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エイベックス株式会社は、東芝デジタルソリューションズ株式会社と共同出資で新会社「コエステ株式会社」を設立した。東芝が2018年よりローンチしたコエステーション事業を、新会社でさらにドライブをかけていく。今回はエイベックス×東芝のタッグが見据える展望や事業の意義について、エイベックス株式会社・グループ執行役員兼コエステ株式会社・代表取締役社長の加藤信介と、コエステ株式会社・執行役員(東芝デジタルソリューションズ株式会社より出向)を務める金子祐紀に話を伺った。

音声合成技術による
コエのプラットフォーム
“技術”と
“コンテンツホルダー”の
2社がタッグ

近年はさまざまなデバイスに音声で機器を操作する音声インターフェースが搭載され、そこで使用される音声合成技術を取り巻く市場は急速に拡大している。また、エンタメ分野においても音声合成技術のニーズは高まり、それに応える形で「コエステ株式会社」は誕生した。この新会社の核となるのは、東芝が長年研究を重ねてきた“音声合成技術”。そして同社が2016年から開発をスタートし、2018年にローンチしたプラットフォーム「コエステーション」だ。

コエステーションは全く新しい音声合成プラットフォームです。

実際の声

コエステーションは全く新しい音声合成プラットフォームです。

実際の声
実際の音声サンプル

金子「東芝は40年以上も前から音声合成技術の研究を続けていて、コエステ株式会社でもその強みを持った東芝のメンバーたちが引き続き開発に携わっています。コエステーションとはユーザーがいくつかの指定の文章を読み上げた声を元にAIが自動でその特徴を学習し、声の分身である“コエ(声)”のデータを生成するプラットフォームで、そのコエを使ってさまざまなサービスを展開しています」

自然に喋ることができる、感情表現を自由にできる、誰かの声に似せて喋らせることができるといった強みを持つ東芝の音声合成技術は今もなお進化を続けており、日本語から多言語に喋らせることができる“クロスリンガル”という技術の実現も近いという。

※現在コエステでは11言語に対応しているが、日本語のコエで日本語、英語のコエで英語が発話できるところまで技術開発が進んでいる。今後このクロスリンガル技術が確立すると日本語のコエで英語や中国語、ドイツ語などさまざまな言語を発話させることができるようになり、その効果としてアニメや映画を原作の声のまま海外展開するなども可能になるかもしれない。

そしてその東芝が持つ“技術”の強みと、エイベックスが持つ“コンテンツホルダー”の強み。その二つが掛け合わさったことがこの事業における推進力となっている。

加藤「お互い異なる強みを持った2社がそれらを掛け合わせて何か楽しいことをできたらいいよねっていうのはよくある話だと思います。ただそこから実際に価値を創出する、一つの共同体になるっていうところまで仕上がるパターンはあまりない。その意味でいうと今回の事業というのは、2社の強みを生かした先に新たな価値や市場を創造できるイメージが明確に湧いたことが、まず動き出すにあたって大切なことでした」

未来の鍵は世界70億人の
“コエ”
エンタテインメント領域に
広がる可能性

そもそもコエステーションという事業自体は金子氏が企画・構想して立ち上げたものであり、スタート段階で見定めていた構想や目標は、エイベックスとタッグを組んだ今でも変わらないという。その中でも金子氏が見据えているのは、『世界70億人の“コエ”を集める』という最終目標だ。

金子「『世界70億人の“コエ”を集めたい』というのはまったく冗談ではなく本気で言っています。これから先はAIや IoTが普及していく中で音声の世界が来るだろうと言われていて、人々がAIと対話しながら生活するような世の中に変わっていくので、そうなってくると音声がとても重要になってくる。いろいろな人の声を使うチャンスが増えることが予想され、その未来に向けて僕らは走っています」

金子氏がコエステーションで見据える最終目標までの過程において、エイベックスのコンテンツホルダーとしての強みは、エンタメ領域での可能性を加速度的に広げていく。

金子「例えばファンクラブサービスにおいて、本人の声で音声チャットボットもできるでしょう。あとはそれこそコンサート会場に来たときのおもてなしに“コエ”を使えたりもする。今は業務用途だと接客などのオファーが多いのですが、そこもエイベックスさんと組むことによってエンタメ要素を加えられる可能性は十分にあって、接客などをタレントさんの“コエ”でしてくれるようにできる。『エンタメをエンタメではないところに絡めていく』という試みが、これからどんどん生まれてくると思います」

加藤「あとはオーディオブックを本人の“コエ”で読んでもらうことなども考えられます。ニュースなどは基本的にテキストで今は読んでいますが、それを音声変換で好きなタレントの“コエ”にして、毎日朝に聴きながら会社へ行くといったこともできるはず。そういった組み合わせは無限に考えられるでしょう」

金子「朝日新聞社と実証実験を始めたものもあります。朝日新聞社は朝日新聞アルキキという音声で聴けるニュースアプリを手掛けているのですが、ユーザーからのニーズとして多いのが『好きな声で聴きたい』というもの。とはいえ収録音声でやろうと思ったら声のバリエーションを増やせば増やすほどコストがかかるし、実際のところ人気のタレントが毎日ニュースを読んでくれることは不可能なので、それをコエステでやりましょうということで実証実験を始めています。もしかしたらニュースに興味のない若者でも、好きなアイドルなどがニュースを読んでくれたら聞いてみるきっかけになるかもしれません」

声に新たな価値を与える
コエステーション
オープンマインドの
精神で挑む世界

加藤はエイベックスと東芝デジタルソリューションズという組み合わせの面白さとして、“大企業同士のオープンイノベーションと共創”というキーワードを挙げた。

加藤「日本において大企業も変わりつつありますし、今は大企業からいかにイノベーションが生まれてくるかが注目されているタイミングだと思います。スタートアップが独自でやるものも大事ですし、スタートアップと僕らが組むのも大事なのですが、今回のようにしっかりとしたキャリアのある2社がタッグを組んで一つの価値を創出する面白さが、このコエステ事業の大前提としてあると考えています」

加えて、この事業は声という領域に新たな価値を生むプロジェクトだ。それはエンタメ業界にとっても、その業界にいるアーティストやタレントにとってもプラスの影響を生み出すだろう。

加藤「僕らは新規事業と投資のチームなので、もちろんコエステに関しても生み出す価値や事業としての面白さが第一優先ではあるのですが、この事業をやる意義は僕らのような会社が座組むことで業界に新しい価値を作っていくことにもあると考えています。そしてこの座組みで事業としてしっかりと成功事例を作っていくことは、エイベックスにとっても東芝さんにとっても大きな価値になるはず」

金子「これから僕らとしては増資も含めてなのですがほかにもパートナーさんを集めていって、できるだけ早いタイミングでオールジャパンと言いますか、日本の体制をがっちり整えて世界に進出したい。もちろんコエのラインナップもエイベックスのアーティストやタレントに限らず、みなさんにこの事業が生み出す価値を説明した上で、会社の垣根を超えて幅広くそろえていきたい。その意味でも最初にエイベックスさんとスタートできて良かったなと思っています」

さらに加藤は、コエステとして叶えたい世界はエンタメ領域だけに留まらないとも語る。

加藤「離れた家族や病気で声を失ってしまった方などのコミュニケーションツールとしてもコエステーションは活用できます。音声合成技術が生活に溶け込んでいく中でまずエンタメ要素は求められることですし、エンタメと音声合成技術が組み合わさることで、音声合成技術だけでは成し遂げられないより大きな社会的影響力を作れる可能性はある。ただし最終的にエンタメ領域外までコエステの事業を拡大させられることは、この事業のスケーラビリティと将来性の観点からもすごく魅力的だと考えています」

インタビューの最後で二人が語った「金子さんと出会わなかったらこの領域に参入していなかった」(加藤)、「加藤さんとがっちりビジョンを共有できているので、一緒に走っていける確信はあります」(金子)といった言葉からは、コエステの肝である「声質ではなくその人の声が好き」という部分に繋がる“人への共鳴”がこのタッグを作っていることを実感した。エイベックスと東芝のオープンマインドの精神が、コエステの可能性をますます広げていくのは間違いないだろう。

(写真左)
エイベックス株式会社
グループ執行役員
兼コエステ株式会社
代表取締役社長
加藤 信介

(写真右)
コエステ株式会社
執行役員
(東芝デジタルソリューションズ株式会社より出向)
金子 祐紀

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