『KING OF PRISM』は2016年にスタートしたアニメシリーズ。観客をもっともときめかせる“プリズムスタァ”を目指して男子主人公たちが成長していくストーリーと、歌とダンス・フィギュアスケートの要素を取り入れたエンタテインメントショーで熱狂的なファンを擁する作品群だ。また同シリーズは、映画館で声援を送りながら鑑賞する「応援上映」というスタイルが話題になったことでも知られている。今年10周年を迎えた『KING OF PRISM』がファンと共に培ってきた独自の魅力や、そこから得た学びなどについて、プロデューサーである株式会社エイベックス・アニメーションレーベルズ磯輪のぞみと、宣伝プロデューサーのエイベックス・ピクチャーズ株式会社佐々木千聖に話を訊いた。
スクリーンを越えて熱狂を生む、
参加型エンタテインメント
佐々木「アイドルものとも言い難いし、スポーツものとも言い難い…」
主人公たちが、多くのファンを魅了できる“プリズムスタァ”に成長していく姿を描く『KING OF PRISM(キンプリ)』。ファンの心に“プリズムの煌めき”を届ける——ここで言うファンとは作中に登場する観衆であり、同時にスクリーンの前の鑑賞者たちのことでもある。スクリーンのなかのエンタテインメントショーに没入してしまうことこそ、この作品の大きな魅力だ。
磯輪「タツノコプロさんが手掛けるCGで描く、キャラクターのダンスだったり見せどころとなる“プリズムジャンプ”の演出だったりが、この作品の大きな特徴かなと思います。それともう一つはやはり、応援上映という鑑賞スタイルですね」
劇場では静かに鑑賞するものという常識とは裏腹に、スクリーンで繰り広げられるショーに歓声や拍手を送りながら、ペンライトなどを持ち込み最大限に気持ちを込めて鑑賞するのが応援上映。客席は一体感を増し、情熱的な思いがスクリーンへと呼応する。まさに共感型没入体験とも言える、独特の高揚感が劇場内を包む。
磯輪「この作品はもともと応援上映をすることを前提に制作されています。“プリズム☆アフレコ”と言って、画面に出る字幕をファンの方が読むことで作中のキャラクターと会話が成立するような仕掛けもあって、応援上映に参加しやすい作りになっています」
実際の『応援上映』の様子
佐々木「キンプリはそういう、エンタメの面白みがギュッと詰まっている作品だと思います。その面白さを薄めることなく、より多くの方々へ届けるのが私たちの仕事です」
コロナ禍を経て、およそ4年ぶりに再始動した経緯もあるキンプリ。「そもそもファン市場は決して大きくなかった」と佐々木は回想するが、少人数のスタッフでファンの熱意に応え続けて、今ではたくさんのファンに愛される作品に成長。
その根底にあったのは、観客に“参加してもらう余白”を取り入れるという発想だ。設計段階からその余白を織り込み、新しい体験を生み出してきたキンプリ。それは単なる上映スタイルの工夫にとどまらず、作品そのものの魅力をかたちづくる重要な要素とも言える。
その体験価値をいかに広げていくのか。熱量の高いファンに支えられてきた作品だからこそ、拡張のさじ加減は常に試行錯誤の連続だった。
佐々木「コアなファンの方々にこれからも応援しつづけてもらいたいという思いと同時に、新しいファンの方に入ってきていただくことも課題です。たとえば上映館数をとってみても、満員の劇場でみんなで盛り上がってこそ1番面白いのが応援上映なので、館数を広げすぎてもダメ。でも一方で新しいファンに入っていただくためには館数を広げていくことも大事で…」
磯輪「毎回悩んでますね。いいバランスを探しながら、時には嬉しい誤算になることもあります。2025年の上映作では都内を中心に満席となる劇場が多く、一時鑑賞がしづらくなってしまい、急遽上映館を増やしていただくということもありました。思った通りにいくことばかりではない中、日々できることを探して『じゃあこんな風にやってみよう!』というスタンスでここまで進んできた感覚があります」
熱いファンが“自分たちの”作品を支えている
この作品を支えている最大の力は何かーー。磯輪は迷わず「ファンの存在」だと答える。
磯輪「本当にファンの方たちはすごいと感じています。一昨年、『Dramatic PRISM.1』の上映初日が台風予報と重なり、予定していた宣伝施策を中止せざるを得ませんでした。そのとき、SNSで『キンプリの宣伝が足りていないのでは』と、どうすれば作品をもっと知ってもらえるか、ファンの皆さんが自発的に宣伝のアイデアを出し合ってくださっていたんです。もちろん実際には様々な制約もあるため、皆さんが出されていたアイディアを実行できるわけではないことの方が多いのですが、私たちと同じ目線で作品をとらえてくださっているのだと実感しました」
佐々木「自分たちが盛り上げていこう、という意識をすごく持っていただいていると思います。勿論それに甘えることなく公式がしっかり引っ張っていかなくてはならないのですが、我々公式から発信する情報にも一つひとつ反応してくれて、私たちが皆さんに支えられているんですよね」
磯輪「みんなで口コミを広げていこうというムードは、意図してつくるのは難しいと思っています。また、長く続くシリーズほど既存ファンのコミュニティに新しい方が入りづらくなりがちですが、この作品のファンの皆さんは、私たちと同様に作品を継続させるためには新規の方の存在が欠かせないと理解してくださっているんです」
ファンの一人ひとりがこの作品を“自分たちの作品”だと認識し、その当事者意識が実際にこの作品を強く支え続けている。
佐々木「ちょっと面白おかしい一面もある作品なので、宣伝の中でもちょっと小ボケを入れたり、ツッコミ待ちみたいになることも多々あるんですが、それをしても必ず拾ってくれて、いいレスを返してくれるんです。だから、こちらからも信じて投げ掛けられるという信頼関係があります。あとは舞台挨拶で伺った各地の劇場さんからも応援上映や舞台挨拶の様子を見て『ファンの方たちがこんなに応援してくれてすごいですね』って、ファンの方たちのことを褒めて頂くことが多くて、それはすごく嬉しいですね」
磯輪も、ただただ感謝しかないと静かに言葉を添える。
佐々木「皆さん一人一人のおかげで応援上映というスタイルが確立できているし、近頃は他にも応援上映をする作品が増えている中で、ファンの熱意も含めてここまで完成度の高い応援上映になっているのはやっぱりキンプリならではだと思いますね」
エイベックス・グループのシナジーがもたらした
新たな強み
『KING OF PRISM』は、オリジナルストーリーのアニメーション作品だ。完成形が読みにくいからこそ、宣伝もまた手探りの連続だった。それでもファンの反応に背中を押されながら、その都度最善を探してきたという。
佐々木「原作がある作品だとあらかじめストーリーは分かるので、ファンの方が観たいであろうポイントを踏まえた宣伝プランが組めるのですが、キンプリは特に演出が特殊なこともあって、脚本を見ただけではどんな作品に仕上がるか分からないんですよね…。本編の制作と並行して宣伝も動き出すので、おおよその見どころをつけてプラン建てをしていくのですが、いざ出来上がったものを見ると、圧倒的な映像のパワーでまた新しい見どころやポイントが見つかるんです。そうして公開直前に宣伝プランを増やしたり、公開後にファンの反応を見ながら打ち出しの方向を変えていくような、かなり臨機応変な動きをしています」
また、この作品を語る上で、もうひとつ特筆すべき点として挙げられるのは、作中で使用される楽曲の魅力だ。そこにはエイベックスならではの強みが活かされている。
磯輪「『KING OF PRISM』のルーツである『プリティーリズム』シリーズの頃からTRFさんの楽曲を数多くカバーしていましたが、最新作の『Your Endless Call』ではさらに一歩踏み込み、小室哲哉さんの他の楽曲のカバーにも挑戦させていただきました。エイベックス・グループ内でのプロジェクトという強みを活かし、グループの皆様にフレキシブルな連携を頂くことができた結果、数々の名曲のカバーが実現しました。さらに、DJ KOOさんにご登壇いただく上映イベントなど、グループならではの連携がうまく機能し、多方面から力強いサポートをいただいています」
佐々木「小室さんのカバー曲の中でもTM NETWORKの『Get Wild』は映画公開初日にSNSのトレンドに上がったりと、楽曲そのものの魅力はもちろん、意外性という面からもかなり大きな話題になりまして、キンプリとしても新しい可能性が拓けたなと感じました。今後もいろんな楽曲のカバーをさせていただけると嬉しいです」
「面白そう」を原動力に続けるチャレンジ
社内外のパートナーや熱いファンに支えられて10周年の節目を迎えたキンプリが、時代が流れても変わらずに大切にしていることとはどんなことだろうか。
磯輪「作品をやるたびに何か新しいことに挑戦しよう、ということを大事にしているチームです。一昨年、スクリーン3面を使い没入できる『Screen X』での上映に、日本のアニメ作品で初めて挑戦させていただきました」
佐々木「菱田総監督ご自身が、見たものや体験したことをどんどん作品に取り込んでいくような柔軟な方というのもあって、チーム全体としても新しいことに挑戦していく姿勢があると思います。『Screen X』もそうだし、宣伝手法や販促グッズといったところまで、チームの誰かが『これやってみたい』と思ったときに『じゃあ一回やってみようよ』っていう空気があるなと」
磯輪「そうそう、一回やってみないとね」
佐々木「やったことないし、大変そうだけど確実にこっちの方が面白そうだよね、っていうことがあれば、みんな乗ってきてくれるんですよね」
従来の常識に捉われず、もっと面白そうなことにチャレンジできる環境がチームにはある。「難しそうだからやめておく」のではなく「面白そうだからやってみる」。その空気がチーム一人ひとりの背中を押している。
磯輪「佐々木さんが出す宣伝プランを見て『これはちょっと実現するのは難しいんじゃないか…』と思っても、とりあえず話を聞いてみる。そうやって前向きに進んでいくうちに本当に実現できてしまうようなことが、結構あるんです」
佐々木「『やったことがないからできません』とかってたまに言われますけど、やったことがないだけでできるんじゃないですか、って思ってしまう(笑)」
磯輪「うん、誰もやったことがないなら面白くていいじゃないですか、って」
佐々木「そもそもキンプリという作品自体がものすごく面白いので、宣伝目線からもやったら面白そうなことってたくさん出てくるんですよ。それでどんどん案を出していくと、結果的に忙しさで自分の首を絞めることになるんですけど」
磯輪「あまりにも首が締まりすぎてるのを見かけたらお互いで助け合って、なんとかここまでやってきてるっていう感じですね(笑)」
10周年の節目、新しい挑戦を一緒に
そうして培ってきたチームの結束と実現力。少人数だが熱量は高い。そんな中二人は、このチームと作品の今後についてどんな想いを持っているのか。
磯輪「長く続けたいと思っています。コロナ禍を経た再始動があって、その後2年くらいかけていろんなことがスムーズに進むように成長してきた部分があると思います。長く続けていくことでそれがもっと発展していったらなと」
佐々木「私は宣伝プロデューサーという立場ですが、この作品では宣伝領域だけをやっていればいいという感覚はなくて。本当にセクションに関係なくいろんな方と意見を交わして、プロジェクト全体を広い視野で見ることができているので、そういう作品との関わり方をこれからも大切にしていきたいです」
そして『KING OF PRISM』はこれからも、たくさんの愛を届け、それ以上の愛に支えられながら、作品とそのファンダムとの歴史を重ねていく。
磯輪「2026年は10周年イヤーということで、年始からイベント上映やグッズ展開が続き、2月には舞台上演、そして6月28日にはスペシャルイベントも開催されます。1年間盛り上げていくためにさらに準備に勤しんでいますので、ぜひご期待いただけたらと思っています」
佐々木「エイベックス社内外問わず、キンプリと何か一緒にやってみたいという思いをお持ちの方がいらっしゃったら、いつでもお声がけお待ちしています」
磯輪「本当にお待ちしています。『一回やってみましょう!』という気持ちでぜひお気軽にお声がけください!」
作品の力とファンの熱量を信じ、新しいことに貪欲に挑戦していく。一人ひとりが自身の情熱に従い、より面白いものに向かってまっすぐ歩みを進めていくこのプロジェクトの前には、様々な未来の可能性が拓かれている。
ⒸT-ARTS/syn Sophia/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/KING OF PRISM Project
ⒸT-ARTS/syn Sophia/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/舞台「KING OF PRISM」製作委員会2026




