2019年春からスタートした『a-genic PROJECT』は、オーディションを勝ち抜いた男女12人が、期間限定ユニットとして活動しながら正式メンバーの座を争うサバイバル企画。過酷なレッスンと実践のライヴを経て、同年8月には7人の正式メンバーが決定。GENICというグループ名で始動し、11月に初の音源『SUNGENIC ep』をリリース、12月には初ライヴ『GENIC Premium Showcase 2019』を開催するなど一歩ずつ前に進み始めた。今回は、正式メンバー決定前に行ったインタビューにも登場したプロジェクト統括の河田淳一郎と、GENICのメンバー勢ぞろいのインタビューをお届けする。
サバイバル企画の末に
生まれた絆と
理想的な“シンメトリー”
エイベックスのDNAを継承する新ダンス&ボーカルグループを育成するべく、ひと夏の期間を掛けて若きメンバーたちの成長を見守り、育てていった『a-genic PROJECT』は、a-nation大阪公演でのラストステージを経てついに7名の正式メンバーが発表された。
河田「オーディションから選考の過程まで見てきて、もちろん最低限のスキルという部分は見ましたが、最終的にはグループとしてのまとまりや1人1人の個性のバランスで選びました。『a-genic PROJECT』ではライヴごとに毎回フォーメーションを変えるなど、メンバーたちにとっては過酷な面もあったと思いますが、それはメンバーの組み合わせや、並んだときのイメージなどを見たかった一面があります。最終的にグループ内でお互いを高め合いながら、絆も生まれていくという形が見えてきました」
結果的に、『a-genic PROJECT』はオーディションで一目見ただけではわからなかったメンバー1人1人の魅力や才能を、ひと夏のレッスンやライヴの過程を通して発見していく。そして、エイベックス、アーティスト、ファンという三者のトライアングルにおいて共感という大きなメリットを生み出した。
河田「僕らもみんなと一緒の時間を過ごすことで、良いところをたくさん見つけることができました。あと最終的に7人にしたのは、やはりバランス感。7人で奇数の方が“シンメトリー”になって良いことはわかっていたのですが、『a-genic PROJECT』は8人で試みてみたいことがあった。ライヴのフォーメーションなども大変だったと思いますが、その辺りの適応力を見させてもらった部分もあったんですね」
その模様は、ドキュメンタリーシリーズとして毎週金曜18時にYouTubeチャンネルで公開。メンバーたちの素顔に密着したシリーズは、グループ誕生前としては異例とも言える同年代のファンを生み出すことに成功する。そして、彼らの成長の過程を見守る視聴者は、サバイバル企画と聞いて思い浮かべる蹴落とし合いとは程遠い、メンバーたちのチームを重んじる意識の高さを感じたはずだ。
河田「サバイバル企画だったので、こちらとしてもメンバーたちがもっと『自分が!自分が!』となってギスギスするのかと思っていました。でも、予想に反してチームを大事にする意識がみんな強くて、それはa-genicがいいグループにならないと誰も選ばれないという面もあったと思います。ただしそれだけではない部分で、活動を通して彼らの中に絆のようなものが芽生えていったのは新たな発見でした」
チームへの意識とファンへの感謝
メンバーが生み出す
連帯感と自分らしさ
チームを大切にする気持ち、それは『a-genic PROJECT』における彼らの言葉からも汲み取ることができる。そして時間を重ねていくに連れて、グループの一体感を高めることに繋がっていった。
金谷鞠杏(MARIA)「女子の中で私は年が一番上だったので、グループを引っ張ろうという気持ちだったのですが、みんながアドバイスを素直に受け取ってくれる人たちばかりでしたし、ここにいるメンバーも自分がどういう役割なのかをすごく考えていたので、それがいい方向に向かったのかなと思います」
雨宮翔(KAKERU)「最初の方はもっと自分が前に出て、目立ちたいと思っていました。でも時間が経つに連れて、グループとしての在り方をどんどん考えるようになったんです」
増子敦貴(ATSUKI)「このグループが男子だけだったら、もしかしたら変な競争心がもっと出ていたかもしれません。その点、女子がいたことで別の角度からの意見も出てきて、そのバランスでチームとしてのまとまりも出たように感じます。あとは世代なのか、思いやりのある人間が多かったです」
宇井優良梨(YURARI)「私はグループの良さをa-genicを通じてすごく感じました。同じ目標に向かって頑張れる仲間がいて、でもそれは同じ壁にぶつかって一緒に悩める仲間でもあって。刺激し合って、高め合って、吸収し合っていける仲間が近くにいることの幸せさを感じました」
そして、グループとしてのクオリティを高める上で彼らが常に意識していたのは、自分たちのライヴを観に来てくれるファンへの感謝。その気持ちが結果的にグループの共通認識を生み出していった。
西本茉生(MAIKI)「a-genicはサバイバルユニットでしたが、チームとして機能していないとライヴは成り立たないので、その部分の意識は強く持っていました。それも大事なスキルとして見られていたと思いますし、その上で自分の個性を出すことをみんな考えていたと思います」
西澤呈(JOE)「僕らがギスギスしていたらライヴを観に来てくれるファンの方たちにも伝わってしまいますし、メンバーそれぞれが『ファンの方たちにいいライヴを届ける』という部分だけにしっかり集中していった結果、グループ内にいい雰囲気が生まれていったのかと思います」
小池竜暉(RYUKI)「もちろん個人としてはライバル同士ではあったので、相手の直して欲しいところに気づいたとしても言いたくないじゃないですか。でもグループのためであればそれができた。ライヴではその時々の完成度を高めることを目指して、みんなで意見を出し合えたのは良かったです」
これまで数々の男女混合ダンス&ボーカルに携わってきた河田にとっても、『a-genic PROJECT』のような「グループが作られるまでの過程にある悲喜交々を表に見せていく」サバイバル企画は初めての試み。エイベックスとしても期待の大きい責任重大なプロジェクトにおいて、ひとまずグループ誕生までの最初の段階を終えて、率直にどのような感想、そして手応えを持っているのだろうか。
河田「a-genic PROJECTはまだ半分オーディション状態でした。ライヴ終わりのミーティングなども、もしグループとして正式に結成されていたらもっとディレクションが強めに入っていたと思います。ただし今回は大きな枠組みを決めつつもメンバーの自主性に委ねることで、プロジェクトを進めながら個人の素養を見たかった。その結果、彼らが自主的に考え、動いてくれたことでチームワークが生まれていったのは良かったです。ただしみんなチームを尊重してくれましたが、『自分が!』という気持ちがまったく無かったわけではなくて。限られたポイントの中でどうやったら個性を出せるのかをすごく考えていたし、それが見え隠れするのは面白かったです。それはGENICとして正式に動き出しても変わらない大事な要素になると思います」
GENICは昨年11月に初の音源となる『SUNGENIC ep』を 配信リリースした。この4曲入りEPには、新曲となる『SUN COMES UP』と『HISTORIES』に加えて、『a-genic PROJECT』のライヴでも披露していた『READY GO』と『夏恋』も収録。GENICのこれまでとこれからを表現した作品となっている。
河田「多様性も見せたかったですし、1曲だけとなるとそのイメージが強くなり過ぎてしまう。あとはいきなりCDを出す時代では無いという考えもありましたので、4曲入りのEPをサブスクリプションでリリースするという形を取りました。新曲も“まっさらな新人”だと今からスタートという印象だけになると思うのですが、『a-genic PROJECT』で彼らの頑張りを見てくれたファンの方々がいて、さらに遡るとメンバーによってはもっと以前の育成ユニットの頃から応援してくれているファンもいる。GENICとして1曲目ですが、人によってはすごく感慨深い作品になっているのではないでしょうか」
そして GENIC にとって初ライヴとなった『GENIC Premium Showcase 2019』は、『 SUN COMES UP』をLINE MUSICにてフル尺再生で聴いた上位350名様を招待するというアプローチを試みた。
河田「EPをデジタルで配信したのも、ライヴにたくさん聴いてくれたファンをご招待する形にしたのも、今の時代は『まず聴いてください、観てください』というアプローチが先にあると考えているからです。何を持ってデビューかわからない時代ですが、ちゃんとストーリーに沿ったものを2019年のうちにファンへお届けして、2020年は本格的に始動したいという意図がありました」
鍵はセルフプロデュース力
「0から1、1を100に」を
目指すアーティスト像
さらに2月にリリースする2nd EPのリード楽曲は、メンバーの西澤呈と小池竜暉が作詞・作曲・編曲のプロデュースに関わっている。それは10数年前の新人ダンス&ボーカルグループにおいてはなかなか無かった新たなクリエイティブの在り方だろう。そして「自分たちで自分たちをプロデュースする」ことは、GENICの今後における大きな強みとなっていく。
西澤呈(JOE)「メンバーたちでよく話しているのは、『0から1を作って、その1を100にするアーティストになりたい』ということ。楽曲もプロデュースして、ファッションが好きなメンバーは衣装をプロデュースして、絵が得意なメンバーはグッズを作ってとか。GENICは1人1人がそういうアーティストになって、メンバー内でセルフプロデュースをできるグループになれたら強いと思います」
『a-genic PROJECT』から生まれたグループという点においてそのコンセプトは踏襲しつつ、やはりその根底にあるのは男女混合ダンス&ボーカルグループという、エイベックスのど真ん中への挑戦。ただし、その難しさを誰よりも知っている河田は、冷静にGENICの今後を見据えている。
河田「やはりAAAという先輩グループは、男女混合のダンス&ボーカルグループを世の中に認めさせたイノベーティブな存在だと思います。でも、それは松浦勝人という名プロデューサーがいて、才能溢れるAAAのメンバーがいて成立した。あれは彼らだからこそできた奇跡だというのは、約10年間、AAAに携わらせてもらっている自分が一番わかっています。グループ構成だけ踏襲しても決して同じにはなり得ない。なのでGENICはGENICにしかできないことを見つけていかなければいけない、それはスタートしてなおつくづく痛感しますね。GENICのメンバーそれぞれが、今の時代に合った武器を持って戦っていけるようにしたいです」
エイベックスが日本の音楽シーンにおいて開拓した、男女混合ダンス&ボーカルグループというジャンル。そのジャンルの中で羽ばたいた先人たちを超えるアーティストが誕生するとすれば、ある種の予定調和や既成概念を乗り越えていかなければならない。GENICという新たな世代の新たなクリエイティブの形がそれに当てはまるのか。GENICおよびエイベックスの挑戦はまだまだ始まったばかりだが、その予測不可能な船の舵取りを河田は密かに、ただ誰よりも楽しみにしているように見えた。
(写真左から)
増子 敦貴(ATSUKI) / 小池 竜暉(RYUKI) / 金谷 鞠杏(MARIA) / 西本 茉生(MAIKI) / 西澤 呈(JOE) / 宇井 優良梨(YURARI) / 雨宮 翔(KAKERU)