新型コロナウイルス感染症の拡大によって、あらゆる業界が影響を受けている。とりわけエンタメ業界が受けた影響は甚大だ。
そんな中エイベックスは、所属アーティストのライヴ映像コンテンツの無料公開や、ピコ太郎による手洗いソング「PPAP-2020-」、クリエイター支援施策など、企業として様々な施策を行ってきた。そんな会社の姿勢を、この激動のタイミングに入社した新卒採用の社員たちはどう感じているのだろうか。フレッシュな6人に話を聞いた。
(左から)北川 舞、石橋 真理子、菊川 源、七條 耀胤、鮑 慧琳、徳永 裕美
時代に適応する
エイベックスのスピード感
コロナ禍のコンテンツに
見えた成果と課題
エイベックスは新型コロナウイルス感染拡大防止のため、在宅勤務に切り替えて、業務を続けてきた。もちろんこの4月に入社した新入社員たちも在宅で、研修もオンラインによるグループワーク中心だったそうだ。
新入社員たちは、エイベックスのコロナ禍の取り組みについて語る。
北川「『#エイベのアソビバ』は印象的でした。一般の方からコンテンツを生み出していく流れを作ったスピード感はすごく早かったと思いました」
菊川「正しい手洗いを推奨している『PPAP-2020-』はTVにも取り上げられ、動画アプリには子供たちが曲に合わせて手を洗っている映像がたくさん投稿されていますし、大型ショッピングモールなどの館内放送でもコロナ禍でも買い物に来てくれたお客さんに手洗いを推奨するのに流したなど、多くの反響があったと聞いています」
入社間もないが、すでにエイベックス社員としての視点もきちんと持っている。
石橋「ライヴ配信は、対応にスピード感があってすごく良かった。でもライヴができなくなったから配信をするのではなくて、配信だからこそ観たいという、ライヴに変わる上位互換であって欲しい、という想いがあります。私は舞台のプロデュースの部署に配属されたので、生のライヴに勝るものはなにかということを追求して、配信だからこそ観たいと思えるようなコンテンツの強みを出していきたいと思っています」
七條「メジャーで売れているアーティストが無観客ライヴのような新しいことに参入しているのは、単純に熱い状況ですよね。コロナがなかったら絶対やってなかった人がやっているので、流れが大きく変わったなと思う。ただ無観客ライヴの現場にも行かせていただいたんですが、その良さと、まだ足りていないなという部分と両方が見えましたね。だからすみ分けをして、無観客配信があるからこそ、リアルのライヴの価値が上がっていくといいと思います」
エンタメの楽しみ方が
急変する昨今
コロナ禍“第一世代”が実感する
オンラインのメリット
とはいえ新入社員たちの生活も仕事も、コロナ禍によって当然ながら様変わりした。突然の状況の変化に苦労はなかったのだろうか?
石橋「外からの刺激は少なくなりましたね。クラブに行って新しい音楽を探しに行こうとか、フェスやライヴで対バンしているのがとてもいいバンドだったとか、そういう発見や出歩くことで得られる情報というのが少なくはなった」
鮑「仕事もオンラインで、エンタメを観るのもインターネットなので、その意味では生活に波がなくて、エンタメとしての楽しさが減った感じはあります」
北川「今までだったら通勤・通学で音楽を聴く時間が1時間はあった。それがなくなってしまった分、何気なく音楽を聞いていた時間を新たな生活環境の中に取り入れるのが難しかったです」
菊川「移動と音楽って重要な関係性なんだなって改めて気づきましたね。以前と比べて音楽やラジオといった耳から入ってくるコンテンツをインプットする機会が減っている自覚はあります。ただ、自粛によってコンテンツが一気にオンラインに移行してきて、今はその質が徐々に向上している段階なんだと思うんです。なので家で“普通に生活する”のと、“オンラインでエンタメを楽しむ”というプライム感とは、これから価値の差が広がっていき、日常の波も大きくなっていくのかなと感じています」
七條「確かに衣食住と比べればエンタメは不要不急かもしれません。でも現代社会を生きている中で、エンタメのおかげで日々がんばれている人とか、アイドルとかアニメが好きな方って人生そこに注いでいるといっても過言ではない人たちがいると思う。僕はスポーツが好きで、週末にスポーツを観るのがリズムになっていましたが、いまは週末がきてもあまり楽しみじゃなくて。人生が豊かでなくなっていますよね」
他方、オンラインの良さ、利点もしっかり受け止めているのが印象的である。ある意味では彼らはコロナ禍の「第一世代」。受け止め方も非常にポジティヴだ。
徳永「新入社員研修期間中に採用企画として『オンラインOB訪問』をやったり、配属後も採用担当としてオンラインの採用イベントを行なっています。これまで地方に住んでいる学生に会うために、地方の採用イベントに足を運んでいましたが、オンライン化によって地方と東京の物理的な距離感がなくなり、地方の学生と会える機会が格段に増えたなと感じます。地方に住んでいる学生と話す中で、以前は主要都市に足を運んでアーティストのライヴを見ていたが、今は自宅からオンラインでライヴが見られるのは嬉しいという声を多く聞きますね」
菊川「三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEや東方神起のオンラインライヴの後に、抽選で選ばれたファンの人たちが画面に表示されてコミュニケーションが取れるというような試みは、従来のライヴでは絶対なかったことですし、オンラインならではの良さですよね」
鮑「オンラインのライヴって会場がいらないし、収容できる人数も無限だから。MarshmelloやTravis ScottがFortnite上でライヴをやったり、Lady GaGaが全世界のアーティストを巻き込んでライヴをやったり。私は海外事業を担当する部署に配属されたので、エイベックスでもそうした試みをしたいですね」
柔軟なアイデアで描く
明るい未来
逆境に立ち向かう
新入社員の熱意
新入社員たちはそれぞれに部署に配属されて、すでにばりばりと業務をこなしている。「配属されて1か月の社員の意見を聞いてくださり、実行させてくれるのは大きい」(北川)というように、彼らの忖度のないアイデアを会社は歓迎している。
七條「僕は新規事業の部署で働いています。9月に新しくクリエイターやアーティストを支援する文脈を持つエンタメ特化のクラウドファンディングのサービスを出そうとしています。もともとコロナは関係なく計画していたサービスですが、コロナがあっていまこそスピードを上げてやっていこうとしています。また、支援だけではなくウィズコロナの時代に相性のいいモノの売り方もできると思います。例えばですが、コロナ対策でキャパが半分になったら、1席分の価値は絶対に上がるし、それに付加価値をつけて効果的に販売するためのツールとしてクラウドファンディングは使えると思います。日本ではお客様は神様という公平意識があると感じており、海外のようにVIP席のバリエーションやVIP度が思ったより発展してこなかった。クラファン等を活用してここを改善すればロイヤリティーが高いファンを巻き込んでもっとビジネスが展開できるし、アーティストが持つ価値というものを高めていくことができると思うんです」
菊川「僕は他企業の商品やサービスをエイベックスのヒット作りのノウハウを活用してPRするアライアンスの部署に配属されましたが、今回のコロナを受けて、これまでのリアルの場に加えてオンラインの場でも新たにプロモーション提案をするようになりました。例えば今個人的に考えているもので言えば、ライヴ配信の会場で客席ごとに2メートル空けなければいけないのも、逆にその空いたスペースを使って何かプロモーションができないかとか。本来の形のライヴができないことを逆手に取った発想の転換を試みています」
北川「私は音楽サブスクリプションサービスの担当で、配信営業の部署に配属されました。これまで音楽配信は通勤・通学中に聴かれるのが主流でしたが、いまは変わって来ています。もしかしたらベッドの中で聴いていて、YouTubeが競合になるかもしれないし、動画コンテンツを見ている人にいかに音楽を聴いてもらうかというのが課題になるかもしれません。例えば他社でいうと1分の曲を出したりする人も出てきていますし、楽曲は4分、5分っていう概念が変わるかもしれません」
鮑「私はレーベル事業の海外担当をしていますが、そもそも海外に行けない現状だと撮影もできないし、どうやって海外で宣伝を行うのかを模索しています。もしかしたらオンライン撮影になるかもしれないですし」
これまでのオフラインに加えて、オンラインも加えていかに事業を展開していくか。新たな課題に対しても、若い人たちは柔軟だ。そして、それぞれに「熱い想い」を持っている。
徳永「私は採用担当なので学生と話をする機会が多いのですが、大学の授業もオンラインなので以前より自宅での余暇の時間が増え、エンタメを楽しむ時間が増えたって聞きますね。コロナ禍で刺激や変化が少なくなった毎日の中で非日常を味わえたり気分転換できるのがエンタメの良さだって。なのでこれまでとは違った需要が増えてきているのかなと思います。学生の熱い想いに出会いたいし、オンラインという限られた中で彼らにエイベックスの良さをどのように伝えていけるかを考えています」
菊川「今回のコロナを通して、スマホでライヴを楽しむっていう新しい経験ができて。いままではエンタメと言えばフェスや花火大会などの大規模なものをイメージしていましたが、意外と自分の身の回りにもエンタメって散りばめられるんだなっていう考えの変化が多くの人の中で起きたと思うんです。将来的には、“エンタメを楽しむために出かける”のではなくて、“出かけたらそこがエンタメに溢れている”ような、街づくりにエンタメを掛け合わせるといったことに挑戦してみたいです」
七條「コロナに関係なく、なにかやってやろうという気持ちが新入社員にはみんなあると思いますし、やり方が変わっただけなんです。僕は日本のスポーツ業界ってもっと進化できる可能性があると思っていて、エンタテインメント的な文脈でもっと面白くできるし、ビジネス的にももっとポテンシャルがあると思っています。新しい発想でスポーツ業界を良くして行きたいです」
鮑「私は音大出身で作曲したりもしているので、そういった物語を作りたいと思って入社したんです。人間の記憶って脳にそのままメモリーされるのではなくて、匂いとか音楽とかによって喚起されるものだと思うんです。音楽を聴いた瞬間に記憶を思い出す、その感じがとても好きなので、そういうコンテンツを作りたいですね」
北川「私は夢を追いかけるアーティストの魅力を最大限に引き出す仕事がしたくてエイベックスに入社しました。いまは個人発信がしやすい時代となり、YouTubeや配信を通じてメジャーになるアーティストも増えてきていますから、レーベルの立場としてそういう人たちを応援する仕事をしていきたいです」
石橋「学生時代に吹奏楽をやっていて、車いすの方が、毎年行うコンサートを生きる理由にして来てくださっていたことがあったんです。なので、人の生きる活力になるようなライヴを作りたくて入社しました。オフラインのライヴの価値ってハプニングがあったり、トークがその場でしか聞けなかったりといった“再現性がない”ところにあると思います。なのでどうせやるなら配信にも再現性のない価値をつけられないかと思っていて、例えばスマホのセンサーを活用してその人ならではの映像をパーソナライズで提供するとか。そうやって手段は変わっていく中でも、人に活力を与えるようなライヴを作りたいですね」
取材を通じて感じたのは、新入社員たちはこの状況に不安を感じたり臆したりもしていないということ。これまでを知らないからこそ、むしろ柔軟に変化したり、常識にとらわれずに新しいアイデアをワイルドに提案していけるのだろう。
若い人材にチャンスを与える会社が増えていけば、苦境に立つエンタメ業界の未来はきっと明るいものになるはず。エンタメの可能性を教えられたような気がした。
(左から)
エイベックス・エンタテインメント株式会社
レーベル事業本部
デジタルマーケティンググループ
配信営業ユニット
北川 舞
エイベックス・エンタテインメント株式会社
ライヴ事業本部
シアター制作グループ
プロデュースユニット
石橋 真理子
エイベックス・エンタテインメント株式会社
ビジネスアライアンス本部
第1アライアンス営業&プランニンググループ
PRデザインユニット
菊川 源
エイベックス・ビジネス・ディベロップメント株式会社
新事業開発グループ
スポーツ&エンタテインメントユニット
七條 耀胤
エイベックス・エンタテインメント株式会社
レーベル事業本部
グローバルビジネスデザイン室
グローバルリレーションユニット
レーベル事業本部
デジタルマーケティンググループ
デジタルプランニングユニット
鮑 慧琳
エイベックス株式会社
人事総務本部
人事グループ
第3人事ユニット
徳永 裕美