藤大輝・岩岡徹・和田颯から成る5人組男性アーティストだ。2014年のメジャーデビュー当時から所属していた他レーベルを離れ、2020年11月にリリースした「CITRUS」は、人気ドラマの主題歌として幅広い層からの注目を浴び、日本人男性ダンス&ボーカルグループ史上初のサブスク1億回再生突破という快挙を達成。そして2021年、同曲で「第63回 輝く! 日本レコード大賞」を受賞した。Da-iCEにとって結成10周年の節目を彩るにふさわしいトピックスであふれた2020年〜2021年を基点に、結成時からの歩みと現在地、そして今後の展望について訊いた。
「ライヴ以外にも楽曲を
届けられる場所を
つくっていただけた」
2020年8月以降、6ヶ月連続リリースやグループ初となる全国アリーナツアー『Da-iCE ARENA TOUR 2021 -SiX-』敢行など、コロナ禍ゆえの制限もあるなか勢力的な活動ペースを維持してきたDa-iCE。結成10周年を迎え、さらなる躍進を見せる一方で、現在のポジションを決定づけた2020年から2021年にかけての活動を振り返るメンバーらの視点は、いたってニュートラル、かつ現実的だ。
大野「コロナ禍ということで有観客ライヴが出来ない時期があって。その中で実施したオンラインライヴというこの状況だからこその経験は、試行錯誤しながらの試みでしたが、捉えようによっては良かったと思える面もあって。今後活動していくうえで、勉強させられるようなこともたくさんあったと感じています」
和田「6ヶ月連続リリースであったりテレビの主題歌であったり、『THE FIRST TAKE』の出演もそうですけど、コロナ禍という状況の中でライヴ以外にも楽曲を届けられる場所をいろんなところでつくっていただけたのは、すごくありがたいことでした。とはいえ、ずっとライヴをしたくて仕方なかったんですけど」
岩岡「僕は、なんといってもアリーナツアーですね。2020年のオンラインライヴを経て、満を持しての有観客ライヴということで、1日2公演で計50曲近く披露しながら全国をまわるという試み自体が不安だらけというか、実際に出来るのかという気持ちがすごく大きくて。今となってはいい経験だったと思いますし、結成10周年という年にいいツアーが出来たなと実感しています」
工藤「個人的にもグループとしても、いろいろと考えさせられた2年間でした。いろんな活動をストップせざるを得ない状況の中で、もしこの状況がなければ、これまでどおりのペースでやっていたんじゃないか……と思うところもあって。より良い方向を目指したり今までにない方法を試してみようという、新しい考え方を得られた年でした」
花村「僕、ある番組で占い師の方に『2020年から2021年にかけては過去最悪の運勢』って言われたんですけど、個人的には最高の年になりましたね。なので、『去年は最悪だったな』と感じられるくらい2022年はさらにいい年にできたらいいなと思ってます」
「エイベックスらしからぬ
楽曲を
社員の方が自ら選ぶって、
すごく面白いなって」
2021年、日本人男性ダンス&ボーカルグループ史上初のサブスク1億回再生突破(※2022年3月現在は2億回を突破)という記録を打ち立て、Da-iCEの存在感を決定づけた「CITRUS」。彼らにとって重要な曲であることはもとより、ダンス&ボーカルグループを輩出してきた筆頭株であるエイベックスの所属アーティストでありながら、その“らしさ”を感じさせない楽曲での快挙達成。その背景にあるのは、エイベックスにもたらされようとしている変化だとメンバーは分析する。
大野「聴いてくれる人にとっては、ジャンル先行で音楽を聴くという概念を取っ払う、そんな楽曲だと思います。何十曲と候補がある中で、僕らが自分たちで選んでいたら『CITRUS』という曲は生まれていなかったと思うんです。『“っぽさ”をなくす』ということの大切さに気づかされた曲でもあるかもしれません。」
花村「そもそもこの楽曲自体、自分たちで選んだわけではないんです。もちろん意見を出したうえで最高だなと思ってリリースをしているんですけど、最終的にこの楽曲を持ってきてくださったのは、エイベックスの社員さんで。自分たちが思い描いているエイベックスらしさみたいなものを社員の方たちが自ら取っ払っていこうとする姿勢があって、そこにすごく会社としての変化を感じています。エンタテインメントを扱う会社の中で、一番柔軟なんじゃないかなって思うんですよね。エイベックスらしからぬ楽曲を社員の方が自ら選ぶって、すごく面白いなって思います」
工藤「新卒で入社された方の独自の観点がすごく勉強になることもありますし、こうした楽曲をカウンターとして提案してくれるベテラン社員さんもいらっしゃったりして、人それぞれの視点を生かすというところがすごく面白いですね。あとは、僕らがエイベックスの王道ラインに乗ってきたグループではないというところも大きいと思います。いわゆる大規模オーディションで選抜されたとか既存のグループの後輩として華々しくデビューするとかでもなく、いろんな方のお世話になりながら、グループとしては完全に独立した状態で活動をしてきた。その立ち位置で、いろんなところからみんなが新しいものを持ち寄って、面白いことをやっていこうというのはずっと思っていることですね」
「いろんな感受性の集合体
というところが
グループのいいところ」
エイベックスがDa-iCEに託した変化の潮流。そこを担保するのは、10年という歳月をかけて成熟度を高めてきたグループの地力だろう。花村は、「要求されるものに対して、自分たちに出来ることを手探りながらも懸命にやっていた」というメジャーデビュー当初を振り返ると同時に、セルフプロデュースで作品づくりに根幹から携わる現在については「インディーズ時代と近いスタイルで活動出来ている今は、ある意味で原点回帰」と語る。事実、Da-iCEがアイドル然としたキャッチフレーズとは違うベクトルでアーティストとしての真価と実力を磨き続けてきたことは、活動に対する反響の声が実証している。では、Da-iCEをDa-iCEたらしめるものとは、一体なんなのだろうか。
工藤「5人の共通意識として、立ったことのないステージに立ちたいという興味が前提にあると思っているんですけど、いろんな感受性の集合体というところがグループのいいところだと思うし、個々が外で経験した出会いや気づきを持ち帰ってDa-iCEの作品づくりに生かすということを無意識にずっとやってきたので、『足並みを揃える』という点は、あまり重視していないかもしれません。ただ、10年間一緒にやってきているので、合わせるべきところでは合うし、それぞれがそれぞれの振り幅を把握出来ているから、『想太だったら、次こう来るだろう』って考えられる。そういうところは、この年月の中で培ってきたものですね」
大野「僕ら、わりと普段からたわいもないこともわざわざ喋るようにしているんですけど、そこで他の人が今どんなことを考えていて、どこにアンテナが向いているのかが自然に擦り合わせが出来ていると思っていて。だから、自分一人で喋るときとDa-iCEとして喋るときとでは、自然に答えが変わってくる。楽曲選ぶときも、Da-iCEとしてなにが必要なのかというベクトルで喋ることがナチュラルに出来ているんだと思います」
メンバーそれぞれが独立した個であることが、グループとして最大の武器になる━━。そして、そうしたグループの在り方に共感し活動をバックアップするエイベックスとの関係性は、純度の高い彼らのクリエイションにも色濃く反映されているという。
花村「環境という点で、会社にはすごく感謝していますね。こちらが提案した振付師の方や楽曲のアイデアを汲み取ってくださって、自分たちだけでは判断が難しいことについて助言をいただくこともありますし、僕らがしっかり表現に集中できるようにフォローしてくれる。普通に考えたら難しいだろうなというくらい、すごく自由にさせてもらっていると思います。たとえば、僕ら歌っている立場からすると、相手の唄と温度差って測るのがすごく難しいんです。かといって、個も出さないとグループとしての尖りがなくなってしまう。そこの裁量権が、今は自分たちにあるんです。楽曲を聴いて、2人の歌声の振り幅をバラバラだと感じる人もいるかもしれないけど、それ以上にそこをDa-iCEの音楽性として楽しんでくれている人は多いんじゃないかなと思っています」
「一旦いらないものを見極めて、
欲しいものを
取り入れるという作業を」
今年2月、グループとして地上波初の冠番組「Da-iCE music Lab」がスタート、今夏には2月16日(水)にリリースされたCONCEPT EP『REVERSi』を引っさげたツアー「Da-iCE ARENA TOUR 2022 -REVERSi-」の開催も決定している。インタビューの終わり、メンバー個々が見据えるDa-iCEの2022年とその先について尋ねてみた。
花村「僕ら自身、やっていること自体はこれまでとなにも変わっていないんです。ただ、パフォーマンス以外の僕らをこれまでよりもいろんなところでたくさんの方に見ていただける状況になった。そこを広げてくれるスタッフの方々が増えたことは、日本レコード大賞を取って一番良かったことだと思います。グループとして、これからもっとDa-iCE の認知度を上げていって、どんな楽曲を出しても『Da-iCE=オシャレ』とか、そういうイメージを持ってもらえる存在になれればいいなと思います。今年は個人的にもこれまでにないくらい、いろんなことに挑戦させていただく年なので、しっかり喉のケアをしながら表現というものを突き詰めていきたいなと思います」
大野「大きな展望というところでいうと、ドームツアーをできるくらい大きなグループになりたいというところがあるんですけど、Da-iCEとしては目の前のことを全力でやるという姿勢でずっとやっているので、まずはアリーナツアーを楽しんで、しっかり走りきりたいと思います。個人としては、結成十年を超えたこのタイミングで今一度自分の歌と向き合いたいですね。ずっと積み重ねる作業を続けてきたので、ここで一旦いらないものを見極めて、欲しいものを取り入れるという作業をじっくりやっていけたらなと」
岩岡「グループとしても個人としても、やっぱりアリーナツアーを完走することが第一目標です。個々での活動をやっていても帰ってくる場所は結局ライヴだと思うし、ライヴで培ってきたグループなので。規模も大きくなってきたというところで、ケガせずしっかりと走り抜ける体力づくりも含めて、自分たちを見つめ直すというのが今年の目標かなと。最近朝が辛くて、『今日こそ辞めてやろう』と思うこともあるんですけど」
花村「グループは帰ってくる場所ちゃうんかい(笑)。ダメよ、5人じゃないと」
岩岡「(笑)なので、そうならないように健康な体づくりをしていきたいです」
和田「僕は、止まらず前に進み続けるというのがやっぱり大事な気がしていて。レコ大という大きな賞をきっかけにいろんなことが急に進んじゃったもんで、今年はすごく頑張らなくちゃいけないっていうふうに見えるんじゃないかなと思うんですけど、それで焦って止まってしまったら元も子もないので、しっかり地に足を着けて1歩でも2歩でも前進していきたいですね。あとは、ケガしないように自分と向き合って……(笑)」
花村「みんな自分と向き合うんだ。じゃあ、僕も向き合います!」
大野「よし、今年はみんなケガに気をつけて自分と向き合おう!」
一同 (笑)
工藤「ここまでちょっとバタバタしたなって感じはしていて。同時に、いろんなことが雑になってしまうのって、もしかしたらこういうときなのかもしれないなと。すごく良い評価をいただいて、いろんなことがバッと回っているときだからこそ、取捨選択をしっかりと見極めて、これからどうやっていけばいいかを考えていかなきゃいけない。僕らが本当にやりたかったことはなんなのか、そこを考える時期がきたなというふうに思っています」
最後に改めて、アーティスト名・Da-iCEの由来に触れておこう。「DANCE」とサイコロの「DICE」を掛け合わせた造語で、メンバー5人(5面)にファンを加えた6面で「Da-iCE」が形成される━━。10年の歳月をかけて構築してきた確固たるアイデンティティ、そして2020年〜2021年にかけ加速度的に広がった認知度を追い風に、Da-iCEの可能性は今後どう拡がっていくのだろうか。彼らが思い描く未来に向けて、既に賽は投げられた。この先どんな出目で我々を驚かせてくれるのか、その道筋を追いかけていきたい。
(写真左から)
岩岡徹 / 花村想太 / 和田颯 / 大野雄大 / 工藤大輝