2013年の結成以降、国内外での活動で注目を集める5人組ガールズ・ユニオン、FAKY。デビュー以降、2度のメンバー変成を重ね、2018年12月よりLil' Fang、Mikako、Akina、Hina、Takiの5人で活動をスタート。個々のバックグラウンドから成る五者五様のスタイルとファッション感度の高さ、そして何より規格外のパフォーマンス力で、J-POPシーンはもとより、世界各国から熱い関心が寄せられる。今回は、FAKYを前後編にわたってフィーチャー。A&Rディレクターを務める藤澤友美と新卒2年目で入社以来FAKYのプランナーを務める門馬理紗、そしてメンバー5人とのセッション方式でFAKYの今と未来を語ってもらう。
チーム一丸で
体現する“リアル”
イメージチェンジが生んだ
意識の変化
FAKYというアーティストの理念を端的に表すとすれば、“次世代ガールズ・ユニオン”という冠そのままに「ユニオンであって、グループにあらず」だ。この意味を説明するならば、「彼女たち1人1人がスペシャリストで、確固たるアーティスト。それらが集合体になるから我々はより強力になる」という藤澤の言葉に尽きるだろう。その深意を紐解く前に、まずは活動の変遷を遡りたい。FAKYというアーティストのそもそもの成り立ちとFAKEをもじった逆説的かつアイロニックなタイトルから読み取れるコンテキストについて、藤澤はこう解釈している。
藤澤「もともと、いろんな場所で生まれ育ったスペシャルな女の子たちが東京に集結して、そこから世界へ発信していこうという想いがあって。FAKY結成当時、日本から海外へ向けて活動していきたいという想いを掲げたアーティストはそこまで多くなかったタイミングで。いわゆるスタンダードとは比べられたくないというか、一線を画すようなクリエイティヴを目指すというところで、フェイクではないことを表現したかったんです。ちょっと皮肉ってはいるんですけど、当然そうじゃない部分も含めてFAKYというアーティスト名の由来になったのかなと思っています。ただ、私はAkinaが加入する以前のいわゆる第1期を担当していないので、あくまで私の解釈なんですけど」
一方、オリジナルメンバーの1人・Lil’ Fangにとって、FAKYの4文字は自らに課した十字架のようであり、常にリアルを探し求めるための指針でもあるという。
Lil’ Fang「私たちメンバーにとってFAKYという名前は、自分たちへの挑戦っていう意味がとても大きくて。結成当時は私もMikakoも未成年で、なにがリアルでなにがフェイクなのか、正直わからなかったんです。でも、フェイクと自分たちに名付けることで、挑戦的な意味でずっとリアルを探し求めていけるんじゃないかって考えていました」
前述にもあるように、FAKYの活動は、デビューからAkina加入までの第1期、Akina加入から前メンバーAnna卒業までの第2期、そしてHina&Taki加入の第3期とフェーズを区切ることができる。他アーティストも数多く手掛ける藤澤がFAKYを担当するようになったのは、第2期スタートのタイミング。『フェイクなフリして、とことんリアルに。』というキャッチコピーが生まれたのもこの時期だ。自身が携わることで明確なイメージチェンジを起こそうとしていた藤澤、そして加入オーディションのために米カリフォルニアから来日したAkinaの存在は、FAKYにとって新たなアプローチへの確かな足掛かりになった。
藤澤「私が初めてFAKYのステージを観たのが第一期の終わり頃、クラブのイベントに出ていたときだったんですけど、当時まだまだ初々しさもあったし、こういうアプローチをしていきたいんだろうなって感じるものもあって。当時『私が担当するということは、変えるということを大前提にいきたいです』っていう想いは伝えていました。そのあとAkinaが加入したんですけど、このタイミングでこれまでのイメージから思い切り変えないと、彼女が入ってくれた意味がないんですよね。『新しい人が入りました、以上!』みたいになると、それはつまらない。とはいえ、『どう変えよう……』って、めちゃめちゃ悩んだのが正直なところで。そこでまずはメンバー全員に髪型を変えてもらって。Mikakoは今では想像できないと思うんですけど、茶髪だったのを黒髪ボブにしてもらったんです」
Mikako「ほぼ金に近かったんですけど、『黒で!』って(笑)」
藤澤「第1期がいい意味で戦闘態勢というか、煌びやかに着飾るイメージが強かったので、その逆を行く“抜け感”が欲しいなと思って。等身大の彼女たちの魅力を表現したかったので、ユース感をキーワードに掲げました。青春じゃないけど、そういったイメージを出していて。それもあって楽曲の方向性も変えたというのが、第2期の中ではありました」
同時期、結成から活動を共にしてきたメンバー5名のうち2名の脱退を受けて「これで夢が終わってしまった」というほどにショックを受けていたというLil’ Fangは、藤澤とAkinaが合流した第2期スタート時についてこう振り返る。
Lil’ Fang 「膝から崩れ落ちるくらい絶望していたときに、藤澤さんから『今からガラッと変えるけど、一緒にがんばるから安心して』って言われて、震えましたね。かっこいい姐さんが来た!って(笑)。そこから本当にガラッと変えてくださって、素晴らしい才能を持ったAkinaが入ってくれて、楽曲のテイストもガラッと変わって。ただ、私達からするとそれが果てしないプレッシャーでした。それまでは、ある意味いただいたものをこなせば良かったんです。だけど、これからは自走しなくちゃいけない。このままじゃダメだなって、すごく感じました。そこから、音楽的なクリエイティヴでのぶつかり合いを初めて経験させていただいたりもして、いろんなことを経て。今は一緒に闘ってくれているという意識がとても強いですね。信頼しきっています。FAKYチームが一丸となっていることは自信を持って言えます」
新卒2年目で
FAKYチームに加入
日々の学びと
実感するフラットさ
Akinaの加入から3年後、Annaの卒業を受け、元Def Willのメンバー・Hinaとフィリピンのテレビ番組やドラマ、映画などで活躍していたTakiが加入し、5人でのリスタートを切ったFAKY。それに伴い、第2期のイメージチェンジから更なるバージョンアップを謀ることになる。ファンにとってみれば、やっと定着したイメージがまた変わることへの戸惑いもあったかもしれない。しかし、藤澤の視線は常にメンバーへ向けられている。だからこそ、これまでと同じことを続ける気はさらさらなかったという。
藤澤「TakiとHinaが入ってくれるということになって、第2期でもガラリと変えたのに、またさらに変えなければいけなかったんです。でも、それは大事なことだと思っていて。AnnaがいたときのFAKYをそのままやっていると、TakiとHinaが比較されちゃうんですよね。『前のほうが良かったじゃん』なんて言われるのは絶対イヤだから。この2人はすごくキラキラしていて宝石みたいな存在だから、このキラキラを活かしたことをしなきゃいけないと思って。それでまたガラッとビジュアルを変えることになりました」
門馬「藤澤さん、毎日のように仰っていました。『絶対パワーアップしたところを見せないといけないんだ』って。新卒ほやほやのときにそういう話を聞いて、胸を熱くしたのを覚えています」
藤澤「これはある意味、自己暗示なんです。私が一番強くなきゃいけないと常に思っていて。そうじゃないとみんなが壊れそうになったときに手を差し伸べられないから。ある種、強気でいかなきゃいけないというか、自分のコントロールというのは常々やっているところはあります」
新卒2年目の門馬がスタッフとしてチームに参加することになったのは2019年。もともと音楽は好きだったが、それよりも自身が得意とする企画創出が出来るポジションに就きたいと考えていた門馬にとって、アーティストのスタッフにと声がかかったことは大きな転機となった。同時に、「インターン前まで縦社会のイメージが強かった音楽業界で、ここまでフラットに新卒の意見を聞いてもらえる社風に驚いた」という。
門馬「やっていることの重みを課してくれているなと感じています。特に任せてもらえたなと感じたのが、<Dance Practice Video>やMV撮影メイキングなどFAKYのリアルを見せる<REAL FAKY>等のYouTubeコンテンツ。『やってみようよ!』と言ってもらえたことは大きかったなと思っています。それと、私はSNSのような細かい作業があまり得意じゃなかったんですけど、藤澤さんに『一言一句、写真の並べ方も全部にこだわりを持ってやって欲しい』と言われて、がんばってみようと思えました」
藤澤「私が出来ることもあれば、彼女の方が得意なこともあるし、出来ないことにすごい時間を割くぐらいなら別のことに時間を使いたい。『教える』というのもおこがましいなと思っていて。若い子には若い子の考えとか、若いだけじゃない才能もあるから。そこをとやかく言って違うことになるなら、そういうスタンスは持ちたくないし、時代にフィットして生きていかなきゃいけないなと。フィットするためには、ある程度変えていかなきゃいけない部分が自分にもあると思っています」
世界で注目を集める
FAKY
重視する
“個性へのリスペクト”
“世界に通用するアーティスト”というビジョンを掲げ、これまでにブラジル・カナダ・スペインでの遠征を成功させた実績を持つFAKY。活動拠点こそ日本だが、YouTubeのコメント欄やSNSの反応を見てもわかるように海外からも熱視線が惜しみなく注がれている。海外での認知はアーティストの規模感を測る有用なバロメーターにもなるが、「日本と海外」という点について藤澤は「どこにいても、やることは一緒」とあくまで冷静だ。一方で、門馬は別角度からFAKYに日本らしい部分を見出しているという。その両視点に共通するのは、メンバーひとりひとりが持つ個性への絶対的なリスペクトだ。
藤澤「多国籍かついろんなバックグラウンドを持つスペシャルな女の子が集まっているという時点で、日本だの海外だのを意識する理由が見当たらないんです。日本のアーティストだから日本らしさを取り入れるなんてことは考えていないし、そもそも彼女たちを日本という枠にくくれないと思っています」
門馬「本当に藤澤さんの言うとおりで。その中であえて日本らしさというところを挙げるとすれば、海外の文化を自分らしくローカライズしているところかなと。食べものなど、日本人って自分たちに適した形にローカライズしてきましたよね。FAKYの場合は、マルチカルチュラルじゃないですか。背伸びせずに身の丈にあった自分らしさを追求しているというところが、日本のローカライズの文化にリンクするのかなと思っています」
藤澤「私はみんなの個性がすごく好きで、それをどこで爆発させてくれるのかなって様子を見ているんですよ。言葉にすると軽くなるから普段あまり言わないようにしているんですけど、メンバーから『私こうしたいです』っていう意見が挙がったときって、とてつもなく嬉しいんです。最初はみんな私に遠慮しているようなところもあったかもしれないけど、ようやく自分たちの色を表現したいって思ってきてくれたんだって。それが高まってくるのが個性だし、そこに日本だの海外だのは全く関係ない。どんなことをやっていてもいいんです。その人の生き様はイヤなことも含めて最高じゃない? って思っているし、なにかひとつ表現するための武器を見つけたときにFAKYが私にもわからないくらいのところへ飛躍する姿を想像できている。今はそれが楽しいんです」
誰もが誰とも比べられない、スペシャルな存在。だからこそ、可能性も計り知れない。そんなメッセージをFAKYという名前を冠して、彼女たちは体現していく。「J-POP界のニュー・ウェーブ」が描く未来には、どんな景色が広がっているのだろうか。後編では、メンバーとスタッフの関係性にフォーカスしつつ、FAKYの次なるステップへのプロセスとビジョンを語ってもらう。
(写真左から)
Lil’ Fang / Hina / Mikako / Akina / Taki