2025年、今年もエイベックスには大きな希望を抱いた新卒社員たちが入社した。今回はその中から代表として4名に集まってもらい、実際に働いてみて見えてきたエンタテインメント業界の姿や、そこで見出しつつある自分たちの世代ならではの勝負の仕方についてなど——今彼らが感じていることを率直に語り合ってもらった。
(写真左から)吉岡 愛翔 / 菊田 香乃 / 朴 敬珉 / 甲斐 ほの香
『自由』と向き合う日々
今回集まった4名は25年4月に入社、この座談会の時点でちょうど半年が過ぎた。このエンタメ業界に社会人一年生として飛び込み、価値観や常識が大きく揺さぶられるようなこともあったであろう彼らに、まずは入社後の環境や心境の変化について聞いてみた。
エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ株式会社(AMC)で音楽配信事業社向けの営業業務に携わる吉岡愛翔は——
吉岡「エンタメ企業、特にエイベックスというと、華々しくキラキラしたイメージがありましたが、実際に会社の中で働いてみると、結構地道な努力や小さなプロセスの積み重ねがとても大事になる仕事だと日々感じています」
エイベックス・ピクチャーズ株式会社(API)でアシスタントプロデューサーとしてアニメ作品の宣伝などに携わる菊田香乃も、吉岡に同調して言う。
菊田「そうですよね、エンタメ業界ってすごい自由なイメージがあったんですけど、実は自由さの中にもしっかり堅実さがあるというか。自由にするために、まず基盤を固めるところを今まさに学んでいる最中です。先輩の動きなどを見ながら、APIとしてのあり方、核みたいなところをしっかり固めて、そこからどう自由に楽しいエンタメを届けるところにつなげていくか、その楽しさと難しさを両方感じています」
一方、AMCでアーティストのSNSプロモーションに携わる朴敬珉は、韓国と日本の双方で青春時代を過ごしてきたバックボーンを踏まえて、また違った“自由”の感じ方をしているよう。
朴「入社時の面接で『朴君、この仕事は泥臭い一面もたくさんあるけど大丈夫?』と聞かれて、『兵役の時に泥まみれになってたので全然大丈夫ですよ』って答えたんです。実際働いてみて、もちろんビジネスマナーとか、社内外の方とのコミュニケーションを丁寧にすることの大事さを感じながらも、学生時代の自由にクリエイティヴなことをしていた時と根本的には、あまり変わらないなと感じています。朝起きて大学や会社に行って、学食や社食でごはんを食べながら『次はどうしたらもっと良くなるかな…』と考える、その感覚は今も同じです。もちろんプロフェッショナルとして守るべきことはありますが、その上で自由にアイデアを出していける環境があります。チームには年上の方が多くいますが若い世代の意見が積極的に求められるので、そこに自由さを感じています」
対して「私は大学とはまるで違うかな(笑)」と驚くのは、エイベックス・マネジメント株式会社(AMG)でSNSの企画・運営に取り組んでいる甲斐ほの香。
甲斐「大学時代と比べると信じられないくらい忙しくなりましたね(笑)。私はエイベックスの中でもアーティストのマネジメントという才能を商材として扱うちょっと特殊な仕事なので、もっとドライで淡白な雰囲気を想像していたんです。でも、実際はみんなアーティストのことを本当に愛しているのをいつも感じています。私は小中学生のアーティストを主に担当していますが、敏感な年頃なので、こちらの気持ちを見透かされてしまうようなところもあり、愛をもって向き合うことの大事さを学んでいます」
若い世代の価値観を社会に翻訳する感覚
そうして社会の荒波に立ち向かう日々。そばにいて心強いのはやはり同じ立場の同志だ。今年新卒で入社した皆は、普段からコミュニケーションをとり合っているのだろうか。
菊田「同期とは本当に仲が良いと思います。普段からグループチャットでよくやり取りしていて、定期的に同期同士で食事会も開いています」
吉岡「今年は、新卒が19人いるんですけど、配属先はバラバラで各々やってる仕事が結構違うので、ライバル関係というよりは励まし合う仲間っていう感じですね」
甲斐「みんなそれぞれきっと忙しいし1年目で大変なのはみんな同じだから、気軽に会えるわけではないんですけど、同じようにがんばってる同期がいるという事実はずっと頭の中にあって、それはかなり支えになってると思います」
朴「例えば私は韓国のカルチャーやSNS事情に詳しいとか、それぞれの人に強みがあるので、お互いに質問し合ったりしています」
吉岡「普通に仕事をしていると、自分の担当業務の視点に囚われてしまう。そこに別の視点をくれる仲間の存在はありがたいです。私は社内で生まれたクリエイティヴを世の中に届ける部分を担当しているのですが、クリエイティヴの上流から出口までの流れが同期と話してると分かってくるんですよね」
今自分から見えている視界の外側を見せてくれる仲間。そんな横のつながりが育まれていることは、これからの道のりにおいても大きな財産であり続けるはずだ。ではそんな彼らから見て、若い世代の強みとはどんなところだと感じられるのだろう。その強みはエイベックスにどんな影響を与えられるのだろうか。
甲斐「トレンドをわざわざ調べたりしなくても肌感覚で分かってる、”こういうのがイケてるよね”っていう感覚をリアルタイムで世代の共通認識として持てているのは強みだと思います。ただ、トレンドって本当に一過性のもので、それだけではアーティストの人気も一過性のものになってしまう。どうやったらみんなに愛され続けるアーティストにしていけるのかと考えると、やっぱりエイベックスにはこれまで培われてきた圧倒的なノウハウがあるので、それと今の感覚をうまく融合させることで新しいアーティストを生んでいけるのかなと感じています」
朴「そうですね、そういうセンスの部分もありつつ、私は好奇心っていうのも大きな武器だと思います」
菊田「たぶん若い世代は色んなコンテンツに触れることに抵抗がないというか、好奇心旺盛に飛びついて、何かを吸収してくる力はあると思います。自分が今置かれている環境でいうと、先輩たちが日々アンテナを張って面白いことや新しいことを見つけて共有し合いながら、実際の仕事に活かせないかと話していたりするんですよね。こうした一人ひとりのアンテナにかかったことを仕事の中で活用できる環境があるからこそ、私たち若い世代が好奇心を持って色んなことに挑戦して、触れてみることが大きな意味を持つはずです」
吉岡「私たちは“デジタルネイティブ世代”って言われることが多いですけど、デジタルの情報がたくさん溢れているなか、アンテナの強度とかキャパシティみたいなところは私たちの世代の強みだと思います。逆に、デジタルのリテラシーに差がある人たち、例えばうちは両親がそうなんですけど、ケータイとかアプリとかの使い方が分からないような、そういう世代の人たちとの感覚差をとりわけ強く感じながら生きてきた世代とも言えると思うんです。その隔たりを超えてコミュニケーションをしながら生きてきた私たちが、こうしてエンタメを届ける立場になってそれを広く世の中に伝えるというときに、そんな感覚差の中で培ってきた“翻訳力”が自分たちの武器になっていると思います」
世の中の『好き』と向き合う
4人に、なぜこのエンタメ業界を選んだのかと理由を聞くと、「好きなことを仕事にしたい」という思いを持って入社したという点で一致していた。しかし実際に仕事にしてみて、日々の職務の中に自分の“好き”をどんなふうに据えていくべきか、“好き”にまつわる迷いや奮闘はそれぞれにあるようだ。
朴「私は、自分の“好き”にすごく自信があったんですけど、入社してからは『自分の“好き”は、必ずしも他人の“好き”ではない』っていうことを改めて痛感しています。でも、だからといって自分の“好き”を疑う必要もないと思っているんです。なにか新しい企画をつくるとき、自分の“好き”に忠実でいたい。でもそこで自分の“好き”は他人と違うんだからと諦めるのではなく、その乖離を認めながらも、それでも自分が好きでいるのはなぜだろう、他の人が好きじゃないのはなぜだろうと、深掘りしてしがみついていくことで見えてくるものがあると、周りの方々に教わっています。自分が面白いと思っても通らない企画っていっぱいあるけど、それでも諦めずに淡々と自分の“好き”を貫いていくことで、いつか世の中に出せるものができると思っています」
見る人を驚かせたり、まだ誰も見たことのないことでワクワクさせたり。そういった作品やコンテンツを生み出すには、多くの人の“普通な”感覚から少し外れた、しかし強い意志が貫かれたものでなければならないのかもしれない。一方で菊田は、貫くべき部分は貫きながらも、受け手に合わせて柔軟に変わっていけることも大切だと語る。
菊田「朴さんが言うように自分の“好き”を貫くのもすごく大事なんですけど、世の中の人たちの“好き”としっかり向き合って考えていくことも同じくらい大事だと感じています。例えば何か情報を解禁したりコンテンツを公開したりという度に、自分たちが思っていたのと違ってこういう反応が多かった、というようなズレが生じることは多々あって、そこを学びとして吸収して『じゃあ次はこっちの見せ方で行ってみたらバズるかも』と、ブレストしてブラッシュアップしていくことの大切さを私は今まさに身をもって学んでいるところですね」
人それぞれに持つ“好き”は、その人にとって大切な気持ちだからこそ一筋縄ではいかないし、簡単に読めるものでもない。
しかし吉岡はその違いに“人の温度”を感じている。
吉岡「私も似た経験がありますね。例えばある楽曲を配信するにあたって、自分自身いい曲だと思って、配信事業者からの反応もいいし、その先にいるユーザーのリアクションも絶対にいい感じになると思っていたらそうじゃなかったとか、またその逆もあったりします。それはやっぱり、配信事業者も含めて届ける側も人間だし、その先のユーザーも人間だということだと思っていて。人の“好き”を正確に捉えるのは簡単じゃないですよね。自分たちの想像とリリースした後の作品の動き方に結構ギャップを感じていますし、そこをもっと深く捉えられるようになりたいと思っています」
エンタメ業界において“好き”を仕事にするということは、作品を届ける相手の“好き”と真摯に向き合うことでもある。そしてその困難を乗り越えていく原動力もまたその作品への愛であったりもする。エンタメの世界で、自身が携わるものに対する情熱が肝要であることを、4人は今肌で感じているのだろう。
そんななか甲斐は、仕事に対する情熱の表れ方について、入社後の気付きとして語る。
甲斐「私はマネジメント業務なので常日頃アーティストのことを考えていることが特に大事だと感じています。部署内のグループチャットは常にアクティブで、でもその内容は仕事の用件ばかりではなく、ふとテレビ等で見た『これがあのアーティストに合いそう』とか、日常のなかでの何気ないヒントを送り合う文化があります。会議も雑談が多くて、最初は効率的ではないと感じたのですが、実は逆で、日常の小さな気付きを共有している中にヒントがあって、点と点がつながるように何かが見えてくるようなことが多々あるんです。普段から常にアーティストのことを考える意識を持つことで、自然に世の中の“好き”にも目が向いて、仕事のパフォーマンスが上がるんだということを痛感しています」
エイベックスで、
次のエンタテインメントに挑戦する
最後に、4人に今後チャレンジしたいことについて尋ねた。
甲斐「大きな夢としては、世間で『エイベックスといえば?』といったら令和のトレンドアーティストがほとんど挙がるような、そんな会社にしていきたいと思っています。 それを実現するためにも…やっぱり自分がゆくゆくはプロデューサーだったりマネージャーという役職になっていくことを想像すると、まわりの人たちの良さや個性を引き出す方法を愛をもって考えられる人になりたいなと常々思っています。いいアーティストはいい組織から生まれると思うので、そういう組織づくりの一翼を担えたらなと思います」
朴「大きい夢ですけど、世界を巻き込んだ社会現象を起こせるようなアーティストをエイベックスから私が売り出したいです。圧倒的な、世界で誰しも聞いたことのあるようなアーティストを手掛けたいですね」
菊田「私はやっぱりアニメと言ったらエイベックス、と思ってもらえるのが一番嬉しいですね。日本だけでなく海外でも、エイベックスと言ったらあの作品もあの作品も手掛けてる会社だよね、って。国内外問わずアニメ作品が面白いのはエイベックスだ、と思ってもらえる会社になれるように、貢献していきたいなと思っています」
吉岡「エンタメって時代が進むにつれてどんどん新しいものが生まれていくし、その中でエイベックスには、どんな作り手に向けても、またどんな嗜好や感性を持つユーザーに対しても、懐深く受け入れてくれるような会社であってほしいと思っています。その中で自分は誰よりもセンサーを広げて、新しいものをキャッチしていきたいですね。音楽も映像もあらゆる表現活動に対してアンテナを張って、吉岡だったらなんでも知ってると思ってもらえる存在になりたいです。そういう幅広さというか、身軽さみたいなものを磨き続けていきたいと思っています」
今回の4人の言葉のひとつひとつからは、エイベックスで過ごしてきた半年間がとても意義深く、濃密なものだったことがうかがえる。また自分たちの世代の特性と強みを自覚的に捉え、それを活かしていく術、それぞれがすべき闘い方を日々模索している。そんな彼らの、これからの活躍がとても楽しみだ。
(写真左から)
エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ株式会社
デジタルマーケティンググループ
DSP営業ユニット
吉岡 愛翔
エイベックス・ピクチャーズ株式会社
マーケティング・コミュニケーション本部
プロモーショングループ第1宣伝プロデュースユニット
菊田 香乃
エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ株式会社
ファンコミュニケーショングループ
第2ソーシャルプランニングユニット
朴 敬珉
エイベックス・マネジメント株式会社
プランニング推進ユニット
甲斐 ほの香




