小中学生の男子7人女子7人、計14人で構成される「PG(ピージー)」は、2024年夏に狐の仮面をつけたパフォーマンスによるTiktokバズからわずか4ヶ月でメジャーデビュー。ダンスとヴォーカルを中心に14人の個性を生かした幅広い活動を続けている。エイベックス・マネジメント株式会社(AMG)でPGを担当する福添奈都子は、同社内に近年設けられた「ニューカルチャーグループ」に在籍、新たな才能を世に輩出する部門として、その立ち上げから参画してきた。ニューカルチャーグループが取り組む次世代のIP創造について、福添のこれまでのキャリアも踏まえながら紐解いていきたい。
エンタメ最前線と幼児向け教育事業
双方の経験を経て気づいた「音楽とダンスの力」
「ダンスとヒップホップが好きで」
福添は新卒でエイベックスに入社後、編成管理や著作権管理などの部門を経て、3年目にはレーベル「rhythm zone」で宣伝、のちに制作業務を担当。多忙を極める倖田來未の専任として従事し、やがてはマネージャーに籍を変えて引き続き彼女の活動を支えていった。
「その後、妊娠・出産・育休を経て復職する際、宣伝業務への復帰と並行して、幼児向けのダンスを中心とした音楽教育プログラムを提供する会社を2015年に立ち上げました」
提供したプログラムは、プロのアーティストが手掛けたエイベックスオリジナルの音楽・ダンス教材で、指導にあたったのはエイベックス所属アーティストのバックダンサーとして第一線で活躍してきたママ達だった。
「ダンサーとして活動してきた同世代のママさんの中には、育児や家事の都合で、アーティストに帯同したり、平日の夕方以降の仕事が難しい人が多かったんです。ママさんダンサーが負担なく働ける平日の日中の時間帯に教えられるということで、おのずと子ども向けのプログラムの開発が始まっていきました」
とはいえ当時の福添は、自身の子育ても大変な盛りだったはずだが、当人は飄々として語る。
「子育ての経験も活かせることが何より嬉しかったですし、自分と同じファミリーに向けて、音楽とダンスのコンテンツを作るという仕事は本当にやりがいがありました」
高いバイタリティをもって、家庭でも仕事でも子ども達と向き合い奮闘する日々は、この当時からすでに始まっていた。当時の経験が現在にも活きていることはたくさんある。
「一つは、幼児向けプログラムを作るにあたり、監修してくださった先生方などを通じて、様々な教育論をインプットできたこと。『子どもは楽しいことを通して多くを学ぶもので、楽しくない時には脳の海馬が縮み学びにつながりにくい』というお話を脳科学の先生から教えていただき、プログラム作りでも子ども達が楽しい気持ちになることを大事にしました。楽しむことの大切さは、いま小中学生のアーティストを担当していても日々実感しています」
また、言葉がなくても通じ合える音楽とダンスだからこそ、幼児の心に楽しく届くプログラムになったとも感じている。音楽とダンスなら国境も越えられるという思いも強くなった。
子ども達を見ていて改めて感じたのは「音楽とダンスは、出来ても出来なくても楽しい」ということだったと福添は言う。
「保護者も参加するプログラムで、稀にダンスが上手いお父さんが参加する時があるんです。対してあまり得意ではないお父さんもいるんですが、どちらにも共通して言えるのは、子どもと一緒に笑顔になるんですよね」
上手くできることだけが唯一の価値ではない。音楽やダンスといった表現の分野において、正解はひとつではない。第一線のアーティストのそばから居場所を変え、子ども達に目を向けた福添が痛感したのは、そんな特性をそなえた音楽やダンスが持つ可能性と力だった。
正解がないエンタメの世界
自分を信じてまっすぐに進む
その後、福添は「音楽とダンスの力」を信じて新たなIP創造に乗り出していく。AMG社内での「ニューカルチャーグループ」の立ち上げに参画、若い才能を世に輩出していくことを目標に新たな舵を切った。
「マネジメントとして軸が二つあって、一つは既存アーティストの価値の最大化。もう一つがゼロイチで世界に通用するIPを生み出していくといことで、ニューカルチャーグループは後者の専門部署として立ち上がりました。IPを360°展開するために、まずは0°となる事務所機能からIPを開発するのが私達のミッションです」
そんなニューカルチャーグループから輩出された「PG」のデビューは2024年。福添は当時を振り返る。
「エイベックスの『avex Youth』という組織には、才能を持った若いユース生が日本全国から集まっています。自分の夢に向かって努力をし続けている人材に対して、レッスンを提供し日夜育成している人材の宝庫です。そこで、まずは『avex Youth』の人材に時間をかけて会いにいきました。その中から、特にスキルが高い小中学生のメンバーに声をかけ、早速、夏休みの合宿を開始。さらに、夏休みに始めたアカウントがバズった結果、デビューすることになり、11月にデビューしました」
選抜後に何年かの育成期間を設けるのが通例である中、メンバーが決まってから数ヶ月後の11月にデビュー。異例のスピードだ。
「2、3歳からダンスを始めていて、今12歳だとしても、もう8年とか10年とずっとかダンスをやってきたようなメンバーたちです。歌についても全国から集まる『キラチャレ』というオーディションで入賞したメンバーが参加しています。様々なメンバーの強みを活かしたパフォーマンスと“可愛いね、上手だね”ではないハイクオリティのものをつくる。そこは絶対に譲らないと決めています」
もちろん、デビューからの1年を振り返るとメンバーそれぞれの成長はやはり大きく感じる。
しかし、成長を見せていくといってもその不完全さを含めて愛でてもらうのではなく、あくまで高いクオリティのコンテンツを届けるというスタンスに固執している。
視線を高く持ち、目標へ邁進する。キャリアを振り返っても常に強い思いを持って前進し続けてきたように思われる福添だが、その原動力は何かと問うと「自分を信じること」だと答え、倖田來未担当時代のエピソードを話してくれた。
「倖田が音楽番組にセクシーな衣装で出演した際に、問い合わせがたくさん寄せられたことがありました。当時の私は27、8歳で『性的なセクシーじゃなくて、女性目線で強くてかっこいいセクシーさなら良い』と信じていました。そうやって自分達が作っているものの価値を信じて進むことを貫いてきました」
必ず売れるもの、誰にとってもカッコいいもの、そんな正解が存在しないのが音楽の世界。
「正解がないから、自分と担当アーティストの力を信じて進むしかないと思うんですよ」
心と体の健やかな成長を支えることも重要
そんな福添が今強く信じるのは、PGのメンバー一人ひとりの“未来”だ。彼らのさらなる可能性を信じて奮闘する日々は、一方で、個々人の“現在”の日常と向き合い続ける日々でもある——
「成長期なので体もどんどん成長してます。衣装が入らなくなるのもあっという間で、夏休み合宿の最初に用意した洋服が合宿の終わりにはもうキツくなってるような子もいます(笑)。もう一つ怖いのは、学校などで流行りの風邪やインフルエンザなどの病気にかかってくること。カバンには常に体温計が入っています」
プライベートでも母親として中学生になる子の成長を支え、仕事でも同じく小中学生のメンバーの成長に伴走する福添。どちらに対しても、日常の中で「食事や健康」に気を遣う毎日だと笑う。多感で、人格形成において重要な時期を過ごすPGのメンバー達に望むことは、アーティストとしてのスキルアップはもちろん、その前提となる「心身の健やかな成長」「愛される人間性」だ。
栄養面や添加物などにも十分配慮した食事を心がけ、食事に好き嫌いをしないことや揚げ物を摂りすぎないことに気をつける。
「アーティストには、2時間半歌って踊るライブをできる体作りが必要なので、アスリートとしての感覚でランニングやフィジカルトレーニング、ストレッチなども丁寧に行っています」
そして、もちろん社会生活を送る上での礼儀なども、ここで学んでいく。
「“しっかりと挨拶”、“楽屋は入ったときより綺麗にして出る”人としての礼儀と“常に感謝の気持ちを忘れない”ことを大切にしています。またSDGsの観点でも、ペットボトルではなく水筒を持ち歩いていたり、食べ終わった14人分のお弁当の空箱をみんなでフタと容器と生ゴミに分けて綺麗に重ねておいてゴミの量をなるべく抑えたり、今のメンバーの年齢は、学校教育でもSDGsについて学んでいる世代なので自然と取り組めています」
人としての成長は、アーティストとして輝くための大事なベースになる。一日一日の努力や心がけの積み重ねが未来の成長につながっていることを感じながら、14人の毎日は続いていく。
各々が信じる“カッコいい”を追い求めて
才能が交差するプラットフォーム
PGの名の下に活動する14人の若きアーティスト集団は、自らを“グループ”ではなく、ダンス&ボーカル“カンパニー”と標榜している。
「14人がそれぞれいろいろな分野で才能を開花させることを前提にしています。役者やモデルとして活動を始めている子もいますし、作詞作曲を進めている子もいます。PGはグループというより、さまざまな才能が集まってカルチャーが生まれるプラットフォームのような場所だと考えています」
14人での活動だけでなく、一人のアーティストとして活躍していく者もいれば、メンバー内の何人かで多様にユニットを組み活動する形も多い。PGという枠組みの内外で自由に有機的につながり合いながら、才能が集う“カンパニー”としての価値を自ら高めていく。
「14人それぞれが『自分はこれだ』というものを出していけるように、個々がさらに活躍できる場をフレキシブルにつくっていきたいと思っています」
成長につれ、各々のやりたい事はさらに多様化していくかもしれないが、PGはメンバーそれぞれがカッコいいと思うことを尊重し、自分を信じて前進しようとする気持ちを懐深く支えていく。それこそ、福添が感じてきたエイベックスらしさのはずだ。
最後に、ニューカルチャーグループとしての今後の展望を聞くと、“世界を舞台に、多様な地域・多様な分野で愛されるIPをつくる”こと、そしてそのためにも“クリエイティヴは絶対に妥協しない姿勢”を貫くことを挙げる。
その上で福添は、その根幹に関わるのはスタッフからメンバーへの愛や思いの強さなのだと考えている。
「たとえばSNS戦略の構築・運用は、外注せずにAMG社内のプランニングチームが、自分事として愛情や熱意をもって取り組んでいて、メンバーの個性を踏まえた発信ができています。14通りの個性や得意なことをよく理解して『このメンバーはこういうのが面白いからこういう動画はどうだろう』と考える。それは一朝一夕では出来ないです。デビュー前からずっと思いをもって支えてくれているチームだからこそ。スタッフのメンバーへの愛はSNSを通じても伝わるし、そういうことの積み重ねがあってこそ、メンバーの一番いい部分が世に出ていくのだと思っています」
自分達の胸の内に宿るIPへの愛を信じて、ニューカルチャーグループは前進していく。成長期の個性と寄り添うチームだからこそ、これからの3年、5年という時間軸の中で、誰も想像もしていないようなエンタテインメントが生まれるかもしれないという期待を感じずにはいられない。
すでにデビューを果たした、PGから開花した様々な個性に、今よりずっと大きなインパクトをもって出会える未来がやってくることが楽しみでならない。
エイベックス・マネジメント株式会社
ディビジョンマネージャー
ニューカルチャーグループ
ゼネラルマネージャー
福添 奈都子




