全米で5万人以上を動員し、カナダやオーストラリア、ニュージーランド等世界17カ国60都市で開催されてきた世界唯一のウェルネスイベントWANDERLUSTが2018/6/17(日)、横浜赤レンガ倉庫イベント広場特設会場で、日本初開催された。数々の音楽フェスや近年ではSTAR ISLAND、RAGEといった新たなコト体験の場を創出してきたエイベックスが、日本で先駆けとなるウェルネス / マインドフルネス・イベントを事業の一環として手掛ける意義も含めて、レポートする。
赤レンガ広場に約1,000人が集合。
女性に嬉しいブースラインナップ
例年より梅雨入りが早かったせいで前後日は雨だったが、当日は曇り空ながらすごしやすい陽気となった。日常的にヨガを行なっている参加者が多いようで、ウェアにアウターを羽織って登場する本格派も。ターゲット層である、仕事も趣味にも貪欲で、健康と美容に前向きな20代女性が確かに多く、スレンダーで最新のウェアを身につけたインストラクターやヨギーニの姿を多く目にした。同時にカップルや夫婦、子供連れやヨガ愛好者等年齢層は広く、またカラフルでエッジーなルックスの若い女性も参加していて、ヨガ人口の裾野の広さが実感できた。
クロークでゼッケンとファンダナを受け取った参加者は各々ヘアアレンジや腕に巻く等アレンジを施し、イベントの一体感が醸し出されている。ターゲット層向けにミネラル・ファンデーションやサプリメント等のブースも出展していた。
また、自然と一体になり、本当の自分と出会う「WANDERLUST」にはライフスタイルにヨガを取り入れている参加者が多く、ワーク開始前はボディ・ペイントのブースが大盛況。多くの参加者が海外の「WANDERLUST」で観られるような、鳥の羽や花びらなどネイティヴなペイントをフェイス&ボディペインターやイラストレーターに描いてもらったり、参加者同士で腕や顔にお揃いのモチーフを描くなど、本場の「WANDERLUST」のムードを積極的に取り入れ、楽しんでいた。
赤レンガ広場という、横浜での休日を過ごす名所でもあり、音楽フェスでも馴染みの深いシチュエーションは、今回の参加者が約1,000人という結果から考えると快適なキャパシティだったのではないだろうか。参加者全員でヨガを行う芝生のエリアも各人がヨガマットを広げても余裕があった。
充実したプログラムと
音楽で魅せた演出
プログラムの最初は5kmのランで、海風を感じながら往復1kmのコースを5周する。この日のためにアメリカから招聘したMC YOGIのユーモアに富んだレクチャーとトークで準備運動をした後、グループや友人同士でマイペースで走る。コースの随所で声をかけるスタッフとハイファイブ(ハイタッチ)をしたり、自分のペースで走ったり歩いたり。全員がヨガのスタート時間には余裕で完走。普段から運動に親しみのある層であることが想像できる。そして何より、レースではないランならではの楽しいムードで、誰もが笑顔だったのが印象的。初のマインドフルネス・イベントでありつつ、参加者が主旨を理解し、また進行するMCやイベントを支えるスタッフも「誰もが自分のペースで楽しめる」ことを共有できていたことが、イベントのムードを柔らかなものにしていた。
参加者の主な目的であると思われるヨガは、まずMC YOGIの声がけで参加者同士のハイファイブからスタート。心地よい音量で流れるDJミュージックも心地よく、約1,000人が行う太陽礼拝やウォリアースリー等様々なポーズをとっていく。初心者でもできるポーズがほとんどで、このイベントならではの醍醐味はやはり野外で大人数というグルーヴ。見知らぬ参加者と肩を組んで協調しながらとるポーズは自然と笑顔になり、野外の開放感も相まって、誰もが初めてのイベントという垣根を感じていないようだった。途中、MC YOGIが自己紹介を兼ねて、オリジナル曲を披露すると、前方に参加者が集まり、音楽フェスのような盛り上がりも見せた。
プログラムの締めくくりは人気ヨガクリエイターayaの声に導かれてのメディテーション・タイム。配布されたアロマオイルがさらにリラックス効果を生んで、おのおのの内面に向かい、ランとヨガで高揚した心身も静かに整えていく。音楽も絶妙で、シガー・ロス等心を落ち着かせることにマッチした音楽をチョイスしていることにもセンスの良さが感じられた。自然の摂理と密接に関わっているヨガの世界だが、あまりにスピリチュアルなムードでも、今求められているマインドフルネスとは乖離を感じることは明らかで、その辺りのセンスにおいてもニュートラルで居心地の良い空間が演出されていた。
3つの基本プログラムが終了すると事前予約した7つのワークショップへ参加したり、軽いランチをとったり、またビューティ、インナービューティ系のブースへ足を運んだりと、参加費に対して納得のメニューが揃った印象だ。特にワークショップの多彩は参加者の様々なニーズに対応しており、さらにメディテーションする人、ハンモックを用いたニューヨーク発祥の「AIReal YOGA」を野外で体験できる心地よさに、地上では取れないアクロバティックなポーズにチャレンジする人も。また、ブレイクダンス発祥の「BREAKLETICS」や、エイベックスのダンスメソッドが基本にある「avex dance workout」等、ハードなエクササイズでさらに汗を流す参加者も見受けられ、自身の体力や嗜好に合うプラス・アルファのワークショップが、ウェルネスに関心の高い参加者にとっては高ポイントになっていた様子だ。
ローカライズへ。
WANDERLUSTは
さらなる進化を遂げるのか
会場全体のトーンはブラックで統一し、スタイリッシュ。メインステージの音楽を手がけていたDJの選曲もプログラムがスタートするまでとランではソフトめなダンスミュージック、メディテーションでは前述のようにセンスのいい落ち着いた洋楽等、絶妙なさじ加減で参加者の日常と違和感のない選曲がなされていたことも心地いい空間作りに一役買っていた。また、PAシステムもMCの説明やメディテーションの要である静かな語り口を明瞭に伝えており、数多いワークショップの比較的近い距離感での音響も互いに干渉せず、聞き取りやすかった。数多の音楽イベントで培ったエイベックスならではの配慮が活きていたと実感した。
海外でのWANDERLUSTの情報は持っていても、体験そのものは初めての参加者が大半だったにも関わらず、過不足ないホスピタリティやアクティビティの充実で、まずは最初のターゲット層であるヨガの指導者やフィットネスを日常に取り入れている層を楽しませることに成功した第一回目。マラソンほどもちろんストイックではないが、そこそこの運動量で心身を解放でき、大勢の参加者と自ずと協力するシチュエーションもある「WANDERLUST」。音楽フェスの盛り上がり方とはまた違う、自分が主役の野外イベントとも言えるだろう。
参加者の方向性や、思いの外層の厚い世代や性別から、今後、エイベックス・オリジナルのMDや新しい開催地の模索も行われていくだろう。今回感じられたのは日本、それもWANDERLUSTに参加する主な層はスタイリッシュで、それなりにストイックにフィットネスに普段から取り組んでいる女性が中軸だったこと。すでにハイブランドでもヨガラインは人気があるだけに、今後、ウエア、インナービューティに向けてのスーパーフード等、どのようなコラボレーションがエイベックスとして実現できるのかも期待したい。
Photo Boothでの写真、難易度の高いヨガのポーズ写真、リンクコーデで決めたヨギーニら、「かっこいいWANDERLUST」のイメージが、インスタグラムで共有されていた印象。実際にはインスタにアップしない層ももちろん存在するわけだが、イベントのイメージ向上にマイクロインフルエンサーのスタイリッシュかつ楽しそうな写真は大いに貢献したと言えるだろう。
なお、ローカライズ可能なイベントという目標はすでに達成される運びで、当日、福岡と名古屋での開催がアナウンスされた。今後、息の長いイベントでありつつ、毎回、時代性も感じられるウェルネス・イベントとしてどのような進化と定着を果たしていくのか。日本ならではの発展にエイベックスのスキルがいかに発揮されるのか、動向を見守りたい。