2026年春に放送開始のNHK連続テレビ小説『風、薫る』の主演に抜擢され、今大きな注目を集めている上坂樹里。前作『ばけばけ』で主演を務めた髙石あかりからのバトンを受け継ぎ、エイベックス所属の俳優が二期連続で朝ドラヒロインを務めるという快挙にもなっている。上坂にとって朝ドラは夢の舞台。いよいよ放送開始という折、今も日々奮闘しながら撮影に臨んでいる彼女に、現在に至るまでの自身とエイベックスの歩みなどについて話を訊いた。
夢の舞台に立ち、受け継ぐバトン
『風、薫る』で描かれるのは、女性の看護師が珍しかった明治時代、その道を切り拓いた2人の女性の物語。激動の時代に、信念をもって自身の人生を開拓していくヒロインたちの姿には、同じく社会が激動のさなかにある現代において我々の胸を強く打つものがあるはずだ。「看護というもののあるべき姿を手探りで見つけていく2人の“強さ”を見てほしい」と語る上坂の凛とした目にもまた、荒波や逆境の中で自身の目標に向かい進む者の眼光が宿っているように見える。
「俳優の仕事を始めてからずっと、夢や目標を聞かれたら必ず“朝ドラの主人公になること”と答えてきました。その夢が叶うことになったときには、嬉しさを通り越して頭がまっ白になりました」
自分の胸に言い聞かせるかのように、ことあるごとに「朝ドラヒロイン」という夢を語ってきたという上坂。念願の舞台での撮影がスタートしてからおよそ半年、その手応えを訊くと、「正直、まだわからないんです」と笑顔を見せる。
「撮影は進んでいますが、まだ放送が始まっていないので。やっぱりこの作品を視聴者の皆さんに見ていただく瞬間が、この作品の始まりだと思っています。ワクワクする気持ちもありますが、今放送中の『ばけばけ』を観て『次は私がここに映るんだ』とプレッシャーも感じています」
『ばけばけ』で主演を務める髙石あかりは、上坂にとって共にエイベックスに籍を置く先輩であり、これまでの芸能活動の中で尊敬し背中を追いかけてきた、とても大きな存在。夢の舞台に立つためのバトンを、ほかでもない髙石から受け取ることになった。
「こんなに幸せなことがあっていいのかなって。あかりさんがいつも私の前にいてくれるから、私はそれをずっと必死に追いかけてきたつもりです。それで自分が一番の夢に掲げてきた朝ドラという場所に立てたときに、あかりさんからバトンをもらえるって、本当に胸が熱くなります」
追いかけ続ける背中があることは、上坂にとって心強さでもある。これからも俳優として一歩一歩成長していくとき、信頼する先人の足跡がそばにある。そしてやがては上坂の足跡を辿る者も現れるだろうか。今手渡された髙石あかりから上坂樹里へのバトンは、エイベックスという場のなかで新たな歴史の端緒が紡がれ始めていることの象徴のようにも思える。
エイベックスは、可能性を拓いてくれる
上坂のキャリアのルーツは、エイベックス主催のオーディション「キラチャレ2017」。そこで審査員特別賞を受賞したことをきっかけに芸能活動をスタートしている。
「エイベックスに入ることができたのは、自分にとって大きな第一歩だったと今振り返っても思います。もともとモデルになりたくてオーディションを受けたんですが、お芝居はもちろん歌やダンスのレッスンなど、自分の可能性を広げるような機会をたくさんいただいてきました」
上坂が俳優の道を志そうと決めたのも、レッスンを通じて演技の魅力に触れたことからだった。「エイベックスにいなかったら、お芝居をやっていなかったかもしれない」と語るとおり、この環境の中で芝居に出会い、熱中し、人生をかけて続けたいと確信できるようになった。
「エイベックスの皆さんには、いつも一番近くで支えてもらっています。自分が挑戦したいと思っていることや、感じている気持ちを正直に伝えることができて、それに対して正面から向き合ってくれる。そうやって私が進むべき方向へ導いてくれていると感じています。だから、少しずつでも恩返しができたらいいなと思います。私にできることは、自分がいろんな作品に出て活躍することしかないと思うので、これからも精進していきたいです」
上坂樹里をまさに一番近くで支える存在、マネージャー陣については「自分の一番の味方で、一緒に夢をつくってくれる人たち」だと語る。
「もちろんそんな一言で言い表せるような関係ではないのですが。いつもそばにいるけど、上坂樹里というものを客観視してくれている存在でもあるし、ときには愛を持って厳しいことも言ってくれます。マネージャーさんには私が何をしても見透かされている感じがするというか(笑)……心が通じているけれど家族のようでも友人のようでもない。私の可能性を信じて一緒に走ってくれる存在です」
ひとつひとつの瞬間を大切にしてきた
撮影の日々
そうして今立っている夢の朝ドラの現場も、およそ1年間の撮影期間のうち既に半年が過ぎた。
「撮影現場の皆さんと毎日一緒に過ごして、毎日色々なことがあって、半年といっても実感が湧かないくらいこのお仕事に没頭しています。こうして夢が叶いつつあるので、最近は次の夢を訊かれることも多いんです。でも正直、これですって言えるものはなくて。『風、薫る』を終えた後のことは、自分でもまだふわふわしているんですが、何よりもまず、残りおよそ半年の一瞬一瞬を大切にして、今後の自分にもつなげていけるように過ごしたいと思っています」
きっといつか振り返っても、自身にとって大切な時間になっているはずの現場。1シーン1シーンを大切に積み重ねて、作品を作り上げていく毎日。おのずと気持ちが張り詰めていくこともあるだろう。そんなときエイベックスのスタッフ陣はどう寄り添っているのか——訊くと上坂は顔をほころばせて言う。
「基本的にはスタジオで撮ることが多いんですが、ロケの撮影もあってホテルに泊まったりする時に、マネージャーさんとふたりでに近くの温泉に行ったりして」
「裸の付き合いってやつですね」と、上坂とは姉妹のように世代の近い、当のマネージャーも笑う。上坂も目を輝かせて——
「一緒に温かいお湯に浸かりながらリフレッシュして、上がったらふたりでアイス食べて帰るみたいな(笑)」
俳優とマネージャー。家族とも友達とも違う、でも共に夢を追う仲間。だからこそなんでも言い合えるような関係がそこにはある。
「私はあんまり、思ったことや感情を言葉にして人に伝えることをしないタイプなんですが、マネージャーさんとは今日あった小さな幸せだったりとか、どんなことでも伝え合っています。やっぱり撮影中は力が入ってしまうことが多くて、そんな他愛もない会話の中で自分のオンオフをしっかりつけられるので、私にとってはすごく大切な時間なんです」
俳優として作品の一部になり、
作品とともに成長する
マネージャーや制作スタッフ、様々な人に支えられながら歩んできた俳優としてのキャリア。日々成長を追い求める上坂にも少しずつ、自身の俳優としてのあるべき姿が見え始めている。
「2023年に出演したドラマ『生理のおじさんとその娘』は、私にとって俳優というもののあり方を考える上で大きなきっかけになった作品のひとつです。初めての地上波ドラマだったのですが、しっかりテーマをもった作品だったので、放送を終えてから周囲の人たちに、自分の演技に対してではなく作品自体に対しての感想をたくさんいただいたんです。家族と一緒に観てこんな会話をしたよとか。その作品が伝えようとしていたことが、きちんと届いているのを感じました。それまでの私は、お芝居をすることに関してすごく自分本位に考えていたんだと思います。でも、俳優というのは自分の体を使って作品が持つメッセージをお届けするのが仕事なんだと思い直しました。自分はそういう俳優の役割を全うすべきなんだと実感できたんです」
それ以降ドラマ出演を重ねても、撮影現場に立つ上坂の胸にはいつもその思いがある。作品全体の中の一員として、作品の魅力を届ける。その真摯な気持ちを今もずっと大切にしている。とりわけ、1年間毎日のようにスタッフたちと顔を合わせ共に作品を紡いでいく朝ドラの現場では、チームに対しての想いの深さはひとしおだろう。
「作品の世界観の中に、上坂樹里としてではなくて、役のひとりの人間としてその世界に存在できるような、そんな俳優になりたいんです」
その言葉には、自身の在り方を見つめ直しながら、作品と誠実に向き合い続けていこうとする、俳優としての静かな決意がにじんでいた。
『風、薫る』という作品を通して、今度はどんな成長ができるのだろうか。この作品を駆け抜けた後、その経験は必ず、上坂樹里という俳優の器量と可能性をひと回りもふた回りも大きく広げてくれることだろう。
「この作品の主演が決まって初めての会見で、自分が演じる大家直美という役と共に私自身も一緒に成長したいと言ったんですけど、『風、薫る』の放送を終えて振り返った時に、しっかりと自分の成長を感じられるようになっていたらいいなと思います」
エイベックスという場で芝居の魅力を知り俳優の世界に飛び込んで以来、関わってくれるたくさんの人たちへの感謝を忘れずに、着実に成長を重ねてきた。
上坂が掴んだ夢のバトン。憧れの朝ドラヒロインとして立つ現場。
そこで彼女は、自身の演技を通してその夢をかたちにしていく。今はその真っ只中、次の夢はまだ見つからないと言うが、この先、俳優・上坂樹里の前に拓けるのはどんな景色なのだろうか。
薫る風をはらんで、たおやかに進む帆船のように、彼女が見据える先には大きな可能性の海が広がっている。
上坂 樹里




