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2001年の開校以来、エイベックスだからこそ可能なプログラムを通して、200名を超えるアーティストやタレントを輩出してきたエイベックス・アーティストアカデミー(以下、アカデミー)。今回はアカデミーの過去・現在・未来を総括しつつ、その存在意義とエンタメ業界における育成の大切さを探るため、エイベックス・マネジメント株式会社でアーティストアカデミーのゼネラルマネージャーを務める鎌田博と、クリエイティヴ&マーケティング 戦略ユニット ユニットリーダーの紙上養一、そして「Dance COMMUNE」といったアカデミーの新たな取り組みを担うエイベックス株式会社・新事業推進本部の星野拡の三者に話を伺った。

多様性のある人材に
デビューへの道筋を
エイベックスが誇る
アカデミーの強み

アカデミーはまだエンタメ業界の人材を育てるスクールが皆無だった2001年に発足。まずはその成り立ちを、発足当時からボーカルインストラクターとして携わり始めた紙上に振り返ってもらった。

紙上「新人アーティストをスクールから発掘し、エイベックスからデビューさせたいという想いを元に社内でアイデアを固め、さまざまな方の協力を得て2001年にアカデミーが開校しました」

2001年といえば、浜崎あゆみのベストアルバム「A BEST」が500万枚以上の売り上げを記録。また自身初の4大ドームツアーを敢行し、年末には日本レコード大賞を受賞するなどエイベックスの看板アーティストが隆盛を極めた時代だ。そしてその影響はアカデミーにもあったという。

紙上「アカデミーが開校した2001年は、それこそ浜崎あゆみの人気がとてつもない時期で、その影響もあってものすごい数の学生が集まりました。そして実際にその後、AAAのメンバーをはじめアカデミーの生徒たちがいろいろな形でデビューをしていったんです。そのように憧れを抱いた子たちが実際にデビューできる学校というのは、当時珍しかったというかほかにありませんでした」

そんな発足当初からアカデミーに関わり、約20年にわたってその屋台骨となってきた紙上。そして2004年からダンスマスターの営業代理店としてエイベックスと関わり始め、その後2008年に入社し現在はアカデミーを統括する立場である鎌田。それぞれは改めて、アカデミーの強みはどこにあると考えているのだろうか。

紙上「先ほどの話から繋がる部分で、今ではさまざまなエンタメ系のスクールが存在しますが、エイベックスというエンタテインメント企業が直接運営をしていて、きちんとデビューまでたどり着ける道筋をつくっている。これは私たちが20年間にわたって守り続けている強みでしょう。そしてもう一つは、強烈な個性と経験を持ったプロの講師陣による独自性とマニュアルによるプログラムの均質化のバランスがすごく取れていることが、アカデミーの優れている点だと思います」

鎌田「シンガーやモデル、アクター、DJやクリエイターといった多様性のある人材を育てているということが他社と最も違う点でしょう。そして、全国の若者にタッチできるライセンスアウトシステムをダンスで拡充させたというのもほかにはない形。そして今は新事業推進本部の星野がジョインし、テクノロジーを掛け合わせ、スクールを掛け算ビジネスに変えていくことで3つ目の強みを生み出せると考えています」

成長の鍵はアウトプットする力
テクノロジー×スクールによる
新たなサポート

アカデミー開校当時から、常に現場でさまざまな生徒たちを見続けてきた鎌田と紙上。2001年から時代も環境も劇的に変わった今、生徒たちの変化をどのように感じているのかを聞いた。

鎌田「当時はアーティストに直結するスクールがなかった時代なので、夢を明確に持って入学する人の割合が圧倒的に多かった。ただし最近はダンスの認知度も高まり、学校におけるダンスの必修科の流れもあって、習い事感覚でアカデミーに来る子も非常に増えていますね」

紙上「昔はやる気だけはとにかくある熱量の高い子しかいなかった。そしてその手綱を握るのが先生たちの役割だったところがあります。今の生徒たちは当時よりもすごく知識はあるし、歌唱やダンスなどの質も高い。みんながそうなったからこそ目立つのが難しくなっている部分はあると思います」

鎌田「その中で大事になってくるのが、自ら生み出し、発信する力を育てること。今は SNSやYouTube含め自分で発信できるしチャンスも掴みやすくなっている時代なので、インプットしたことをしっかりとアウトプットをできる生徒を育てていかなければいけないと考えていて、今まさにそれに集中して取り組んでいます」

さらに冒頭で鎌田がアカデミーにとって3つ目の強みになると語ったテクノロジーとスクールの掛け算ビジネス。そのプロジェクトを一手に担うのがエイベックス・新事業推進本部の星野だ。

星野「きっかけにはスポーツの存在がありました。スポーツは競技者の育成や適切なトレーニングの選択にデータサイエンスやテクノロジーを取り入れてどんどん進化している。それをエンタメに置き換えたときに、ダンスや歌はまだ着手できていないことが多いなと感じていました。それで2年半ほど前に今やっているDance COMMUNEに繋がるようなビジネス構想を持って、鎌田や紙上に相談したんです」

エイベックスが持つ“仕組み化されたダンス育成ノウハウ”を動画解析など最先端のテクノロジーを活用することでコンテンツ化し、新しいビジネスを生み出せると考えた。そして星野はその構想を実現するにあたって、アカデミーの人たちと共にやるのが一番良いという結論に至る。

星野「例えば、従来のスクールでは1対複数で教えることが多いため、一人ひとりへのフィードバックという点で限界がありました。生徒たちへのアンケートの中でなるほどなと思ったのは、『なかなか自分の成長を実感できない』という子が多かったことです。Dance COMMUNEというアプリではダンスを動画解析し、それぞれの成長度合いを数字的に可視化。それによって生徒たちのモチベーションを上げ、これまでにない形で成長をサポートすることができると考えています」

ノウハウのシェアで
学びに多様性を
リアルに限定されない
アカデミーの未来予想図

2000年代から2010年代、そして2020年代へ。テクノロジーは急速に進化し、ソーシャルビジネスは爆発的に広がりを見せている中で、アカデミーはある意味、リアルのみでビジネスをしてきた。

鎌田「僕ら自身も変わらなければいけないと思っていたときに、星野はいいタイミングで提案してくれたなと思いますし、ありがたかった。実際、テクノロジーと組み合わせた新たな取り組みを自分たちの中でやろうと思っても、ドライブさせることやゼロからつくることはできなかったと思います」

星野「ただ誤解が無いように伝えておきたいのですが、ダンスの解析はとても難しくて。順風満帆ではまったくなくて、どうしたら精度を上げていけるのかいまも常に試行錯誤を続けています。さらに今は基礎的な動きのスキル評価という範囲に留まっていますが、もっとエンタメに携わる人をサポートできる仕組みを作って、リアルの付加価値として生み出していきたいと考えています」

リアルに関して鎌田は今、アカデミーに携わるみんなと“未来予想図”を描いているところだという。

鎌田「今まではリアルな教育の場に一番価値があると思っていたんですね。ただしユーザーの楽しみ方はますます進化し、多様化していっている。そこに遅れるような旧態依然の考え方をまず僕が持ってはいけない。さらにこれからのキーワードは“シェア”だと考えています。ノウハウを溜めてただ持っているだけでは何も価値は生み出せない。価値の高いノウハウであればあるほど周りにシェアしていくことで人を集められる時代なので、それに合わせて先生が生徒に教える形だけでなく、もっと「学び方」の多様性を持つ必要があると考えています」

紙上「それとこれからはよりアーティストの方を向いて仕事をしなければいけないと痛感しています。消費者とアーティストが直接繋がれる世の中だからこそ、まずアーティストが我々を仲間に選んでくれなければいけない。そこがなければ我々、そして会社としての存在意義はないので。その意味でも才能を持った若者たちがエイベックスのアカデミーで学びたいと思ってくれるような仕組み、そして魅力のあるコミュニティをつくることで、我々の存在意義はこの先も10年、20年続いていくと思います」

最後に星野が、2年半前に自らの構想を相談しに行ったとき、紙上に「それ20年前からやりたいと思っていたやつだ!」と言われたというエピソードを教えてくれた。次世代の才能たちの成長をサポートしてきたアカデミーだが、そのアカデミー自体が成長することも今まさに求められている。これまで培ってきた圧倒的なノウハウ、システム、ネットワークにテクノロジーが組み合わさったときにまだ見ぬアカデミーの未来が拓け、そこから新たな時代のアーティストが生まれてくるのだろう。

“オンライン活用”と
“グローバル視点”
コロナ禍で見えた
スクールのあり方

新型コロナウイルスの影響を踏まえて、このインタビュー後、改めて現在行なっている施策や今後の対応について三者に聞いた。

Q.新型コロナウイルスの影響化で、入学希望者への対応やレッスンの実施などに関してどのような施策を行いましたか?

鎌田「まずどこでもやっていることですが、オンラインでレッスンをする仕組みを構築しました。そしてこの仕組みを作る間も、検証などにある程度の時間が掛かりますので、休校で実施されなかったレッスンを動画にしてYouTubeで公開しました」

紙上「2月末に完全休講を実施し、全受講生に対して休校期間中の学費を全額返金、また再開後も全レッスンの振替可能期間を1年間に延長しました。ボーカル受講者に対しては自宅練習用のGarageBand楽曲データ90曲分を配布予定で、外部に向けてはダンスとボーカルの自宅レッスン用映像を撮影し、3月15日までに約800本の映像をYouTubeチャンネルにて無償配信しました。他にも『エイベックスボーカルマスター・メソッド集』のホームページでの無償公開や、『ボーカル、ダンス、モデル、アクター』などのオンラインレッスンの一般販売なども行っています」

星野「アカデミーが休校対応を決めた2月末からダンスレッスンに通えなくなったり、外出自粛で満足な練習環境が得られなかったりした受講生に対して、少しでも家の中でダンスの練習を楽しんでもらえるようにDance COMMUNEを無料開放しました。これまではテスト導入として、アカデミー東京校の限られたクラスに通う受講生だけが使えるものだったのですが、無料開放後の3月初週にはおよそ1,000人弱の受講生がアプリをダウンロードして使ってくれていました」

Q.生徒とはどのようにしてコミュニケーションを取っていますか? また、現状の施策に対する生徒の反応や、生徒の声を受けて感じた率直な感想や今後の課題などをお聞かせください。

鎌田「生徒の中でオンライン受講している子たちとはスタッフもコミュニケーションを取れていますが、家庭の事情でオンライン環境が持てない受講生とはできる限りメールや電話でのやりとりをしていました。また、オンラインレッスンはおおむね評判が良く、再開までの間をつなぐ手段としては満足度が高いことがアンケート結果からも読み取れます」

紙上「定期的に受講生やオンライン参加者向けのアンケートを実施し、現在の状況や再開後の通学に対する意識調査などを行っています。スクール再開前後には、保護者も交えた全受講生へオンラインカウンセリングの実施も予定しています」

Q.構想も含めて、今後はどのような施策を行っていく予定ですか?

鎌田「スクールが再開した後も、オンラインの利点を生かした“リアルとハイブリット”で運営していくこと、そしてより一人ひとりの受講生を大切にし、満足度を高める施策を行っていくことが必要だと感じています」

紙上「今回のコロナ禍では、いろいろな意味でリアルからオンラインへのシフトが起こったと考えています。アーティストを見つけ育てるスクールのあり方も、オンライン活用とグローバル視点がますます必要となりました。まずリアルスクールの再開においては、徹底した衛生管理とソーシャルディスタンスの確保が必要だと考えています。ただしエンタメ系スクールという特性上、どうしても完璧は望めないため、オンラインレッスン・映像アーカイヴ課題・少数でのリアルレッスンなどを組み合わせた育成メニュー作りを進めていきます。さらにスキル優秀者には、プロの音楽制作者らによるコーライティングゼミをオンラインサロン形式で提供したいと考えています。世界中のさまざまなクリエイターと共に作品づくりと自己発信の方法を学び、自由闊達なアウトプットを促し、未来のアーティストを生み出したいと思っています」

星野「限られた環境の中ですが、アプリを活用してダンスの自主練をサポートできたことで、改めてサービス開発を進めてきて良かったなと思いました。今後もより多くのダンサーの成長をサポートできるよう、サービス向上・機能向上に務めたいと思っています」

(写真左上)
エイベックス・マネジメント株式会社
アカデミー事業グループ
クリエイティヴ&マーケティング 戦略ユニット
ユニットリーダー
紙上 養一

(写真右上)
エイベックス株式会社
新事業推進本部
新事業開発グループ
チーフプロデューサー
星野 拡

(写真下)
エイベックス・マネジメント株式会社
アカデミー事業グループ
ゼネラルマネージャー
鎌田 博

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エイベックス・アーティストアカデミー
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