close
Loading...

ハイライト

ONOFF

2010年代以降、グローバル企業による市場競争の主戦場となったアジア・マーケット。各国ユーザーの成熟に合わせ、日本のエンタテインメント企業の進出や意外な協業の話題が飛び込んでくる2019年。エイベックスでもアジア・マーケットで現地の新人アーティスト発掘や日本発のイベントIPをアジアで積極的に展開するなど、転換期を見せる。そこで今回はエイベックスアジア代表取締役社長・髙橋俊太、台湾と北京の代表を務める宮崎伸滋、シンガポール法人責任者の藤田和巳の3人に、アジア・エンタメの今とこれからについて聞いた。

エイベックスの強みを
生かして勝負を仕掛ける
再スタートを切ったアジア戦略

そもそもまず、なぜ海外、その中でもアジア・マーケットへのアプローチが必要なのか。2016年の1月にエイベックスに入社、2017年4月に現在のアジア事業全体の責任者となった髙橋はこう語る。

髙橋「エイベックスは日本で30年やってきた。でも日本のエンタメは少々飽和状態にある。と、同時にそもそも日本の外にもマーケットニーズがあるはずだから、そこにも挑戦していきましょうというのが海外事業の大指針なんです。じゃあ一言に海外と言ってもどこで勝負するか? となった時、これまでにそれなりの基盤のあるアジアだろうと。ただ、急成長しているアジアでは過去の事例は通用しないので、我々アジアチームもフラットに今のアジアマーケットを見て、強い意志を持って戦略を立てています」

過去の事例、それはJ-POPをそのままアジアに輸出したものの、事業として思うようにスケールさせることができなかった経験だ。

髙橋「日本で売れているアーティストのライヴを単発的に海外でやったとしても、必ずしも事業として成立するとは限らない。当時何が一番足りなかったのか、うまくいかなかったのかと考えた時、それは現地で求められるものを問うという姿勢だった『僕らはこのIPを持っているから海外に持っていこう』――それは間違いだと。日本人の目線だけで日本からの押し付けは絶対やめましょうという前提で、今の体制になった2017年から仕切り直したんです」

さらに細かくエリアごとのマーケット特性にフォーカスしていくのが髙橋のスタンスだ。

髙橋「アジアといってもものすごく広くて、細かく言うときりがないんですが、大きく分けると北の中華圏と東南アジアに分けられる。それぞれのエリアでエイベックスの強みを生かして勝負するってどういうこと? というのを散々話しました。中華圏はC-POPが全体シェアを70%占めているので、C-POPアーティストのマネジメントを強化しましょうと。逆にタイやインドネシアなどの東南アジアには独自のポップスはあるけれど、爆発的なサイズはない。それなら音楽以外のイベントIPやキャラクターIPがビジネスとしてスケールさせられるのではないか? と。それぞれの切り口でやっていきましょうというのが現在のアジア事業です」

信頼関係とともに
築き上げた現地の感性
自社スキームを用い成功へ導く

では現時点でアジア・マーケットにおける成功事例にはどんなアーティストやコンテンツがあり、どんな施策があったのだろうか。

中華圏では台湾の実力派女性シンガーで中国の歌番組への出演を果たし、台湾のグラミー賞と呼ばれる「金曲賞」で優秀女性歌手賞に入選した“Amuyi”や、台湾で活躍中の俳優兼アーティストで、昨年末にオリジナル作品をリリースし、YouTubeで200万回再生を突破した“リマ・ジダン”ら、着々と実績を上げている。これらの実績はひとえに現地スタッフを50〜60人擁し、エリア独自の若者文化を吸い上げていることに由来する。

髙橋「スタッフの中で日本人の数は? と聞かれると、東京に私と5〜6人いて、台湾の日本人は宮崎だけ、シンガポールは藤田だけ。あとは全員現地人なんですね。そこがエイベックス・アジアグループの一番いいところだと思うし、いわゆる『とりあえず日本から赴任者を送り込もう』ということだけは絶対したくない、って僕は最初から言っていて。それが今うまくいっている秘訣だと思います」

宮崎「30年で築き上げてきたエイベックスのブランドイメージに信頼と信用を感じていただき、一緒にやりましょうと言ってくださる現地のアーティストが出てきたことは確かです。それは日本の音楽作品やライヴイベントに関わらず、緻密性や完成度が認められているからだと思います。ただ、マーケットが成熟し始めてきたので、隣の国で流行っているからこっちでも流行るというものではなくて。ネット社会でいろんな情報がある中、皆さん耳も目も肥えてきているのは間違いない。生半可なものは出せないということが、これからの勝負ですね」

中国ではIT企業を政府がバックアップするなど、すでに一般の人々の生活も電子化され、音楽ビジネスもサブスクリプションの波が押し寄せ、これまでの中国にはないヒットやスターが生まれるであろう、パラダイムシフトが起こっている。そんな中で、エイベックスが担保すべきなのはクオリティ。前述の台湾のアーティストを始め、中国での発掘については、中国の音楽番組やマネジメント会社とのパートナーシップで、マスを狙える存在を育成していくと言う。

対して、中国、台湾とは異なり現地人のアーティスト・ビジネスがほぼ皆無というシンガポールの場合はどうだろうか。

シンガポールでは去年末にカウントダウンイベントとして世界的な話題となった、エイベックス発の『未来型花火エンターテインメントSTAR ISLAND』が海外初開催にも関わらず2万席を完売する成功を収めたことは記憶に新しい。また、『ポケモン・ラン』や『ONE PIECE RUN』、『Hello, ONE PIECE』など、ゲームやアニメといったファンの多いコンテンツを生かしたイベントも盛況だという。

藤田「なぜシンガポールで花火のイベントであるSTAR ISLANDだったのか? というと、東南アジアは明らかにこれから成長していく経済圏で、当然、そこでエンタメは付随して成長していくもの。その現地の人に本当に求められているもの、喜ばれるものという視点で、上位に残っていったのがゲームやキャラクターのIP、そして日本に対する漠然とした憧れというものでした。日本のものに対する興味関心が高い中で、圧倒的なクオリティのショーで、世界に打って出ることができるブランドとしてSTAR ISLANDを考えた時に、海外第1回目がどの国であるかは非常に重要で。その点、シンガポールは観光地としての存在感が増してきているので、あのマリーナベイサンズで開催できればすごいんじゃないか? と。今回はシンガポールという国がやっているカウントダウンイベントを、ある意味STAR ISLANDでジャックさせていただき、政府と一緒にやったイベントであることも大きな意味があります」

クリエイティヴに国境はないーー
アジアチームが構想する
グローバル・スター

アジア諸国がテクノロジー面で日本以上にスピーディーな進化を遂げる現在。「日本のエンタメに以前ほどの圧倒的な優位性はなくなってきた」と語る髙橋だが、成功への道筋はしっかりと見えている。

髙橋「アジアのマーケットが大きいことが認識されてきたため、今までのように『まずは日本でヒットさせてからアジアに』ではなくて、いきなり最初からアジア市場を見据えたコンテンツを作りたいという社内の開発者がいたり、良くも悪くもアジアに目を向けていることは日々感じます。ただ、意識の高い人もいれば、反面アジアに持っていけばすぐ儲かると安易に考えがちな人もいる。ですが、一番大事なのは最初にも言ったようにその国の人たちが本当に求めているものなのか? ということ。日本人の目線だけで『きっとアジアでも流行るはず』と上から目線で決めてしまうのではなく、フラットな気持ちで現地人の目線を大切に戦略的に動けば、エイベックスのクリエイティブ力を持ってすれば今後はいろいろな事例が成功していくと思います」

宮崎「今人気のあるグループは3カ国、4カ国の混成ですよね。そういうことと同じで、私たちがこれからやっていく中でアジア系のメンバーが入ってくるでしょうし、アジアのスター、マルチリンガルなスターを作ることを目標に進んでいくべきでしょうね。しかももういい加減、お金をかけてメディアに広告を出して売るとか、そういう時代は終わったと思います。いかにクオリティの高いアーティストを探してくるか? が勝負でしょうね」

髙橋「これからのアーティストやクリエイティヴに国境はないと考えていて。例えば5人組のグループのメンバーが中国人と韓国人とベトナム人、タイ人、フィリピン人という構成で、日本を含めたアジア全域で人気が出た。で、日本人メンバーは一人もいないのだけれども、実はエイベックスがプロデュースをしている、というようなーーそういう挑戦はしたいですね」

2017年に現在の体制となったアジア戦略チーム。前述の通り、現地スタッフの声を吸い上げ、台湾の “リマ・ジダン”ら新鋭アーティスト、シンガポールでのSTAR ISLANDなど一定の成果を上げてきたエイベックス・アジア。その先をどう見据えているのだろうか。

髙橋「2018年にエイベックスチャイナと香港もでき、これでこれまで一番大きかった台湾、加えてすごい勢いでドライブしているシンガポールも含めた4拠点が揃った。そこで、最初に話にあった北の中華圏においてはC-POP事業でまず1組でいいので、大きいスケールで活動できるスターをきっちり作り上げること。シンガポールでは成功しているキャラクタービジネスと自社IPのSTAR ISLANDという勝負できるマネタイズモデルを作れたので、それを他の東南アジアの国にどうやってスキームごと持っていくかを考えています。人口が2億6000万人を超えるインドネシアや、圧倒的に若者の人口が増えているフィリピンなどに、このシンガポールでの成功パターンをどう持っていくかが、我々の次のステップだと思っています」

髙橋は中国の原作をエイベックスが日本のアニメ技術で製作し、中華圏及びグローバルに発信したり、STAR ISLANDがそうであったように、日本文化と現代エンタメの融合をIP化したものを海外展開することも視野に入れているという。そしてグローバルにビジネスをスケールしていくためには、現地企業への出資やM&Aの実行など、経営判断として有効な選択は全て取るべきとも語る。

髙橋「まだ時間はかかるかもしれませんが、本当の意味で国籍も言語も関係なく、アジアの若い優秀な人たちにどんどんと権限を委譲して、もっとスピード感のあるエンタテインメント集団になっていきたいと思っています」

すでに保有する魅力的なIPのアジア・マーケットへの敷衍、そして現地のニーズを吸い上げるスキームを用いた、エイベックスならではのアジア戦略の新たな挑戦は日々進行中だ。アジア発でグローバルに活躍するアーティストやコンテンツが誕生するのも遠くないのではないだろうか。

(写真左)
Avex Asia Pte. Ltd.
Business Creation
ゼネラルマネージャー
藤田 和巳

(写真中)
Avex Asia Pte. Ltd.
代表取締役社長

Avex China Inc.
執行董事

Avex Hong Kong Limited
Director
髙橋 俊太

(写真右)
Avex Taiwan Inc.
取締役会長兼社長

Avex China Inc.
総経理
宮崎 伸滋

こんな内容

BACK TO INDEX